医療ガバナンス学会 (2011年7月29日 06:00)
http://www.city.minamisoma.lg.jp/shinsai2/hosyasen-kousyukainaiyou.jsp
今回はこの放射線説明会でのやり取りや感じたことをお伝えできればと思います。
【個別対応が重要である。】
今回の放射線説明会を通して得た一番の教訓は、「放射線の問題に関して、不安なことや必要な情報は各個人で全く異なるため、個別具体的に一人一人じっくり相談に乗る必要がある。」ということです。
浜通りは西を阿武隈高地、東は太平洋に面する地方ですが、放射性物質の飛散で山間部の方が沿岸部に比べて放射線量が高い傾向にあります。山間部だと酪農家 が多いですし、やや降りてくると農家が増えます。市街地まで来るとデスクワークなどをされる方が増え、外で作業される方はやや減ります。沿岸部まで降りる と漁業が増えます。
年齢層、家族構成、職業、説明会をする場所、土地柄、その地の実際の線量、これらが少しでも異なると、これでもかというぐらい参加者から寄せられる意見や 質問は異なりました。説明会の雰囲気も1つとして同じものはありませんでした。ほんの1.2km説明会の場所が変わるだけで、全く違うのです。
質問の一部を紹介します。
農家の方々への説明会では、自分の作っている野菜を食べられるのか、うちはいつから作付けを行ってよいのか、畑の線量を下げるためにはどうすれば良いの か、といった内容に質問が集中しました。PTAの方々が対象のときは、子供への影響はどうなのか、学校の窓を開けてよいのか、登下校の際にマスクはどうす べきか。学校内の放射線量測定はどこをすべきか、どこから除染すべきか。といった質問が聞かれ、沿岸部だと、ヘドロの処理を行うときに放射線はどう扱うべ きなのか、山間部から流れ降りてくるあの川の水は大丈夫なのか。といった具合でした。
繰り返しになりますが、放射線問題はその人、その地域に併せた個別具体的な対応が非常に重要であることを強く感じました。それぞれ個人個人のバックグラウ ンドをしっかり聞いた上で、質問内容を聞き、対話の中でできうるアドバイスを行う。医者が患者さんを診療するのと同じ、そんな印象を持っています。
【具体的なノウハウをいかに積み上げるか。】
もう一つ重要なことは、「現地で求められている情報は、具体的なノウハウである。」ということです。
被ばく量は出来る限り少ない方が良いことはわかった。では、今ここで生活していてクーラーをつけてよいのか、洗濯物は干してよいのか、窓を開けてよいのか。換気扇をまわしてよいのか。
空間線量を下げるために除染を行うべきだということはわかった。ホコリをできるだけ掃除するべきこともわかった。一般的な室内の清掃を行って、それでも空間線量が下がらないときに、どこをターゲットにしてどういう除染を行えば良いのか。
家の外の空間線量が、1.5μSV/hで、家の中が1μSV/hぐらいの場所に住んでいる。避難ももちろん考えたが、現実的に経済的社会的な問題を考える とできない。この場所で住み続けるしかないと思っている。その中でできるだけ、被ばく量を減らしたい。子供を含めた家族の健康を守りたい。病院への受診の 仕方や、家の中と周りの掃除の仕方を具体的に教えてほしい。
これらはほんの一例ですが、そんな質問が多く寄せられました。生活に密着し、具体的にどのようにすればいいかといった質問、相談ばかり。今まであちこちを測定して得られた経験、いくつかのモデル、手がかりとなる試算をふまえ、私の意見を述べ、対話させていただきました。
南相馬市立病院内をサーベイしたとき、最もガイガーカウンターが反応したのは空気清浄機の中のフィルターでした。ホコリと共に飛んでいる放射性物質は、実 際に通常のフィルターでもある程度トラップされています。クーラーなどは一度しっかりフィルターを洗ってから、使ってよいと答えています。空気清浄機など は積極的に使うよう勧めています。
また、線量測定で外を数時間うろうろした後に、自分の体にガイガーカウンターを向けても反応はほとんどしませんでした。現在は、3月のように放射性物質が 大量に空気中に俟っている状態ではなく、風の強い日以外は洗濯物をしても、窓を開けても、換気扇をまわしても構わないだろうと話しています。心配ならば洗 濯物はさらに表面のホコリを外で払っても良いと思います。
食事については、野菜のセシウムを減らす方法は灰汁抜きだと伝えています。灰汁抜きや塩揉みなど、中の水分を取り除くような調理法を行えば下がります。肉 などに関しては、薄く切って水で煮て、煮汁を全部捨てるといったような美味しくない治療法を行えば下がると話しています。
ただ、危険です、安全ですとxxさんが言っています、健康被害についてxxに書いてありますといった情報を垂れ流すだけなのは、確かに重要な情報ですが、 現場では残念ながらほとんど役に立ちません。具体的にどうすれば良いのか、ノウハウに関する情報がまだ圧倒的に不足しています。今後市町村が主体となって 実際にいろいろなことを試しながらノウハウをためていくしか無いと思っています。
先日相馬野馬追に参加しました。僕自身は初めて見学させていただきましたが、その伝統と迫力に圧倒されました。徐々にですが、地域が活気を取り戻しつつあります。この地域の一早い復興を祈っています。
最後になりますが、いつも放射線説明会にて、様々な手助けをしてくださった、宮澤会長、山越さん、尾崎さん、脇屋さん、今さん、小柳さん、大川さんを始めとする星槎グループの方々に感謝申し上げます。