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臨時 vol 7 「事故調の議論には、是非、正確な情報を!」

医療ガバナンス学会 (2009年1月18日 09:56)


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弁護士 木ノ元 直樹


1 「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」が延
々と果てしなく続いています。その議事録は全て公開されており、何が議論とな
り誰がどのようは発言をしたかを容易に知ることができる状況です。延々と続く
議事録は全て読んでいますが、その中で少々気になる点があったため、筆をとり
ました。


2 気になったのは、第15回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあ
り方に関する検討会」(平成20年10月31日(金)16:00~18:00、
於:弘済会館)です。出席者は、委員として、前田座長、鮎澤委員、加藤委員、
木下委員、児玉委員、堺委員、高本委員、辻本委員、豊田委員、永池委員、樋口
委員、南委員、山口委員、山本委員、そして、参考人として、日本麻酔科学会理
事長で札幌医科大学教授の並木昭義参考人、日本産科婦人科学会常任理事で昭和
大学医学部教授の岡井崇参考人、日本救急医学会理事で埼玉医科大学総合医療セ
ンター教授の堤晴彦参考人が出席しました。

当初予定された議題に入る前に、名古屋弁護士会所属の弁護士、加藤委員から
発言がありました。以下議事録からの抜粋です。

「お手元に”安全で質の高い医療を実現するために”という日弁連の基調報告
書が配付されていると思います。これは日弁連が毎”人権擁護大会”というもの
をしておりまして、今年で51回目なのですけれども、10月2日、3日と人権擁護大
会が富山で開かれました。その第2分科会で”医療事故の防止と被害の救済のあ
り方を考える”というサブタイトルで”安全で質の高い医療を実現するために”
というシンポジウムが開かれ、そのときの基調報告書が分厚い資料でございます。
その中で特にこの検討会と関係の強い部分としては、281頁に、院内の医療事故
調査をする場合のガイドラインというものをお示しさせていただいております。
これは日弁連のシンポジウム実行委員会の中で、医療側の弁護士さん、患者側で
日頃やっている弁護士さん、いずれでもない弁護士さん、それぞれがディスカッ
ションをしながらこしらえたガイドラインです。参考にしていただければと思っ
ております。」


3 加藤委員の上記発言内容だと、この「院内の医療事故調査をする場合のガイ
ドライン」は、日弁連の人権擁護大会のシンポジウムで採択された日弁連の総意
に基づくものであるかのように誤解される可能性があるのではないか、と心配に
なりました。「これは日弁連のシンポジウム実行委員会の中で、医療側の弁護士
さん、患者側で日頃やっている弁護士さん、いずれでもない弁護士さん、それぞ
れがディスカッションをしながらこしらえたガイドラインです。」と加藤委員は
発言しているのですが、これだけ言われると、「日弁連の中には、医療側弁護士
と患者側弁護士、そしていずれでもない弁護士という3者があり、今回のガイド
ライン作成にあたっては、あらかじめそれぞれの中から代表者を選任し、その弁
護士がそれぞれの集団の代表として議論し決定した。その手続に際して、ガイド
ラインの案が一定の段階で日弁連全体に公にされ、日弁連の所属弁護士全員がシ
ンポジウム開催前にはその案について知悉していた。」ということが当然の前提
になっているかのように誤解されかねません。弁護士に中に、医療側弁護士と患
者側弁護士、そして医療にかかわっていないそれ以外の弁護士の3類型があるこ
とは間違いないのですが、その他の部分は事実ではないのです。


4 以下、私が認識していることを述べておきます。

1) そもそも、このガイドライン自体は日弁連で議決して採択されたものではあ
りません。

2) 事前に、ガイドライン案が日弁連を通じて、全会員に示された経緯もありま
せん。

3) ガイドライン作成までの手続(これはある関係者からの情報です。)ですが、
まず、人権大会の実行委員会は、平成20年の1月から毎月1回のペースで開催
され、医療側弁護士として東京から弁護士3名、仙台から1名の合計4名が参加
しました(もう一人医療側か患者側か不明の弁護士が1名参加していたようです。)
が、いずれも、医療側弁護士からの推薦なり互選によって参加したのではなく、
加藤良夫弁護士からの一本釣りで集まったメンバーのようです。

4) つまり、今回のガイドラインの議論に参加した医療側の弁護士は「医療側弁
護士の代表」という立場ではなく、加藤委員ら主催者側から誘われたので、自ら
の意志で個人的に参加して意見なりを述べたということなのです。(勿論、参加
された医療側の先生方は皆さん優秀な方々ですが)

5) しかも、上記4名の医療側弁護士に声がかかった時期は平成19年の12月
であったようです。

6) ガイドラインの作成過程で、医療側弁護士全体に対する情報提供は全くなさ
れていません。

現在、東京には3つの弁護士会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京
弁護士会)が存在しますが、その各弁護士会から医療側、患者側弁護士が選任さ
れて「三会医療協議会」という委員会が設置され活動しています。平成14年度
から活動を開始し今年で7年目に入っています。医事紛争、医療裁判を中心にさ
まざまな手続論、実体論等を勉強し、裁判所との協議や都内の13の大学病院と
も情報を交換するなど活発な活動を展開しているところですが、今回の富山での
院内調査に関するガイドラインの作成については、この三会医療協議会への正式
な情報提供は一切なく、協議会の特に医療側弁護士の殆どが、人権擁護大会で院
内調査の問題が取り上げられることすら知らなかったと言っても過言ではありま
せん。私自身、昨年4月よりこの三会医療協議会の副委員長として関わっており
ますが、人権擁護大会直前まで全く知りませんでした。

7) 上記シンポジウムの基調報告書(560頁以上に及ぶA4版の分厚い資料)
自体、日弁連の会員全員に配られてはいません。シンポジウム主催者(主に患者
側弁護士)は、医療機関、医学会などに無料で配布しているようですが、私を含
めたシンポジウムに全く関係しない弁護士は、2000円払って購入しなければ
ならない資料とされています(実は、私はある医療側弁護士から無料で貰ったの
ですが、それは「特別」のようです。)。日弁連の会員一般には2000円で販
売しつつ、日弁連会員以外には無償で頒布するという方針がどこでどのように
定されたのかについても、私は全く知りません。


5 つまり、「ガイドライン作成には医療側弁護士の代表も参加しており、医療
側弁護士全体の意も反映されている」というものではないのです。

私は医療側弁護士ですが、後から読ませてもらった「院内事故調査委員会ガイ
ドライン」については相当異論があります。このような内容のものが、日弁連会
員の総意であるかのように国民全体に誤解されては困ります。

こんなところにも、延々と続く事故調第三次試案、法案大綱の議論の危うさを
感じるのです。果たして、正確な偏りのない情報に従って、正しく議論がなされ
ているのだろうか・・・と。


とにかく、事故調の議論が、是非とも、正確な情報を基にして公明正大になさ
れることを、あらためて強く求めるものです。もしそれができないのであれば、
検討会は中止していただくのが筋だと考えます。(今さらこのようなことを言わ
なければならないこと自体甚だ遺憾ですが・・・)

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