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Vol.493 内部被曝通信 福島・浜通りから~体内の放射能分析は試行錯誤

医療ガバナンス学会 (2012年5月21日 06:00)


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この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/

南相馬市立総合病院
非常勤内科医  坪倉 正治
2012年5月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


遮蔽がホールボディーカウンターの性能を決める最も大事な要素であることは、以前のブログ(  https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/zHqKWDeWnh )で紹介しました。その他にも性能 を決めるいくつかの要因がありますが、今回は、もう一つの重要な要素であるスペクトル解析ソフトについてお話をしたいと思います。

大きな測定器を体に近づけて、体から発せられる微量の放射線を計測しているのが、そもそものホールボディーカウンターの原理です。周りで聞こえる騒音の中で(周りに飛び交う放射線の中で)、体から聞こえる小さな音(体から発せられている微量な放射線)を聞き分けているようなものです。出来るだけ周りの騒音が小さければ小さいほど、よりよく小さい音を聞き分けることが出来ます。

この後、聞き分けた音の中で(感知した放射線の中で)、この音ならセシウム134だ、いやセシウム137の音かな?というように、放射能を出す源を判別し、分離する作業があります。

この部分を担当しているのが、スペクトル解析ソフトです。ホールボディーカウンターにも食品の検査機にも搭載されています。セシウムを分離することだけを目的としたソフトや、色々な核種(放射線の元になる元素の種類)があることを漏らさず探すことを目的としたソフトなど様々です。

その器械が計測したスペクトルから、セシウム134や137を正確に分離し、最終的にベクレルの値を出すことが出来るかは、当然その器械の性能に直結します。

では、このソフトで何が問題になっているのでしょうか。小さい音である場合、セシウム134や137の分離を失敗することがあるのです。実際には存在しているのに「存在しない」と判断したり、間違って多く(少なく)見積もったり、違う種類の核種と間違えたりすることがあるのです。明らかに検出するときは、 ソフトの動作は問題ないのですが、今現在我々がフォローのターゲットとしているような、検出限界ぎりぎりの値の解析の際には特に問題となります。

ホールボディーカウンターも類によって、このソフトの出来が大きく異なります。少しずれた場所をセシウムと判定するものもありました。「ソフトウエアの作成は、他の企業に委託してあり、よくわかりません」と言われたこともありました。

当院の現在の器械でも、判別に失敗する波形パターンがいくつか明らかになってきています。(もちろんセシウムを明らかに検出するときには、ほぼ失敗しませんが、検出限界ぎりぎりのラインのときには失敗することが多くなります。)今は、当院の放射線技師が手作業で、そのずれを修正してくれています。

この問題を解決するため、ソフトウェアの微調整を行っています。今週はじめ東大の早野先生を始め、企業のスタッフの方にも来院いただき、ディスカッション しながら最適な設定を見つけるための話し合いをしました。お忙しい中本当に感謝です。より正確に値が出るようにソフトの設定に微調整を加えました。

ROIを決めてしまい、net peak areaを計算してもらうようにはプログラミング上出来ず、ピークサーチの感度を下げ、色々な核種を無理矢理拾う方向に設定を変えました。うまく行くかど うかをテストしながら計測をさらに進めています。皆の努力で試行錯誤しながら、少しずつ問題点を解決して行くしかありません。

*文中の写真はこちらのサイトよりご覧ください。
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https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/jTfaYbz8bU

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