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Vol.657 内部被曝通信 福島・浜通りから~絆診療所が語る診療の大切さ

医療ガバナンス学会 (2012年11月20日 06:00)


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この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。

http://www.asahi.com/health/hamadori/

南相馬市立総合病院
非常勤内科医  坪倉 正治
2012年11月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


今回は、福島県南相馬市鹿島区にある絆診療所の遠藤清次先生を紹介したいと思います。

南相馬市には、元々市立病院が2つありました。一つは南相馬市立総合病院(旧原町市立病院)、もう一つが小高病院です。遠藤先生は南相馬市立小高病院の病院長をされた先生です。

小高病院は旧警戒区域に位置し、病院のすぐそばまで津波が襲いました。そして震災後、入院中のすべての患者が避難を余儀なくされました。

遠藤先生はその後、猪苗代の病院に勤務されていましたが、2012年の5月南相馬市鹿島区の仮設店舗に絆診療所を開設。鹿島区の仮設住宅に入居されていらっしゃる小高区の住民の方々を中心に診療を続けていらっしゃいます。

それ以来、私の外来や説明会などで、親御さんからこのような話を聞くことが多くなりました。

「県からA2っていう結果が来たの。不安でどうしたらいいか分からなかったけど、遠藤先生に甲状腺をもう一度診てもらったんだ。甲状腺を触診してもらっ て、エコーを目の前でやってもらって。どれが嚢(のう)胞でどれが結節か実際に見せてもらいながら、細かく説明してもらったんだ。嚢胞ってすごく小さいん だね。分からないこともあるとは言われたけど、焦らず、定期的に検査して行くことにしようと思っている」

県民健康調査にあわせて、甲状腺の超音波検査が進んでいます。

相馬市は線量の関係でまだ1回目の検査の対象にすらなっていませんが、南相馬市では多くの方が検査を終えています。県立医大の先生方が色々と尽力されてい るものの、いわゆるA2(超音波検査で5ミリ以下のしこりや20ミリ以下の嚢胞があるもの)という結果は、多くのお母さん達に不安と衝撃を与えました。

遠藤先生は元々、甲状腺診療がご専門です。こうしたお子さん達に、一人ずつ丁寧に診療を続けていらっしゃいます。以前、不安と怒りでいっぱいだったお母さ んが、定期的にしっかり健診を受け、その中で子供を守って行こうと前向きになっていらっしゃる。そうした姿を見て、このような丁寧な診療の重要性をひしひ しと感じます。

遠藤先生が診療してくださったから、とおっしゃる親御さん達に何人もお会いしました。

「甲状腺の乳頭癌の進行速度は遅い」「ダブリングタイムから考えて……」「乳頭癌の予後は……」「日本人はヨウ素を元々とっている」「今回の災害で長期間 汚染したミルクを飲み続けていたとは考えづらい」「実際に計測されている値がチェルノブイリほどの高値では全くない」など色々と理由を並べて実際に起こる かもしれない実害の程度や、現在の対応の医学的妥当性を議論することは出来ます。

もちろん、学問は必要です。リスクを天秤にかけ、危険の程度を推測することは必要です。しかしながらこの例は、今後の検査のあり方や、我々内部被曝診療に当たる者が何を肝に銘じなければならないかを良く示していると思いました。

「検査はやりました、大丈夫であることを示すためです」。これでは、きっとうまく行きません。

人員不足の問題などまだまだ問題は山積みですが、丁寧に診療を繰り返し、共に歩んで行かなければなりません。同じ日本の中でいがみ合って、得をする人なんていないと思います。

写真:南相馬市鹿島区で行われた鎌田實先生の講演会後の打ち上げで、遠藤先生と

http://www.asahi.com/health/hamadori/TKY201211190279.html

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