医療ガバナンス学会 (2012年7月24日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
www.asahi.com/apital/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年7月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
特に普通の健診と変わる訳でもなく、我々のすることは問診、採血や採尿、レントゲン検査の後の診察でした。今回の健診で初めてわかったことではないです が、やはり慢性疾患が悪くなっています。体重増加、高血圧、糖尿病、コレステロール高値などです。これらは長期間そのままにしておくと、将来的に心筋梗塞 や脳卒中などの重篤な病気のリスクをあげてしまいます。ご存知のように、心筋梗塞は致死率が20~30%にも及びます。
今回の健診では、相馬中央病院の石井先生が主体となって、運動量低下に伴うと思われる骨粗鬆症健診も行われました。九州の豊栄会病院の理学療法士さん達も 駆けつけてくれました。筋力低下、骨粗鬆症に伴う、骨折も大きな問題です。大腿骨頸部骨折は、それだけで7人に1人程度が命を落とすとも言われます。
皆太りました。仮設住宅では、手の届く範囲に日常生活で必要なものが全ておいてあり、手を伸ばせば事足りる。そして長時間テレビを見ている。そんな話はよ く聞くと思います。上記の慢性疾患の悪化やうつ病、アルコール中毒などは、単純な医学的問題ではなく、家族や経済的な問題など色々なことが複雑に絡み合っ た問題です。
県民健康調査の黄色い紙をご存知の方は多いと思いますが、私の外来に再検査でいらっしゃる方々の8~9割以上はLDLコレステロール高値で引っかかった方だったりします。
内部被ばくでは、未検査の食べ物を継続的に摂取することがリスクなることを繰り返し述べてきました。しかしながら、家庭菜園を始めて、やることができて俺 は嬉しいんだ。やっぱり、作らないとね、とおっしゃる方々が前回の外来より明らかに元気になり、目が輝き、内服のコンプライアンスも良くなるのを見て、バ ランスをとることの大切さを感じます。
思えば、阪神大震災が起こったとき私は中学1年生でした。中学校が東灘区にあり、JRの住吉駅(学校がある駅)と六甲道駅の間は開通が一番遅れました。う ちの祖父母は明石に住んでおり、家が半壊したため、大阪の私たちの自宅に避難して来ました。運動しないからと言われ、うちの犬の散歩を毎日やるようにな り、犬がすごく喜んでいたのを覚えています。
しかしその年の冬、脳出血で倒れました。60代前半で、既往も無かったと思います。記憶に強く残っているのは、母親が大泣きしていたことと、集中治療室のようなところで、点滴や管につながれていたことでしょうか。
「n=1」で議論するのはどうかとも思いますが、今となってはなぜ、うちの祖父が脳出血を起こしたのかわかる気がします。多くのそうなりつつある方が、 しっかり守られて欲しい、守って行かなければならないと思っています。内部被ばくももちろん必要な検査ですが、トータルで考える必要があることを再認識し た健診でした。
写真:骨密度測定中です。
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