医療ガバナンス学会 (2012年6月17日 18:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年6月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
南相馬市の高村美春さんも一緒です。放射線被曝に関するリスクコミュニケーションをどのように行うかということを議論するという会でした。
あえて、その会の内容を論評する気はありませんが、何だか机上のデータが飛び交う会でした。残念ながら机上のデータのみでコミュニケーションは成立しません。
もちろん、実際の医療でも、データを根拠にして話をすることはままあります。すべてに根拠がある訳ではありませんが、多くは何かしらの根拠があります。
治療法Aと治療法Bがあります。それぞれの治療のメリット、デメリットを説明し、合併症や想定されること、さらに転帰について話をする。二人で対話をしながら、最終的な治療法と方針を決定する。血液がんの治療もその例外ではありません。
いつも思うのは、その患者さんの治療法が決定され、方針が決まるのは、説明を聞いた患者さんが確率を理解し、メリットとデメリットを天秤にかけることができたからではないということです。
医師と患者さんの間に、対話があるからだと思っています。血液内科が行う骨髄移植は、数ある治療法の中で、危険性のかなり高い治療です。その治療の説明書を渡し、そこにはリスクベネフィットが書かれている。それで納得した選択が出来るかといえば、無理です。
放射線の影響に関しても同じです。じっくり時間をかけて話を聞き、お互いに対話を続けながら方針を決めて行く。それが最も大事なことだといつも感じます。
放射線被曝に関する問題は、今まで対話をする、話をする機会があまりにも少なすぎました(そして今も少ないです)。
大人数の講演会や、紙媒体で書かれたものを読んで、完全に納得できるのは一部の人だけです。インターネットには有用な情報もありますが、色々なところに情 報が散乱し、議論したいのか個人攻撃をしたいのか、どうしたいのか分からないような話ばかり。やはり話し合いになっていません。
100mSV以下では、xxx、LNTモデルを使うと、xxx、ゼロリスクは現実的にはあり得なく、タバコのリスクと比較すると、xxxであると。これ は、よく聞く話です。諸説あって分かってない部分があることも事実ですが、確かに上記は科学的にはスタンダードなのかもしれません。
データに基づいて話をしないのであれば、何に基づいて話をする気なのか?確かに困ります。最終的に色々な内部被曝のデータや計測値が出そろったとして、それで全てが解決するのか。決してそうではないと感じます。
多くの根拠を手に入れれば、その分、何かしらの判断はしやすくなると思います。その先をどうするのか。
多くの方が、留まったり、移住したりの判断をしました。完全に隅から隅まで納得しきって、今の判断をしている人がどれくらいいらっしゃるのか?何かしら決めたこともあるのだろうし、何かしら引っかかる部分もあるのでしょう。
どのような選択をしても、何かしらの葛藤を皆少なからずもち続けているはずです。
かっこつけて言えば「寄り添う」という言葉になるのでしょうか。言うは易しなのですが、簡単にできません。放射線の説明会も出来ることなら、そのように実践したいと思っていますが、なかなか難しい毎日です。
出来ているという気もさらさらありません。南相馬市では番場さちこさんが中心となってくださり、説明会や話の会を開いています。本当に感謝しています。
できれば、お互いの顔が見える10人までぐらいの座談会が理想です。大きな講演会は、それこそテレビと変わりません。
なんてことを思った懇談会でした。
写真は、南相馬市でのお話し会でのひとこまです。
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https://aspara.asahi.com/blog/hamadori/entry/QH7ekB6krF