医療ガバナンス学会 (2012年10月10日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://www.asahi.com/health/hamadori/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年10月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
それに併せて月一度ぐらい別の場所でもやってみようということになりました。南相馬市の番場さんに毎回助けていただきながら、都内や福島市内でも説明会を開いています。
先日、名古屋で放射線に関する講演会の機会をいただきました。JCサークルの大崎さんのご紹介です。名古屋に在住の知り合いの方に集まっていただき、南相馬市の現状や、今までの内部被曝検査の結果などを説明しました。40~50人程度の方に参加いただきました。
都内でもそうなのですが、現場から少し場所を離れると前提知識に差が産まれつつあると感じます。それが大きな溝です。例えば、福島市内の空間線量が事故前に比べて高くなっている理由は、福島原発から直接ガンマ線が飛んできているからではありません。
主に事故直後に飛散した放射性物質が、風に乗って飛んできて、それが降って落ちた。その降ってきた放射性物質から出る放射線のせいです。そして放射性物質が溜まっている場所が、ホットスポットになっています。
きっとこのブログを読んでくださっている方々には、こんなことは常識でしょう。「今さら?」と思われるのではないでしょうか。
でも、「日本人の大多数にとって、そうではない」「初めて聞きました」と言われると仕方ないのですが、この辺りから話を始める必要があります。
確かに、去年の5月の時点で相馬、南相馬で放射線の説明などを始めた頃、このことは自明ではありませんでした。最初に伝えるべきことで、スライドを何枚か 使い、大きく時間を割いていたのを思い出します。シーベルトは「シートベルト」でしたし、元素名にカタカナが多くて怒られました。
忘れてほしくないと思うし、このまま風化させてはならないと思っています。現状の共有や情報のシェアは復興には不可欠です。ハードルは高いですが、何とか興味を持ってもらい、知ってもらうしかありません。
マスコミの悪口を言ったり、行政の怠慢だと批判したりするのは簡単なのですが、何も解決しません。一人ひとりが地道に継続的な発信を続けるしかないのだろうと思います。
きれいでスマートな正解は、きっとないのでしょう。
遠方の記者さんでも、継続的に気にかけてくださり、ことあるごとに記事を地元で発信してくれる方もいらっしゃいます。都内や今回のように名古屋でも場所を提供してくださり、継続的な発信を助けてくれる方がいらっしゃることに感謝です。
写真:熱田神宮の大楠。蛇を見ることは出来ませんでした。
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http://www.asahi.com/health/hamadori/TKY201209280175.html