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Vol.249 人権の問題はないのか?「新型インフルエンザ対策行動計画」パブリックコメント

医療ガバナンス学会 (2011年8月25日 06:00)


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東京大学医科学研究所 村重直子
2011年8月25日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


「新型インフルエンザ対策行動計画」(改定案)に対する意見募集(パブリックコメント)が8月29日(月)まで行われています。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060110815&Mode=0

これは、パブリックコメントに提出した意見です。多くの皆さんにも考えていただけましたら幸いです。
それにしても、日本医師会は、医師等の感染時等に対する補償制度の創設を要望していましたが、実際には、徴兵によく似た診療従事命令を受けることとなり、大多数の医療従事者は補償の対象とならないであろうことに気づいているのでしょうか。

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内閣官房新型インフルエンザ等対策室 あて

新型インフルエンザ対策行動計画(改定案)に対する意見

(1)情報公開の不足について
法改正等も視野に入れた行動計画の改定であるならば、法令の条文も、同時に意見募集するべきである。行動計画だけを公開し、法令の条文を公開しないパブ リックコメントは、厚生労働省と国民との情報の非対称性があまりに大きい状況で行われており、国民が改定内容を十分に理解したうえでの意見を募集する手続 きとはいえない。

(2)診療従事命令の法制化について
~~~改定案より抜粋~~~
P.33【地域医療体制の整備】
…都道府県等の要請に応じて対応した場合における被災補償等の医療従事者が不利益を被らない工夫について検討
P.55【医療体制の整備】
…帰国者・接触者外来を指定しての診療体制から一般の医療機関でも診療する体制に移行することを要請する。
~~~~~~~~~~~~~
・被災補償の要件とすることで、実質的には、医療従事者に対する診療従事命令を法制化することが見えている。

・診療従事命令は、医療従事者が通常診療している医療機関・介護施設等(勤務先の施設等)ではなく、空港・港・検疫所等における検疫や診療等を強制し、医療従事者を通常の診療から引き剥がすこととなり、以下のような問題が生ずると想定される。
1)一般の患者を診療する医療従事者数が、人手不足の現状からさらに減り、一般の患者が必要な医療を受けられなくなる。
2)各医療機関において、新型インフルエンザ患者が受診する場合を想定し、準備を進める時期に、人手不足の現状から医療従事者数がさらに減り、十分な備え ができなくなる。新型インフルエンザ患者が適切な医療を受けられない、医療機関に入院・通院している一般の患者に新型インフルエンザが感染するといった事 態が考えられる。
3)水際で食い止められない疾患の検疫に、検疫所職員等以外の医療従事者を従事させる命令には合理性がない。
4)徴兵によく似た制度であり、医療従事者の人権の問題となり得る。

・「都道府県等の要請に応じて対応した」という手続きをした一部の医療従事者を除き、大多数の医療従事者を補償の対象としないことは問題である。すべての 医療従事者が新型インフルエンザに暴露・接触するリスクを負っており、すべての医療従事者を補償の対象とするべきである。

(3)地域封じ込めについて
~~~改定案より抜粋~~~
P.54 人口密度が低く、交通量が少なく、自然障壁等により交通遮断が比較的容易な離島や山間地域などにおいて強い病原性を示す新型インフルエンザが我 が国で初めて発生し、地域封じ込めに効果あると考えられるなど、一定の条件を満たす場合には、直ちに地域封じ込め実施の可否について検討を行い、結論を得 る。
~~~~~~~~~~~~~
・交通遮断だけでなく、食糧、燃料、電気、ガス、水道、医薬品などの流通や医療提供を考えれば、地域封じ込めは不可能と考えられる。

・交通遮断だけでなく、食糧、燃料、電気、ガス、水道、医薬品などの流通や医療提供もすべて遮断する場合、その地域の住民(新型インフルエンザに感染した者も、していない者も)の人権の問題となり得る。

(4)その他
様々な問題があるが、詳細は拙著「さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?」(講談社)を参照されたい。

以上

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