医療ガバナンス学会 (2012年7月22日 06:00)
次に、状況がある程度安定した後、四万十川の天然鮎を10kg(約160匹)を被災地に送りたいと思った。しかし、夏を向かえる時期になっても現地入りし ているボランティアによると、被災地の状況は想像以上に厳しく、インフラが破壊されたままで、鮎を焼く手段がないとのことだった。残念ながら、無力な私に は避難生活をしている方々に、一時の安らぎさえ提供することが出来なかった。
そんな折り、代々木ゼミナールの同僚であり友人でもある藤井健志先生が、7月(2011年)に教育支援で福島に行かれることを知り、急遽参加させて戴く機会を得た。
大学に入学した1989年から教壇に立ち、現在に至るまで予備校講師をしている私が被災地に行き、最も効果的に支援出来るのは教育の分野であり、特に高校生を大学入試合格に導くことであると考えていた。
正直、当時はまだ原発や放射能のことも気になったが、「素晴らしい才能を持って生まれてきたにも拘わらず、震災の為に本来進むべき道からそれてしまう若者 は出してはならない!言わば『平成の公職追放』のようなことは断じてあってはならない!『才能は伸ばさなければ腐る』や『最上のものが腐敗すると最悪の悪 臭を放つ』とあるが、このようなことは言語道断!次世代の未来を守る!!」という思いから、福島入りを決意した。
こうして、震災後初めての連休は福島県相馬市で過ごすことになった。ホテルで向かえた早朝、撫子ジャパンのワールドカップ優勝を相部屋だった藤井先生と共にテレビで見て、これが復興の狼煙になることを祈った。
大変嬉しいことに、極めて厳しい状況下、生徒たちを支え続けた諸先生方、代ゼミの支援者たち、そして何よりも生徒たちの努力の結果、相馬高校では今春、例 年よりも10名程多い42名の生徒が国公立大学に合格!!しかも、京都大学や一橋大学にも合格者が出て大いに盛り上がった。私にとっては撫子ジャパンの世 界一に匹敵する明るいニュースだった。
もとより「被災地に夏の風物詩の鮎を」という思いが、去る7月12日に四万十川直送の天然鮎・鰻・川エビを相馬高校と新地高校の先生方にご堪能戴き、実現 した。これで個人的には一つの区切りが付いた。が、これで終わりではない!次のステージが待っている!!それは相馬高校の更なる進学実績。幸いにも優秀な 生徒たちがいる。彼らを全力で支援し、結果として東大合格者が出て欲しい。風化しつつある状況下、世間にインパクトを与え、日本中の注目を少しでも向けた い。
一点突破全面展開!!相馬高校に心ある方々が集い、何かが生まれ始めているのを感じる。東大医科研の上昌広教授、ゲーム理論の大家・東大経済学部の松井彰 彦教授、代ゼミの人気講師・藤井健志先生、世界陸上の銅メダリストの為末大選手、競輪界のスーパースター・長塚智広選手、そしてロンドンオリンピック後に は北京オリンピック銀メダリスト・フェンシングの太田雄貴選手が相馬高校を訪れると聞いている。普通では有り得ないほど広範囲に及ぶ著名人が集結してい る。お金を払って招くとしたら、数百万円では済まないかもしれない。
ピンチはチャンス!!人が集えば凄いことが出来ることを世に示し、この未曽有の大ピンチをビッグチャンスに変えて、相馬高校から福島を、日本を、そして世界をより良い方向に変えて行ければと切に願う。
さて、6月13日、番場ゼミナールで南相馬市立総合病院の非常勤務医として、被災者の内部被曝の測定をしておられる坪倉正治先生のお話しを伺い、そして質 問させて戴いた。福島の被曝量に比べてチェルノブイリの原発事故によるそれは、桁が2~3高いとのこと。確かに咽頭癌の発病率は上がったが、被曝によって 障害児が多く生まれたという報告はないことを聴き、出席して本当に良かったと思った。東京に帰ってからの一週間、すべての授業でこのことを言いまくっ た!!
「子供が福島出身の人と結婚したいと言い出したらどうしよう?」と悩んでいる親たちがいる。チェルノブイリに比べて被曝量が2~3桁低いからといって、発癌率が全く上がらないとは断言出来ないかもしれない。しかし、生まれて来る子供は大丈夫!!声を大にして言いたい!!風評被害から福島の子供たちを守るのは我々大人の義務だと感じている。
子供のフィアンセが広島や長崎出身だからといって結婚に反対する親など聞いたことがない。広島の牡蛎を放射能を恐れて食べない人を私は知らない。牡蛎は1 日に200リットルもの海水を取り込み、その栄養素を吸収して育つ、それ故、海水の栄養素が凝縮されている牡蛎は「海のミルク」と呼ばれるのだが、現にそ の牡蛎を皆喜々として食べているではないか。正しい情報、正しい認識を共有すべきである。
疾風に勁草を知る。今こそ志高き方々と共に、凛然とした姿勢で前に進みたいと思う。