医療ガバナンス学会 (2011年8月14日 06:00)
この記事は相馬市長立谷秀清メールマガジン 2011/08/08号 No.256より転載です。
福島県相馬市長
立谷 秀清
2011年8月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
津波直後はガレキ野原だった原釜が、ガレキ撤去が済んで無機質な平地になってしまうと、思い出すのは子どもの頃の記憶ばかりだ。でも被災直前まで、人びと の会話や笑顔は昔のままだったし、鍵をかけない習慣は今でも当たり前のことだった。浜に住んでいる人びとは家々の家族構成はもちろんのこと、それぞれが何 をしているかも大抵知っていた。
今、都会では無縁社会と言われ、経済成長時代以来に出来た、個人生活重視の文化的住居ゆえの孤独死が社会問題となっている。それに対し、今回被災してガレ キの原となった原釜も尾浜も磯部も、人びとの絆という点では、集落のコミュニケーションが豊かな地域社会だった。今回の災害対策で私が最も感心し、そして 合点したことは避難所の整然とした気配り社会である。およそプライバシーとは程遠い空間での生活を、長い人で3カ月も辛抱出来たのは、諍いを生じさせな かった彼らの賢さゆえである。避難所を集落単位で指定したことを、思いやりと励まし合いにおいて活かしてくれた。仮設住宅にも集落の形態を保ったまま移住 してもらったが、行政支援員として集会所単位で選任した組長さんや副組長さんのもとで、思いやりを交わしてくれるに違いない。
ただ、問題は相馬市以外から仮設住宅に入居する方々を、どのようにコミュニケーションの輪に組み入れるかということである。例えば飯舘村長さんから依頼さ れた164世帯については一つのブロックに入ってもらい、組長さんと副組長さんに私の考えを話して理解してもらった。もちろん生活物資の配給や、避難所支 援のサービスなどは組長会議を通して相馬市民と同様にさせてもらう。
しかし飯舘村からの入居者のように地域コミュニティが最初から組めるところは心配がないのだが、さまざまな市町村からの入居者で仮設所集落を形成せざるを得ないブロックがどうしても出来てしまう。知らない人たちどうしのコミュニティをどのように作るか?
最低やらなければならないことは、災害弱者支援、つまり身体・精神障害者の方々への支援、要介護老人世帯への気配り、それと災害によって独居世帯となった 方々への支援と気配りである。少なくとも平成23年度は、これらの方々をはじめ希望する入居者全員への夕食の配給を続けるつもりだが、その他の災害弱者へ の生活支援なども相馬市民同様に行いたいと思っている。ただし、ふるさと自治体との調整も必要だ。
相馬市としては、出身自治体を問わず、仮設住宅からの立ち上がりを迎える日が来るまで、1,500戸の方々全体を一体として、均等にサービスを展開したい と考えている。例えば健康維持については負担金なしで一般健診を全員に受けてもらいたい。また買い物支援や孤独死防止なども、全体に網をかけての配慮が必 要だ。
この点について、冒頭書いた私の子どもの頃の記憶で恐縮だが、リヤカー引きの戸別販売を考えてみた。16か所出来る集会所にそれぞれ一人の割合で、リヤ カー引き販売員を行政支援員として臨時雇用して、仮設住宅の一棟一棟の間を通って訪問販売をする。雇用対策も兼ねるので一日8時間週5日勤務とするが、販 売以外の時間は障害者の方々へ、たとえば洗濯などの生活支援をしてもらう。
募集したところ、お八重ばあちゃんのような話し好きな浜の女性たちが集まってくれた。小さかった私が乗った鉄と板で出来たリヤカーを相馬市いっぱい探した が、もう何処の農家にもなく、スタイリッシュなステンレス製折りたたみ式となった。始めて一カ月になるが、最初の計画とは違い二人ひと組で廻っている。そ の方が会話が弾んでいいのかも知れない。
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