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臨時 vol 202 「「医の中の蛙」 コンビニ診療所」

医療ガバナンス学会 (2008年12月26日 11:39)


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久住英二

 

※今回の記事は新潟日報にて毎月第4月曜日に掲載されています

皆さんにとって医療は使いやすいものでしょうか。仕事が終わるころにはどの
医者も閉まっている、病院に行くと通勤には遠回り、待ち時間が長いなどで、医
療機関から足が遠ざかっている人も多いでしょう。私たち東京大学医科学研究所
探索医療ヒューマンネットワークシステム部門では、医療者だけでなく患者さん、
家族、社会のすべてにとって利便性の高い医療体制を構築しようと研究や活動を
行っています。あえて「医学」ではく、「医療」というのは、医学は学問で、医
療はその実践だからです。今回は、医療をもっと便利にするための活動を紹介い
たします。

私たちも、医療機関は不便だと感じていました。なぜなら、一日は二十四時間
あり、急性疾患では夜に具合が悪くなることが多いのに、ほとんどの医療機関は
昼間の八時間しか診療していません。病院の夜間救急はありますが、不便です。
慢性疾患はさらに問題です。生活習慣病にかかるのは、ちょうど職場で責任の重
い年代でもあり、定期通院はなかなかできません。放置すれば、心筋梗塞(こう
そく)などの、より深刻な疾病を発病するリスクが高まります。

コンビニエンスストアが便利なように、夜も普通に診療する病院があったら、
きっと便利だろうと考えていました。コンビニエンスストアの特徴は、便利な時
間帯の営業、生活動線立地、幅広く一定レベルの品ぞろえです。そこで二〇〇六
年に、西新宿のサラリーマンの通勤経路にあたるJR新宿駅西口徒歩三分のビル
で、平日十八時から二十一時まで診療する内科診療所をつくり、調査研究しまし
た。

診療所には、多い時で二十人ほどが受診しました。二十代と三十代がほとんど
で、女性の比率が高く、風邪やうつ病、適応障害の人が多かったです。受診した
方のほとんどが西新宿で働いており、同じ新宿でも東口方面から来た人はごく少
数でした。このことは、立地がいかに受診動態に大きく影響するか示唆していま
す。また、受診者を対象に行ったアンケートから、いままでは忙しくて病院に行
けなかったという人が多いことが分かりました。若い人や女性が多いのは、仕事
で持ち場を離れにくく、日中受診しにくいためと推測しました。

この結果から、満たされていない医療ニーズは大きく、それを解決するための
キーワードとして、「夜間診療」、「生活動線」が重要であることがわかりまし
た。この結果をふまえ、さらなる医療ニーズの調査研究を目的として、JR東日
本の立川駅に直結した診療所「ナビタスクリニック立川」を今年六月に開設しま
した。平日は朝十時から夜九時まで診療しています。机上の空論でなく、実践を
通じて、患者さんが望む医療のあり方を追求していきたいと思っています。

著者ご略歴
昭和四十八年新潟県長岡市(旧三島郡和島村)生まれ。新潟大学医学部医学科
卒業、国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修後、同院血液科医員に。
2006年から東京大学医科学研究所客員研究員。2008年に「ナビタスクリ
ニック立川」開設。

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