医療ガバナンス学会 (2012年11月13日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://www.asahi.com/health/hamadori/
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2012年11月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
2012年4月1日から9月30日までに行われた、4751名(内、いわき市在住の方が4494名)の検査結果です。16歳以上の509名中、検出限界以上が18名(3.5%)。15歳以下の4062名中、検出限界以上は1名(11歳男性)でした。
10Bq/kg以上の値を示す方はいらっしゃいませんでした。
器械は当院やひらた中央病院などと同じ、Fastscan。検出限界は同じく220~250Bq/body程度です。検査をされた方の多くは小学生または それ以下の子供達です。子供の検査を優先して欲しいという要望を受けたと聞いています。体が小さいと値の安定性が悪くなりますので、今後、大人の検査も参 照しながら進まなければなりませんが、とりあえずのところ、総じて相双地区の結果と比べれば値は、遜色無い~若干低いぐらいの状況だと思います。
徐々にいわき市を含む、原発から南側の地域で、現在の内部被曝検査の結果が出てきています。いわき市では、ときわ会常磐病院の検査に加えて、いわき市が主導して市独自に行っている、いわき共立病院での検査も進んでいます(
http://www.city.iwaki.fukushima.jp/topics/014295.html )。
こちらの病院でも毎日、スタッフが一生懸命、検査を続けていると聞いています。ひらた中央病院で行われている、茨城県の牛久市の検査など、茨城県の市町村 が独自に行っている検査結果も出てきています。今後いかに継続的に検査を行って行くか、さらに甲状腺のフォローなどの問題点も残っています。
とはいえ、あちこちの場所で淡々と検査が進み、値がある程度以下に維持されていることは良いことだと思います。
ときわ会常磐病院は、内部被曝検査を2012年4月から開始しています。私が最初に病院にお伺いしたのは2月のことでした。常磐会長から内部被曝検査の独自での導入を考えているが、どういう検査で何が分かるのか説明会をして欲しいと依頼を受けて、お伺いしました。
お会いする方の多くが、体育会系でハキハキした方ばかりで、導入に際しての様々な調整も、非常にスピーディーに仕事をされていらっしゃる印象です。
実は、ときわ会の方々のことは、震災直後から存じ上げていました。
震災直後、様々な医療問題が生じましたが、その中で大きな問題になったことの一つが、透析患者さんの診療です。通常透析にはたくさんの無菌の水が必要です。震災直後、流通のストップや生活インフラの破綻により、透析が出来なくなりました。
透析は数日でも出来ないと、それだけで体に排泄できない老廃物が溜まり致命的になります。
ときわ会は、透析の患者さんを多く診療している医療機関です。透析患者さん達は震災直後、東京や千葉など、様々な医療機関に緊急避難しました。その際、受け入れ先の一つである亀田総合病院が大きく活躍したことをご存知の方もいらっしゃるかと思います。
「医療ガバナンス学会」のメールマガジン
Vol.103 ネットワークによる救援活動 http://medg.jp/mt/2011/04/vol103.html
Vol.144 いわきから亀田総合病院への透析患者受け入れ http://medg.jp/mt/2011/04/vol144.html
Vol.404 東日本大震災透析患者移送体験記 http://medg.jp/mt/2012/02/vol404.html
前回では、医療機関が少ないことを取り上げました。この事故後、医療機関は批判の対象になりやすいご時世ですが、常磐病院を始めとして、多くの県内の地元 病院が、地元に住んでいる方々の健康を守るため、震災前から震災直後、そしてその後もずっと淡々と医療人が働いていることを、是非皆さんに知ってもらいた いと思いました。
写真:ときわ会のスタッフの方々と
↓
http://www.asahi.com/health/hamadori/TKY201211090492.html