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Vol.248 何でもかんでも評価機構

医療ガバナンス学会 (2011年8月24日 06:00)


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この記事は葛飾区医師会だより第30巻第2号からの転載です。

葛飾区医師会副会長
平成立石病院理事長 猪口正孝
2011年8月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


財団法人日本医療機能評価機構(以下機能評価機構)を御存じでしょうか。
産科医療補償制度の運営団体として有名になりましたが、本来機能評価機構は1995年に国民が適切で質の高い医療を安心して享受できるために、医療機関
を学術的観点から中立的な立場で評価し、明らかとなった問題点の改善を支援する第3者機関として設立されています(日本医療評価機構HPより抜粋)。

全国8708病院中2550病院が機能評価認定を受けており(2010年11月5日現在)、機能評価機構のHPで認定病院が公開されています。
葛飾区内の病院でも機能評価機構の認定を受けている病院がいくつかあります。
私の病院も2007年に受審し認定を受けましたが、その準備には相当の努力と時間を要しました。つい最近亀有病院さんも受審なされ、相当のご苦労をなさっ たと理事長の石川博久先生がおっしゃっておられました。若い会員の方で病院勤務時代にその苦労を経験された方も多くおられると思います。

こうした機能を評価しようとする時代の流れは、一方で標準化という流れとも一致しています。”標準化(Standardization)とは、「自由に放 置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」(日本工業標準調査会JISO”だそうです。
医療における標準化は工業におけるものとは単純に一致していませんが、医療行為のプロセスを明らかにし、ばらつきを少なくすることと言えると思います。癌 治療においては癌学会がガイドラインを策定し標準化しています。病院が異なっても癌治療のガイドラインに従えば病院間のばらつきが少なくなり、患者さんは 全国どこで治療を受けても一定の期待値を持つことができるようになります。
同様に多くの学会が治療のためのガイドラインを策定していることはご存じのとおりです。また、多くの急性期病院は入院診療のためのクリニカルパスを用いる ようになってきていますが、これは検査や手術そして看護や食事などの日程を細部にわたる計画を立てて、診療の標準化を行ったものであります。

このように標準化によりある決まったプロセスで作業が行われると、同一プロセスによる結果を集積することができるようになります。期待以上の結果なのか以下なのか、結果を分析することによって、そのプロセスの問題点が明らかになり改善することができるようになるわけです。
こうしたプロセスの結果に統計的処理を行い見やすくしたものをアウトカムと言います。
アウトカムのうち医療の質を評価するのに適しているものを特に臨床指標(クリニカル・インディケーター)と呼び、さらに他の病院と比較するためのものをベ ンチマークと言います。このように標準化を行うと目的は同じでも異なったプロセスで行われた結果に対しての比較評価が可能になってきます。

始めは工業で行われてきた品質管理の手法が、医療における質の概念を変えてきてしまいました。ばらつきがなくいつも高いレベルの結果を保つことが社会から の最大要求になってきています。いいかえると質の高い医療とはエビデンスのある最も高い水準の診断と治療を、安全で確実に常に行うこととなります。患者さ んは公表されている手術結果などのアウトカムを用いて他の医療機関と比較検討することができ、こうした成績をもとに医療機関を選ぶ時代になってきました。 医師は自らの技術と知識の研鍍を重ねゴッドハンドとして名医になるのみでなく、自ら働く組織の精度を高めるカリスマ的指導者であり経営者にならなければな くなったのです。

しかし結果は全てを語っているように思えますが、同じ病名であっても母集団が違うことはいくらでもあります。対象を選ぶことのできる医療機関と、選ぶことなくハイリスク患者を背負うところでは同技術同プロセスであっても結果は異なります。
全ての条件をそろえることは不可能です。また医療における不確実性はあらゆる状態で前提条件となります。よって限られた臨床指標のみで医療機関を評価する ことができないことは医師であるならばすぐにわかります。そこで医療機能評価機構は結果を重視するのではなくプロセスを重視することにしています。良いプ ロセスは良い結果を生む。さすがよく解っていらっしゃる。

こうして我々医師は評価される存在となってしまいました。非常な窮屈さを感じる一方で、たしかに質の向上というものを意識するようにもなったとも思います。評価は改善をもたらしますので、評価されることは良いことなのでしょうきっと。

ならばあらゆるものを評価検証する社会を作り上げたらどうでしょうか。我々医療のみが評価されるのは納得いきません。例えばマスコミ。その信頼性や公平性、客観性、公益性などを評価してAAAからE、F、G、H評価ぐらいまで格付けするというのはどうでしよう。

マスコミ評価機構というのができるといいと思いませんか。弁護士も評価したらどうでしょうか。
警察検察評価機構。政治家評価機構。行政機関評価機構。
なんでもかんでも評価機構というのがあれば一つで済むかもしれません。

マスコミが作り上げた医療像は医療崩壊の一因だと言われていますが、マスコミは決して批判される立場ではありませんでした。いつも高みにいて批判を繰り返すのみです。マスコミ評価機構ができることは言論の自由の見地から不可能でしょう。
しかし医療に関する報道だけでも医師会は評価したらどうでしょうか。
現場の医師は医師会を頼もしく思うでしょう。
ただし医師会が逆襲されてしまう可能性の方が高いかもしれませんが…

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