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Vol.453 人材不足の南相馬に、全国の学生が参入し始めています

医療ガバナンス学会 (2012年4月3日 16:00)


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東京大学大学院 医学系研究科 国際保健政策学教室 修士課程
野村 周平
2012年4月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


2012年1月23日から3月30日にかけて、10大学27名の学生を福島県南相馬市立総合病院に紹介致しました。市立病院勤務、坪倉正治医師が昨年夏よ り行っている、内部被ばく検査関連12,000人分のデータ処理のお手伝いです。皆、国家試験や研究、就活で忙しい時期にもかかわらず足を運んで下さいま した。

予てより内部被ばく検査結果、および検査時に被検者の方々にご記入頂いている原発事故後の「避難行動アンケート」(どちらも紙媒体)は、検査を行っている 放射線技師や病院事務員らによってデータ解析用のエクセルファイルに打ち込まれておりました。当然ながら一日100名にも上る検査結果のデータ処理は、常 勤で働かれる医療者にとって大変な負担です。そこで、ちょうど昨年12月末に市立病院を訪ねた際、未処理の検査結果資料が山積みなっているので手伝ってほ しいと、坪倉医師よりご相談を受けました。

募集に関しては、学部生の頃所属していた日本国際保健医療学会学生部会(jaih-s: http://jaih-s.net/)をはじめ、こどもと共に学ぶ会(WiNG: http://wing10.web.fc2.com/)、東大-東北復興エイド(UT-Aid: http://utaid.yu-yake.com/)より、ご支援を頂きました。
関東以北の大学を中心に募集をかけたところ、杏林大学、慶應義塾大学、城西国際大学、昭和大学、千葉大学、東京大学、東京医科歯科大学、東北大学、兵庫県 立大学、横浜県立大学(あいうえお順)の学生が手を挙げてくださいました。医学部や看護学部といった医療系学部のみならず、農学や法学、教養学部出身の者 もおります。

特に、城西国際大学におきましては、薬学部副学長の光本篤史教授が積極的に薬学部生にお声をかけて下さり、また先生ご自身もデータ処理にご参加くださいました。

お集まりいただいた学生から、「福島って今どれくらい危険なの?もう影響出てる人っているの?」「福島の津波の被害って全然耳にしないけど、実際どれくら いなの?」「戻ってきている住民っているの?」といった率直な質問をよく頂きました。初めはこういった問いに、現場福島と県外との震災・原発事故に対する 意識の温度差を私は感じました。医療者を初め多くの方が復興・再興を掲げ、各地で放射線の説明会などをされ、風評被害の緩和や医療従事者の募集を目的にメ ディアに様々な情報を発信しているのですが、遠方の首都圏以西では、その現場の”叫び”があまり届いていないのだろうということに、心苦しい思いでした。

毎回のデータ処理の際、放射線に関して今世間で注目されている諸問題から、事故後から現在に至るまでの南相馬の医療事情、現場医療者と住民の不満や歓喜の 声まで、坪倉医師がお忙しい合間を縫って毎回ボランティア学生にご説明にいらして下さいました。彼らが打ち込み用の資料に目を通しながら、「こんなにみん な飯舘村に避難したんだ」、「このご家族、避難場所が皆違うけど、ずっと家族ばらばらに生活されていたのかな」、「この人もこの人も、事故の日に3回も避 難場所を変えて、車中泊までしてるけど、きっと皆放射線に怯えながら深夜の移動を繰り返していたんだよね」と、事故直後の地元住民の心境に想いを巡らせて いる光景に、感慨深い表情を浮かべておりました。

金澤幸夫院長、及川友好副院長、亀田総合病院より出向されている原澤慶太郎医師や山本喜文理学療法士らも、震災・原発事故の多重被害が地域に及ぼす影響 や、復興計画のビジョン、戦略、あるいは、仮設住宅入所者らを対象にした感染症予防のプロジェクトなどの院内外の個々のオペレーションについて、学生達に お話し下さいました。福島原発事故に関して、若い世代にとって坪倉医師のような先導者が身近にいる事実を、また復興支援は身のまわりから始められることを 知る良い機会を提供くださいました。

帰り際には、「南相馬市再興のために尽力している方々の姿を見て感動しました。同時に、自分に出来ることをやりたいと強く思いました。これからも福島県そ して南相馬市を応援していきたいと思います」と、城西国際大学の堀内麻美さんは話されました。また、兵庫県からバスを乗り継いでまでいらして下さった兵庫 県立大学の泉村萌子さんは、「遠い関西にいらして下されば、昨年も今も何も変わらない、普通の生活を送れます。でも、それはたまたまここ(福島)に住んで いなかった人たちの考えなんですね」と、事故後も南相馬を愛し、戻ってこられる地元住民の心境について語り、「関西にいる私も、もっとアンテナを広く張 り、この福島・南相馬の現状を常にキャッチしていかなければならないと強く感じました」と話されました。皆、近い未来日本や世界を支え、後世に教訓を伝え る世代として、この問題を考えることはなにより大切だという想いを語っておりました。

嬉しいことに、本データ処理に参加された多くの学生が、市立病院の先生方と直接やり取りを初め、先の感染症対策の仮設事業などのお手伝いをぞくぞくと開始 しています。SNS上で原澤医師が、仮設聞き取り調査のお手伝い公募をされた際、直後に「いくつかの団体、学生ネットワークへ周知させていただきました。 私自身も参加させていただきます。宜しくお願い致します」(横浜市立大学:中村友紀さん)と、メッセージが届いていたのには大変感動いたしました。今回の 内部被ばく検査関連の打ち込みのお手伝いを筆頭に、同じ若い世代がどんどん南相馬に入り、活発的に復興に力を入れていることを大変うれしく思います。

最後に、以下のリンクより今回お手伝いいただいた学生の作業風景がご覧になれます。是非ご高覧頂ければ幸いにございます。

http://www.facebook.com/media/set/?set=a.389957071022258.95992.100000239068216&type=3

今後も私ら渋谷研学生をはじめ、南相馬での学生の活動に是非注目して頂ければ幸いです。
何卒、よろしくお願い申し上げます。

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