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Vol.651  いわき市を中心とした内部被ばく量測定結果

医療ガバナンス学会 (2012年11月12日 06:00)


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財団法人ときわ会常磐病院内科
谷本 哲也
2012年11月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


●内部被ばく量測定結果の公表
福島県のいわき湯本にある当病院は、2012年4月から小児を中心とした地域住民の内部被ばく検診を開始しました。9月末までの半年間で4751名の測定結果がまとまり、その結果が公開されました。
・内部被ばく検診の結果(ときわ会)

http://www.tokiwa.or.jp/Templates/PDF/20121101tokiwa_wbc.pdf

・内部被ばく検査の流れ(ときわ会)

http://www.tokiwa.or.jp/medical-examination_health-screening/internal-exposure.html

●測定結果の概要
使用機器は、震災後に急遽独自で購入を決定したキャンベラ社製Fast scanです。この機器は、南相馬市立総合病院やひらた中央病院で使用されているものと同じであり、運用開始に当たっては坪倉正治医師や東京大学理学系研究科の早野龍五教授にご協力頂きました。
・全受診者の年齢内訳
4-5 歳:64.0%、6-10 歳:19.6%、11-15 歳:5.3%、 16-20 歳:2.3%、21 歳以上:8.8%
・受診時の居住地内訳
いわき市内:4,949名、市外77名。北茨城30名、双葉郡楢葉町7名他。
・検出状況
セシウム-137は 4571名中 4552名では検出されず。検出者は 19名(0.42%)、いずれも10 Bq/kg 未満。
小児の検出者は1名、同居者では検出されず、また、本人の 1ヶ月後の 再検査では検出されず。
検出者の居住地はいわき市内 17名、茨城県及び東京都 1名ずつ。

●いわき市の概要
福島県は全国で3番目の広い面積をもつ広い県ですが、いわき市は太平洋側の浜通りに位置し、福島県内で最大、東北地方では仙台に次ぐ約33万人の人口規模 を持つ都市です。東京からだと上野駅で朝7時の始発に乗り、約2時間余りで常磐病院に到着します。常盤峻士会長を始めスタッフの方々のご助力のおかげで、 早起きの苦手な私でもほぼ毎週の通勤を1年以上なんとか継続出来ています。一時的な医療支援に留まらず、長期的に持続可能な活動をしなければと当初から考 えていましたので、勤務の機会を頂いたときわ会の皆様には大変感謝しています。
東日本の多くの地域と同じく、福島県も医師不足に悩む地域です。福島県の医療施設に従事する医師数は、平成22年のデータで全国41位、人口10万人当た り182.6人(全国平均219.0人)とされています。いわき市はそれをさらに下回り、人口10万人当たり160.4人です。
・福島県の医療の現状(福島県)

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=FAB36F83A5E97C6EEB8C0DA5B118888C?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=27673

いわき市は福島第一原子力発電所から南へ約40-50km圏内に位置していますが、福島県内では比較的放射線量が少ないため、震災後の市の人口は数万人も 増加傾向にあり、地価も値上がりしているようです。実際、震災直後は閑散としていた市内も、現在では人通りも多く幹線道路も渋滞気味で、繁華街も非常に賑 わっています。ただし、医療状況は今後も厳しいようで、来年度の研修医は、いわき市と相双地方の内定者は5人、充足率は25%であることが報道されていま す。
・いわき、相双の充足率25%(福島民報)

http://www.minpo.jp/news/detail/201210264450

●震災の記録
巷での流行に乗って、私も鴨長明の方丈記を先頃通読しました。400字詰め原稿用紙でわずか20枚程度のものなので、是非皆様も有名な冒頭のみでなく最後 まで読まれることをお勧めします。今から丁度800年前、1212年(建暦2年)に執筆され、成蹊大学文学部の浅見和彦教授は「初めての災害文学」、文筆 家の橋本治氏は「科学的かつ実証的な文章」と評しておられます。私も鴨長明が災害現場を経験に基づき克明な記録を残していることに驚嘆し、後世のために記 録をつけることの重要性を今更ながら痛感した次第です。今回のときわ会の測定結果も、東日本大震災への現代日本人の対応に関する貴重な記録な一つになるこ とと思います。また、浜通りで活躍する石井武彰、坪倉正治、原澤慶太郎、森甚一ら(敬称略)若手医師達の活動も、いくつかの医学雑誌に書き溜まってきまし たので、最後に紹介してこの稿を終わりにします。

・The impact of the great tohoku earthquake on the dialysis practice in the disaster-stricken area. Tsubokura M, Horie S, Komatsu H, Tokiwa M, Kami M. Hemodial Int 2012;16:320-1.

http://onlinelibrary.wiley.com/store/10.1111/j.1542-4758.2011.00655.x/asset/hdi655.pdf?v=1&t=h96qfuqk&s=e286c44525ba5f89f50072140345ad074d076b66

・Internal radiation exposure after the Fukushima nuclear power plant disaster. Tsubokura M, Gilmour S, Takahashi K, Oikawa T, Kanazawa Y. JAMA 2012;308:669-70.

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1346169

・Radiation exposure following Fukushima incident. Wu D. Lancet Oncol 2012;10:e413.

http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(12)70394-7/fulltext

・Drowning. Ishii T, Harasawa K, Tanimoto T. N Engl J Med 2012;367:777.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1207798

・Health problems in the temporary housing in Fukushima. Harasawa K, Tanimoto T, Kami M, Oikawa T, Kanazawa K, Komatsu H. Lancet 2012;379:2240-1.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673612609787

・Radiograph abnormalities caused by the nuclear accident. Okai K, Tsubokura M, Tanimoto T, Kanazawa Y. Intern Med 2012;51:2073.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/51/15/51_51.8093/_article

・A dog bite injury after the Fukushima nuclear accident. Tsubokura M, Mori J, Tanimoto T, Oikawa T. Intern Med 2012;51:2493.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/51/17/51_51.8338/_article

・Drug shortages after the Eastern Japan Earthquake: experiences in a tertiary referral center. Mori J, Hasui K, Tanimoto T, Matsumura T, Kami M. Drug Information J 2012;5:607-10.

http://dij.sagepub.com/content/46/5/607.abstract

・The voice of the most vulnerable: lessons from the nuclear crisis in Fukushima, Japan. Sugimoto A, Krull S, Nomura S, Morita T, Tsubokura M. Bull World Health Organ 2012;90:629-30.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3417783/

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