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Vol.26044 ヒトラーを「120%肯定」 レイシストと手を結んだ大阪広域協(4)

医療ガバナンス学会 (2026年3月23日 08:00)


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編集長/渡辺周
記者/中川七海

2026年3月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2017年12月12日、労働組合「関西生コン支部」(関生支部)は、セメントの輸送を止めるストライキを実施した。

1週間後、生コン会社の経営側でつくる「大阪広域生コンクリート協同組合」(大阪広域協)は理事会を開催。関生支部のストは「威力業務妨害だ」と主張して、10億円の対策費を出すと決めた。理事長の木村貴洋は「近畿2府4県の警察当局者も捜査に着手したと耳に入っています」と、警察との蜜月をアピールした。

年が明けた2018年早々、大阪の生コン会社に福島県から一斉にりんごが届く。ちゃんと箱詰めされており、従業員たちで食べる分くらいはある。
「なんじゃこりゃ?」
生コン会社に勤める関生支部の組合員たちは、りんごを受け取ったものの、送り主に心当たりがない。気味が悪くて口にしなかった。

りんごの送り主の正体
誰がりんごを送ったのか。

話はストライキの前日、2017年12月11日にさかのぼる。大阪広域協・理事長の木村は夕方5時過ぎ、ある人物にメールを送った。

「私は大阪広域生コンクリート協同組合理事長の木村貴洋と申します。突然ではございますがご相談したいことがございます。一度、ご連絡を頂きます様、よろしくお願い致します」
木村がメールを送ったのは、瀬戸弘幸という人物だった。

瀬戸は元福島市水道局員で、「日本憂国同志会」の会長を務めるなど長年、右翼活動に身を投じてきた。2016年には「日本第一党」の最高顧問に就いた。この党はヘイトスピーチ対策法の廃止や、日韓の国交断絶を主張している。

瀬戸はレイシストだ。ナチスのアドルフ・ヒトラーを信奉している。その傾倒ぶりは、共著書『ヒトラー思想のススメ 自然と人類を救済するナチス・ヒトラー世界観の120%肯定論。』(世界戦略研究所編、展転社)に表れている。

「近代以降、人種・人口問題に真正面から取り組んだのは、ヒトラー、ナチスをおいて他に類をみないことですね。(中略) そうした中で、強力な統制や整然とした秩序、システムによって人口問題の解決を求めたナチズムが、全面的に再評価される時が必ずやってくると思います」

「ユダヤ人をなぜ隔離して、結果的に死に至らしめたかということを具体的に考えてみますと、第一次世界大戦におけるドイツの敗北、これは背後短剣にやられたとヒトラーは考えたわけです。つまり、国内のユダヤ人に謀られたからドイツは負けたということが第一にある。さらに、ヨーロッパの『反ユダヤ』の伝統など歴史的なユダヤ人問題も背景にあります」

「現実にユダヤ人が選民思想に立脚し、世界の終末を予言して、自分達だけが生き残るんだと。生き残るためには世界を滅ぼさなきゃならないと、そういう宗教を信じていることは明らかなんですが、世界各国に勢力を持つユダヤ人としてフリーメイソンの名前もでていますけれど、その方向で暗躍していると考えた方がいいですね」

レイシストにお墨付きを与えた警察・検察

大阪広域協の木村から、2017年12月11日に瀬戸がメールを受け取ってからどうなったのか。

瀬戸自身が一部始終を、著書『連帯ユニオン関生闘争記』で明かしている。出版したのは青林堂。『参政党ドリル』など参政党関連の本を出しているのも、この出版社だ。
要約すれば、次のような経緯だ。

瀬戸は12月14日(木)午前6時58分、木村にメールを返信した。

「昨夕は失礼しました。パソコンを放置していて気が付きませんでした。後ほど電話を差し上げます」

木村からは、関生支部がストライキを実行する前日の12月11日にメールをもらっていたが、東京都内でのりんごの移動販売に忙しくてメールに気がつかなかった。瀬戸は福島でりんごの栽培を手がけており、東京にも販路を見出していた。

メールを返信してから数日後、瀬戸は木村と電話で話をする。木村は言った。
「関生支部に長年いじめられており、ついに我慢の限界を通り越した」
瀬戸を「若い頃から歩んできた反共・愛国という信念」が駆り立てていく。「犯罪行為の周知徹底」を関西一円で繰り広げる「広報啓蒙活動」を行うことにした。

瀬戸の著書で興味深いのは、大阪広域協の公式ホームページの記述を引用していることだ。大阪広域協は、捜査機関と協力していることをホームページで明かしていた。瀬戸にしてみれば、関生支部攻撃のお墨付きを、警察と検察から与えられたことになる。

「連帯労組の組織犯罪に対して、当協同組合は『威力業務妨害・組織犯罪撲滅対策本部』を設置しました。これまで我慢に我慢を重ねてきたが、大阪広域協組は今回の威力業務妨害、及び過去の犯罪行為に対しまして、大阪府警本部、兵庫県警本部、地検特捜部の捜査に全面的に協力し、(当時の関生支部委員長の)武建一の犯罪的行動を徹底的に追及します」

月70万円の報酬で活動開始

瀬戸は、2018年の年明けから活動を開始する。福島県から生コン会社にりんごを送ったのは、そこで働く関生支部組合員への嫌がらせではなく、経営者へのあいさつのようなものだったのだ。

大阪広域協は瀬戸を全面的にサポートする。

1月8日に瀬戸が大阪・梅田のヨドバシカメラ前で街頭宣伝することになったことを受け、理事長の木村は加盟各社に参加を促す通知を出した。タイトルは「瀬戸弘幸氏による街宣活動についてのお願い」。

昨年からの連帯労組によるセメントSS封鎖及び出荷妨害等の非道に対し、12月18日、瀬戸弘幸氏から協組理事長である私のところに問い合わせがあり、連帯労組による様々な不当行為の内容を、過去から現在に至るまで詳細に報告させていただきました。その内容を聞きおよび、瀬戸弘幸氏本人の思想的判断において、かの団体に対し街宣活動を行う旨のありがたい判断をいただきました。我々、広域協組といたしましても、その判断に賛同し街宣活動を支援することといたします。

つきましては1月8日(月)、13:30開始予定により梅田ヨドバシカメラ前に瀬戸弘幸氏の街頭演説が行われますので、組合員の皆様ご自身でその活動を見聞していただきますよう要請いたしますので、奮って立会い、応援のご協力をお願いいたします。

この通知では、前年の12月18日に瀬戸から木村に問い合わせがあったと書いている。経緯を知らない者が読めば、瀬戸が最初に関生支部への攻撃を持ちかけたとの印象を受ける。
だが実際は、12月11日に木村が瀬戸に「突然ではございますがご相談したいことがございます」とメールしている。

さらに大阪広域協は、月70万円の報酬を瀬戸に支払っていた。毎日放送(MBS)の『労組と弾圧~関西生コン事件を考える~』の中で瀬戸自身が明かしている。
「瀬戸氏の活動を全面的に応援していく」

2018年1月8日、瀬戸による街宣活動が雨模様の中、ヨドバシカメラ前で行われた。「威力業務妨害を許すな」という多数ののぼりが立てられ、「ゴロツキの『労組マフィア』」などと書かれたビラが撒かれた。

大阪広域協・理事長の木村、副理事長の地神秀治の姿もあった。地神は副理事長ではあるが、大阪広域協の実質的なトップだ。

大阪広域協は、関生支部を攻撃する瀬戸の演説に満足した。ホームページでこう記した。

「私たち協同組合の関係者も、瀬戸弘幸氏及び関係者の皆様による力強い言葉に感銘を受けました」
「今後も、瀬戸氏の活動を全面的に応援していく所存です」
「瀬戸氏の活動を全面的に応援していく」という言葉通り、大阪広域協は瀬戸と行動を共にし、大阪以外へと触手を伸ばしていく。

1月17日、地神らは和歌山県の生コン会社でつくる「和歌山県生コンクリート工業組合」(和歌山工組)に赴いた。瀬戸や渡邊臥龍を伴っていた。
渡邊も、ナチスの鉤十字の旗を掲げて街宣したことがあるレイシストだ。立憲民主党の参議院議員、有田芳生の殺害をブログで「國賊 有田芳生に天誅を加えむ」とほのめかしたこともある。

瀬戸や渡邊は、和歌山工組のビルを数台の街宣車で取り囲み、大音量で関生支部を中傷し始めた。
その間、地神らは和歌山工組のビルに入っていき要求する。
「関生支部とは決別しろ。応じないなら、大阪広域協が和歌山に越境して安い生コンを販売してやる」
和歌山工組の役員は、地神たちの要求を断った。

2日後の1月19日、瀬戸や渡邊は和歌山工組の役員を誹謗中傷するビラを、その役員の自宅周辺にポスティングした。
「開けへんねやったら割るぞ」

瀬戸と渡邊のレイシストコンビと、大阪広域協の地神らのフットワークは軽い。
1月22日には、瀬戸と渡邊が大阪市内の関生支部に乱入した。
大阪広域協の幹部たちは、その乱入の様子を関生支部の事務所前で、雨の中ビニール傘をさしながら、せせら笑った。理事長の木村、副理事長の地神と大山正芳らだ。地神と大山はガムを噛んでいる。

3日後の1月25日。レイシストたちと大阪広域協は、再び和歌山へ。労組活動をしていた関生支部の組合員たちを攻撃する。

関生支部の組合員たちがコンビニで休憩していると、言いがかりをつけてきた。大阪広域協からは、いつもの木村と地神、大山がやってきた。地神はまたガムを噛んでいる。
和歌山県警も出動し現場は騒然とした。大阪広域協の幹部たちは警察官たちに囲まれる。
強気だったのは大山だ。警察官を手で押し退ける。車の中にいる関生支部の組合員に対し、窓を叩きながら言った。
「割るぞ、開けへんのやったら」

関生支部の組合員が「出てくるも何も、帰ってくださいよ」と応じないと、今度は甲高い声を出して繰り返す。
「出てこいや、オラー」
「大山さん、そんな怖い顔せんと」と関生支部の組合員が言っても、ボルテージは下がらなかった。
(敬称略)
※この記事の内容は、2025年11月12日時点のものです。 https://tansajp.org/investigativejournal/12780/?utm_source=mric&utm_medium=link 
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