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Vol.226 ポリオワクチン問題 ~個人輸入のIPVに世田谷区って公費助成できないのだろうか? その2~

医療ガバナンス学会 (2011年8月3日 06:00)


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日本国主権者、東京都民にして世田谷区民
真々田 弘
2011年8月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


昔話になる。
半世紀前、旧ソ連からの一千万人分を含む一千三百万人分の日本では未承認の生ワクチン緊急輸入ならびに集団投与を実現したのは一人の政治家の決断だった。 厚生大臣、古井喜実。もちろん、「腹を切る」とまでの彼の覚悟を生み出したものは前年から日本国中に広がった大衆運動であった。(この大衆運動について詳 しくは、拙著「誰が医療を守るのか」第二部)
行政は、決まった道しか進めない。自分たちの段取りの仕方しか知らない。前任者の判断を切り捨てることも、できないし、人事異動でくるくる回って何も変えずにさってゆく。
その段取り仕事を壊せるのは、政治、政治家でしかない。
国の不活化ワクチンに対する態度は、今日に至るまで変わっていない。

例えば先日、衆院構成労働委員会でのやり取りがある。
(http://saito-susumu.jp/ )「今日の斉藤進 2011年7月22日」
今の厚生労働大臣も副大臣も、議員の質問に対して既存の厚生労働行政を説明しているに過ぎない。行政の長ではあるが、行政を率いる政治家としての見解を読み取ることは、残念ながらできない。あくまで、私見ではあるが。
確かに半世紀前の古井厚生大臣の決断は重かった。生ワクチンの開発から5年余り。集団投与での実績は、ソ連や東欧圏で2年前から始まったばかり。WHOに 報告された安全性と効果の科学的なデータはあったにしろ、自分が決断した生ワクを投与した子に何かあったら「腹を切る覚悟」が必要だったろう。
今の政治家たちは、幸いその覚悟をしなくても良い。なぜなら、今、世界標準となっている強化型不活化ワクチン=eIPVには世界各国で四半世紀にもわたる 使用実績があるのだし、この一年余りの間で、日本国内で自費で=自己責任での個人輸入のIPVの接種数は万を越えている。恐らく、間違いなく国内メーカー が開発中のDPT+IPVの治験より数多くの子どもたちが、個人輸入でのIPV接種を受けている。
重篤な副反応例は(世界でも同じだが)、報告されていない。

さて、私の一区民としての「政治工作」、政治家説得作業は区長宛だけでは無論ない。
世田谷区議会の議場を飾る政治家の方々にも、同様の陳情をお送りした。
先週のことだ。区長宛と重なる部分もあるので、全文をお読みいただくことに躊躇はあるのだが、やりとりの全文公開が前提の作業。お許しあれ。

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●●党世田谷区議団 様

陳情書
ポリオ不活化ワクチンへの公費助成制度創設の提案
2011年7月21日
世田谷区●●●●-●-●
真々田弘
*************(メアド)
前文
ポリオをふせぐためのワクチンで、こどもたちがポリオとしないために

ポリオを防ぐために国が推奨し、予防接種法に基づいて世田谷区でも春夏に集団接種が行われているポリオ生ワクチン(以下、OPV)によって、接種を受けた 子どもがポリオになるリスクがある、ということは最近、多くのメディアで取り上げられ皆さま方区議団に置かれましてもいくばくかは耳になさっていることと 存じます。また、このワクチンによるポリオ発症というリスクを防ぐために世界の先進国のすべてでポリオ不活化ワクチン(以下、IPV)が使用されていると いう事実についてもいくばくかのご理解はあることと思っております。
そして、その事実を知った多くの保護者が個人輸入で(全額自己負担で)あるにもかかわらずIPVの接種を求め、その保護者の医学的には当然の要望に応える 医療機関が急増し、世田谷区区内でも既に8か所あまりを数える現実につき、お耳になさったことがあるかもしれないと考えています。
極東でOPVを使い続けるのは北朝鮮と日本だけ・・・という情けない状態。
国も、厚労省も、政策決定に関わる医療者も二十年余り前からOPVの危険性を知り、十数年前からIPVの必要性を語っているのに、未だに、生ワクチンによるポリオの子を生み出している現実。
あなたは、あなた方区議団は、世田谷区のコドモたちに対して、どうオトナとしての責任をお果たしになりますか?
国が決めたことだからと、ポリオになる危険性が明らかなワクチンを、この秋も世田谷のコドモたちに飲ませ続けますか?

私からの提案があります。
今、個人輸入で導入され、保護者の全額自己負担となっている世界標準のワクチンであるIPVの接種に対して、世田谷区としての助成制度を作ることはできないでしょうか。
以下、私の現状認識と、助成制度への提案を提示します。ご不明の点あらば、いつでもご連絡ください。

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政策提案 本文
ポリオにならないワクチンを望む保護者たちを見捨てないために

A.まず、事実認識です。
根本は、他の先進国では標準の「ポリオを防ぐワクチンでポリオにはなることがない」IPVが、日本では国よって未だに承認されず、予防接種で使われていな いということです。そして、予防接種法に定められたという理由だけで「ワクチンによってポリオになるリスクがある」と誰もが確認しているポリオ生ワクチン (以下、OPV)の使用が継続されている、ということです。
現在、先進諸国であまねく使われているIPVが開発されてから四半世紀あまりたつというのに日本の防疫行政の遅滞は、あまりにも明らかです。

そして、その世界では科学的・医学的に常識である事実を知った保護者たちが「ワクチンで子供をポリオにしない」ために国が勧めるOPVを忌避し、日本では 未承認ではあるが世界標準のIPVの接種を求めるのは合理的な行動です。そしてこのわが子を、わが子を取り巻く人々をポリオにしないための科学的根拠を持 つ正しい行動が、今は医療者と保護者との自己責任、保護者にとってはIPV接種費用の全額自己負担という重荷となっている現実があります。

整理します。

1)世田谷区としては国が予防接種法で定めたOPVの接種を行っている。
世田谷区の保健担当者もOPVによるポリオ発症リスクについて理解している。
国もそのリスクについては、国会答弁などの資料で確認できる範囲で、既に十数年前には理解している。
しかしながら、未だにIPVは導入されていない。

2)ただし、OPVによるポリオ発症リスクが周知のものとなっている現在、正当な科学的根拠に基づき、それを忌避する保護者が存在する、という事実がある。

3)2)の保護者が、正当な科学的な根拠に基づきワクチンによるポリオ発症リスクの全く無いIPVの接種を求め、現実に接種を受けさせている事実がある。かつ、IPVを接種する保護者は、昨年以降急激に増加している。

4)その保護者の要望に応え、正当な科学的な理由をもって個人輸入という形でIPVを個人輸入し、接種を行う医療機関が、全国でも世田谷区内でも増加している事実がある。

5)3)ならびに4)による世界標準であるIPVをという行為が、保護者と医療者の接種費用負担、副作用リスク負担を含め自己責任でなされている事実がある。

6)あるいは、2)という認識を持った保護者が、IPV接種での全額自己負担という経済的な理由で断念しているケースがあるという事実がある。

7)あるいは、2)という認識を持った保護者が、国が来年度中には使用できる見込みと表明している(しかしながら、現実に導入されるまでの日程表が明らか では無い)DPT+IPV(三種混合ワクチン+IPV)ワクチンの導入を待ち、OPVも全額自己負担の個人輸入IPVをも使用しないという現象が生じつつ あると報告されている。

7)6)あるいは7)という選択を保護者が行った場合、外来での野生種ポリオへの感染リスクに加え、区が行う定期接種で使用されるOPV由来の二次感染リスクを当該幼児が負うとともに、周囲に対して三次感染源となるという社会的リスクが拡大する。

さて、世界標準の不活化ワクチンが四半世紀たっても国が認めていないというガラパゴス化してしまっている日本の予防接種行政によって、保護者とこどもたちにリスクを与え続けるというこの不幸な事態を、どう解消できるのでしょうか?
一人のオトナとして、今、できることは何なのでしょうか?
世田谷区政治に責任を持つ区議会議員として、区民の健康に責任を持つ政治家として、あなたたちに何ができるでしょうか?
何も、できることは、無い、のでしょうか?本当に、無い、のでしょうか?

B.政策提言
個人輸入で接種されているIPVへの区としての助成制度を上記A.の認識を前提にしてひとつの政策提案を行います。それをぜひ、貴区議団に世田谷区の政治に、行政に責任を持つ政治家として、実現可能な方策であるのかについてご検討いただきたいと願うのです。

1)世田谷区は、予防接種法に基づくOPVによるポリオ定期予防接種を法に従い継続する。

2)ただし、正当な根拠に基づき国の定めるOPVを忌避する保護者が存在することを認める。同時に、OPVを忌避する保護者が増加している現実を認める。

3)世田谷区としては世界的に、科学的にポリオ発症リスクがなく、流行への抑止効果が世界的に確認されているIPVの接種を保護者が選択することには科学 的合理性があり、かつ、国の指定伝染病であるポリオの流行を防ぐためのポリオ抗体を維持するためには科学的に妥当な行為であると認める。

4)よって、国の指定伝染病であるポリオの流行を防ぐために科学的に根拠のあるIPVを、個人として保護児童に対して接種することを希望する保護者に対し て、世田谷区としてその費用の全額、あるいは一部について助成を行う。これは、あくまで、国指定伝染病であるポリオに対する抗体保持率を高めるためであ り、指定伝染病の蔓延を防ぐという予防接種法の本旨を実現するための行為である。ただし、世田谷区はこの国の薬事法上未承認であるIPV接種によって生じ る可能性のある副反応による被害につき、その責任はIPV接種を求めた保護者に存することを確認するための書面の提出を助成を求める保護者に求める。

5)なお、この助成措置は、国が導入を予定しているDPT+IPVワクチンにつき、その導入についての経過措置が明確化され、そのために必要とされる単独IPVが現実に、国の施策として保護者に対して無料で提供されるまでの間に限定して行うものとする。

以上

世田谷区民の公選によって選ばれた政治家である区議の方々の職責に鑑み、一世田谷区民の私として貴区議団の英断をお願いするしだいです。

同一の提案を世田谷区議会で明確に区議団としてのコンタクト先が明記された区議団に送付しています。また、陳情書という公の性質をもつ文章であることに鑑 み、この陳情・提案の内容、ならびに貴区議団からのご返信については、その有無も含め、公開されてしかるべきものと考えております。

*************************

7月28日。送付先に電話にて陳情書を受け取ったのかどうか確認。
受け取ったと認識しているところ、既に議員団として共通認識にしているというところ、そもそも議員団の体をなしていないところ…などいろいろ。とまれ送付 したという事実を相手が確認してくれればいい。ちなみに、いつでもご説明に伺いますよという案内があるが、未だに、どこからも問合せは無い。(続く)

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