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Vol.26041 重症花粉症の救世主か――生物学的製剤「ゾレア」体験記

医療ガバナンス学会 (2026年3月9日 08:00)


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レクタス株式会社
代表 斧原邦仁

2026年3月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

私は長年、重度の花粉症に悩まされてきた。アレルギー検査の結果は、スギが陽性5、ヒノキとハウスダストがそれぞれ3。非特異的IgEの値は1500に達する。毎年11月頃からハウスダストによる鼻症状が始まり、2月半ばからはスギ、続いてヒノキの花粉によって、文字通り「大変なこと」になるのが恒例だ。

特に今年、2026年(令和8年)の花粉飛散状況は、結論から言うと「東日本・北日本を中心に、例年や前年を大きく上回る大量飛散」が予測されている。前年(2025年)の飛散が比較的落ち着いていた地域が多い反面、その反動と2025年夏の猛暑が影響し、全国的に極めて厳しいシーズンとなっているのだ。

私の症状は例年凄まじい。ひどい日には1日でボックスティッシュを1箱使い切り、くしゃみは1日に100回近く出る。幸い鼻閉(鼻づまり)はないものの、目の痒みも強烈で、点眼薬やステロイド眼軟膏が手放せない。さらに悪化すると呼吸が苦しくなり、喘息のような症状から吸入薬や気管支拡張薬の貼り薬を併用するシーズンもある。これまで、クリニックでの抗アレルギー薬や点鼻ステロイドはもちろん、過去には鼻粘膜を焼くレーザー治療も試してきたが、決定的な解決には至らなかった。

昨年、医師から根本治療として「シダキュア(舌下免疫療法)」を勧められたが、あいにく薬剤の流通不足で断念せざるを得なかった。そこで「次の手」として提案されたのが、生物学的製剤「ゾレア」という注射薬である。

ゾレアは、アレルギーの元凶であるIgE(免疫グロブリンE)を直接キャッチし、マスト細胞からヒスタミンが放出されるのを未然に防ぐ薬剤だ。仕組みは「椅子取りゲーム」に例えられる。IgEという椅子にスギ花粉が座ってしまう前に、ゾレアが先回りして座ってしまうことで、アレルギー反応のスイッチを物理的に押させないのだ。

最大のネックはコストだった。
私の体重とIgE量から算出した規定量は月600mg。薬価は150mgで21,830円、300mgで40,091円にもなる。3割負担でも月額24,000円を超える計算だ。確実な効果があれば惜しくない金額だが、未知の薬剤にいきなりこれだけの高額を投じるのは勇気がいる。そこで先生と相談し、副作用への懸念も踏まえ、まずは規定の半分にあたる「300mg(150mgを月に2回)」というダウンサイジングした量から試験的に導入することにした。

実際に打ってみて感じたのは、独特の「痛み」だ。副作用というほどではないが、注射部位に痛みはある。ただ、個人的にはインフルエンザの予防接種の方がよほど痛いと感じる。インフルエンザのときは接種部位の疼痛が1週間ほど続くこともあるが、ゾレアの場合は翌日にはすっかり消えている。強いて言えば、薬剤の粘度のせいか注射針の「キレ」が少し悪いような、重たい感覚はあるが、その程度の負担で済むのは意外だった。

2月初旬から投与を開始したところ、その効果は驚くべきものだった。あの日々悩まされた1日100回のくしゃみは、導入後すぐに20回程度まで減り、花粉飛散がピークを迎えた3月上旬の現在も、ほぼ無症状の状態を維持できている。鼻だけでなく、あれほど辛かった目の症状まで抑えられているのが何より嬉しい。どうやら、本格的な飛散が始まる2月初旬から投与を始めたタイミングも功を奏したようだ。

もちろん、量を半分に絞っている影響か、投与から10日ほど経つと1日5回程度のくしゃみが出るようになり、2週間完璧に抑え込むまではいかない。しかし、支払いは月に12,000円程度と許容範囲内に収まっており、このQOL(生活の質)の向上を考えれば十分に納得できる投資だ。

今後、この薬剤には後発品(バイオシミラー)の登場も予定されていると聞く。そうなれば薬剤費はさらに30%程度下がり、自己負担は8,000円台まで軽減されるだろう。そうなれば、より多くの人がこの治療の恩恵を受けられるようになるはずだ。もし、私のように既存の治療では太刀打ちできない重症の花粉症に苦しんでいる方がいれば、ぜひ一度、この新しい選択肢を検討してみてほしい。

 

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