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臨時 vol 1 「野菜のがん予防に科学的な根拠が」

医療ガバナンス学会 (2009年1月7日 10:04)


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自治医科大学 学長 高久史麿


野菜や果物の摂取が健康の維持に良いことは以前からよく知られている事実で、
血圧を下げる、脳の老化の防止、がんの発生を減らす等の医学的な効用が数多く
報告されている。特にがんについては、頭頸部のがん、乳がん、卵巣がん、膵臓
がん、前立腺がん等、さまざまながんの発生に対して予防的に働くことが相次い
で報告されており、健康増進の代表食品として、野菜と果物の地位は世界的に確
立されていると言えよう。しかし、上記の一連の効果は、いずれも一定数以上の
高齢者(通常65歳以上)を対象にして、数年間(平均5年間)にわたって毎日
の食事内容と病気の発症との関係を調べた疫学研究の結果に基づいた結論であっ
て、なぜ野菜や果物ががんを含めたいろいろな疾患予防に有用なのか、科学的根
拠は十分には得られていなかった。しいて言えば繊維成分の多い野菜や果物を多
く摂ると、必然的に、肉類等血中コレステロール値を上昇させる食品の摂取量が
少なくなり、心血管系の疾患の予防になるということ、また、特に野菜は量の割
にカロリーが少ないため、野菜を多く摂る人は肥満になる確率が低く、そのこと
も血圧を下げたり、一部のがんに対しては予防的に働くと推定されることである。

この問題に関連して、最近イギリスの研究者たちによってブロッコリーの摂取
の前立腺の組織に対する影響についての詳細な研究結果が報告されているので、
できるだけ分かりやすくご紹介したい1)。


彼らは57~70歳の男性21人を対象にして、日常の食事に加えてブロッコ
リーを1週間400g摂取する群(13人)と、その対照としてサヤエンドウを
1週間400gを摂取する群(8人)とに分け、上記の食事を12カ月間継続し
てもらった。これだけでも大変なことであるが、研究の対象となった人たちは、
この研究の直前と、6カ月目、12カ月目と3回にわたって、自分の前立腺の生
検を受けている。前立腺の生検は、通常、脊椎麻酔、あるいは全身麻酔のもとで、
会陰部から前立腺に向けて針を刺して前立腺の組織を採るという、なかなか大変
な外科的処置である。この研究の結果分かったことは、ブロッコリーを摂取した
人たちは、前立腺の組織中にある炎症やがんの発生に関係する複数の遺伝子の
性に大きな変化が見られたということである。詳細は専門的すぎるので省略する
が、「このような遺伝子の発現の変化が前立腺がんの予防に有用であろう」と研
究者たちは結論づけている。この研究は参加者に大変な負担をかけた臨床研究で
あったが、一定の食事の摂取が前立腺組織の遺伝子の活性に影響を及ぼすこと
示したという点で、注目に値する結果であると言えよう。

今回紹介したような研究方法を用いれば、生活習慣とがんを含めたさまざまな
疾患との関係がより明らかになるであろう。


●プロフィール・たかく ふみまろ
1954年東京大学医学部卒。72年自治医科大学教授、82年東京大学医学
部教授、88年同医学部長、95年東京大学名誉教授、96年自治医科大学学長、
04年日本医学会会長。医療の質・安全学会理事長。

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