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Vol.221 あまりに高くてびっくりした。-世界も驚く、高額療養費の自己負担額-

医療ガバナンス学会 (2011年7月27日 11:00)


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東京大学医科学研究所特任研究員
児玉 有子
2011年7月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


カナダのトロントで開かれたInternational Health Economic Association (iHEA;国際医療経済学会)の世界大会で、グリベックを服用されている慢性骨髄性白血病患者の経済的負担について、基本統計を私がポスターセッション で発表し、経済学的視点からの分析を共同研究者の両角良子富山大学経済学部准教授が口頭報告セッションで発表しました。会場からは「あまりに高くてびっく りした。」という感想も聞かれ、日本の皆保険制度、高額療養費制度を用いた場合でもあっても高い医療費負担が続くことが、フロアーにいた世界の多くの方へ も認識されることになりました。
ポスターセッションの発表では、2000年から2008年の間に世帯所得が25%も減る中、治療にかかる費用や自己負担額はほとんどかわらず、負担感が増していることの報告と、皆保険制度であっても経済的負担から治療を中断している状況があることを報告しました。

iHEAの参加者は、大きく分けて経済学的バックグラウンドで医療を研究する人と医療系の資格を有し経済的な研究をする人からなります。発表の多くは、何 かしらの大きなデータベースを色々な方法で分析しており、個が消された議論の発表で、私が普段参加する医療系の学会とはまた違う雰囲気で議論が進んでいま した。当然、お金に絡んだ話ばかりですが、看護師の私にとっては、それぞれの国の人たちが、医療費についてどう考えているのだろう、という新たな興味がわ きました。

私たちの研究発表(両角良子)は「慢性病における経済的負担」のセッションでの発表でしたが、高額な費用を要す医療費の問題は、学会初日のオープニングセッションでも扱われ、イラン、南アフリカ、インド、およびWHOの研究者が発表していました。
高額な医療費における自己負担は世界共通の課題のようです。
イランの研究者の発表では、イランでの治療は限られた場所で行われているため、首都居住か地方に住んでいるかということが自己負担に影響することが示されていました。
また、南アフリカの研究者からは、慢性的に続く高額な医療費負担と一過性の高額な医療費負担についての発表がなされていました。「これまでは定点的な研究 が多かったが、1時点での分析では政策決定に良い影響を与えない。特に発展途上国では、慢性的に高額な支払いが続いていることの分析が求められる」と結論 づけていました。日本の高額療養費制度の仕組みも、もしかしたら南アフリカとあまり変わらないのかもしれません。

また、他の興味深い研究では、肥満とソーシャルネットワークについての発表がありました。「肥満の若者には友達が少なく、その傾向は白人に強い。また、自 己効力感(自己効力感は自分にある目標に到達するための能力があるという感覚、Wikipediaより)が低いことの影響がある」という報告がなされてい ました。肥満対策は保健師の保健指導でもよく遭遇します。iHEAでも保健指導に使えそうな話題が発表されていることに驚きましたし、また思わず、私の周 りのダイエッターを思い浮かべ、成功している人、停滞中の人のソーシャルネットワークを比較してしまいました。

私がトロントに到着した数時間後、日本では地震がありました。翌日の朝食会場では、ギャルソンが「日本、また地震だったみたいだよ。知っている?」と話し かけて来てくれました。別の方も「ほんと大変だったね」と声をかけてくれました。チェルノブイリ事故に関連する発表をした演者は発表の中で福島のことにつ いても触れていました。また、私が自分の発表の際に、研究室のメンバ-が撮影した相馬市内の写真とともに支援へのお礼を言いましたら、発表を聞いていた人 の間で会話が起こっていました。今回のiHEAの参加を通して、改めて世界中の方々のやさしさに感謝し、また世界中の人の関心が高いことを改めて感じまし た。

最後になりましたが、このような発表の機会は、アンケートに答えてくださったCML患者さんや、アンケート用紙の配布にたずさわってくださった全国の血液 内科の担当医の先生方のご協力なしにはあり得ませんでした。貴重な機会をありがとうございました。高額療養費の見直しは、税と社会保障改革の一つとして議 論され、再び社保審医療保険部会での議論が始まりましたが、まだ内容は不確実です。
長期の高額な医療費負担の問題が解決するよう、私も引き続きこの問題に取り組みたいと思います。

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