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Vol.4 総選挙後の医療政策はどうなるか(2012年12月18日鴨川にて)その1/3 

医療ガバナンス学会 (2013年1月8日 14:00)


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この文章はm3の医療維新から転載しました

http://www.m3.com/open/iryoIshin/index.jsp

亀田総合病院副院長
小松  秀樹
2013年1月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

●民主党政権の稚拙
2012年12月16日の衆議院総選挙で自民党が大勝し、3年4カ月ぶりに政権を奪還することが決まった。私は、前回の2009年の総選挙直後、 m3.comに「民主党には現実認識に立脚した医療政策を期待」と題する文章を投稿し、以下のようなメッセージを発信した(『民主党には現実認識に立脚し た医療政策を期待』を参照)。

「新政権に望むのは安定。政治家は、合意形成を演じて認知させることのプロであって、信念のプロではない。数に任せて自民党を粗末にすることがあってはな らない。成り行き任せの結果の見えない叩き合いなどするべきではない。自民党が壊れると、必然的に民主党が分裂し、混乱が拡大する。保守政治家がどの政党 に所属しているかは偶発的な出来事の結果である。均質な国民から成る日本で、長持ちする対立軸は形成できない。2009年の総選挙では民主党は勝ち過ぎ た。日本国民の性癖から見て、次の2010年の参議院選挙で民主党は必ず敗れる。安定のためには、成り立ちの異なる政党、具体的には公明党の協力を求める しかない」

予想通り、2010年7月の参議院選挙で民主党は大敗し、参議院で与野党が逆転した。

政権政党としての民主党は、当初、中医協から日本医師会の代表を外すなど、明確な方向性のある政策を打ち出した。病院の診療報酬を増やして、赤字に苦しむ 病院を救い、多数の雇用をもたらした。しかし、その後の民主党は稚拙だった。事業仕分けはメディア向けのパフォーマンスだった。八ツ場ダムについての大臣 の発言は、政権党内部で合意がなかった。無駄削減で子ども手当の費用を捻出するとしていた。無駄削減は血を流すこと。その覚悟がなかった。結局、無駄削減 を捨てて、ばらまきになった。

特に復興予算には規律がなかった。政府は、復興予算を増税で賄おうとした。国民が自らを犠牲にして、被災者を助けようとするものであり、とりわけ「公共心 と自制心」が求められてしかるべきだった。ところが、官僚は復興予算に群がり、復興と関係のないところにまで予算をばらまいた。民主党政権は官僚の暴走に 同調した。

私は数年来、消費税を上げるべきだと主張してきた。しかし、復興予算をめぐる官僚の行動を見て、消費税を上げる前にやるべきことがあるという、かつての民主党の主張に一理あったと思わざるを得なかった。

私の考える脱官僚とは、官僚を排除して政治家があらゆる決定権を持つことではなく、行政的中央集権がもたらしている社会のすべてを覆う事細かな規制を取り 払い、個性的でエネルギッシュな個人が未来を切り開く活動を邪魔しないようにすることである。民主党は、官僚の権限を政治家が奪うことだけしかイメージし ていなかった。行政的中央集権はそのままだった。東日本大震災では、菅総理が官邸中央集権に挑んだ。あらゆることを官邸で決めようとしたが、情報が集まり 過ぎて処理できずシステムダウンした。結果として、民主党政権はこれまで以上の官僚主導になった。

●自民党に対する不安
自民党は、民主党が自滅したため、政権に復帰できることになったが、自民党が大きな改革で生まれ変わったわけではない。2009年の総選挙後、知人の自民 党の元幹部は、私に、「自民党は危ない。敗因が分かっていない。敗因を、メディアを含む外部に求めている。自分たちが被害者だと思っている」と語った。

2007年7月の参議院選挙で、自民党は惨敗を喫した。当時の安倍首相は、内閣改造を行い、政権担当継続の意思を示した。しかし、所信表明演説の2日後、唐突辞職を表明した。

安倍総裁がかつて主張していたように、再チャレンジできる社会は重要だが、あくまで人生の落後者を出さないための議論である。中規模以上の会社で、責任を 放棄した社長が復活することはあり得ない。ましてや、GDP世界三位の大国の指導者である。自民党にも人材がいないわけではない。有力政治家の子弟は社会 の注目度が高く、明らかに特別扱いされている。その分、他の議員にはチャンスが与えられない。門閥議員は、責任の問われ方も軽い。平安時代、摂関家は特別 な存在だった。生まれたときから、高位高官が約束されていた。武士は死罪になっても、貴族に死罪はなかった。公家政治が現代日本で通用し続けるはずがな い。自民党が社会の常識から大きく乖離していることを、自民党議員が自覚していない。

政治とは「われわれ」と「やつら」を区別することから始まり、「われわれ」と「やつら」の間のやりとりで動いていく。勇ましい理念は、「われわれ」だけの問題でしかない。異なる理念、行動原理を

持つ相手、特に強大な力を持つ相手を議論の場に誘導し、隘路を見出し、交渉し、合意を形成することこそ、政治家の力量である。苛烈な状況で万策尽きれば、 被害を最小にするために、忍従を選択して時間の経過を待たねばならない。自民党には、結果を良くするために、何のためらいもなく理念を退ける冷徹さを求め たい。

●高齢化、財政赤字、貿易赤字
日本社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(出生中位死亡中位)によれば、2010年から2030年までの20年間で、20歳から64歳までの生産年齢 人口は7564万人から6278万人に減少する(マイナス1290万人)。一方で75歳以上の高齢者が1419万人から2278万人に増加する(プラス 860万人)。3分の1が首都圏の増加である。75歳以上の人口の7%強が要支援、22%が要介護になる。

総選挙後、高齢化による医療・介護需要の増加(2) と、財源不足への対応が待ったなしになる。首都圏のベッドタウンでは、戦後の高度成長期に地方から出てきた団塊の世代が一斉に高齢化しつつある。急増する 医療・介護需要をどう支えるのかが問題になる。問題が大きすぎるため、政党ごとの独自性はかすんでしまう。

加えて、原発停止による化石燃料輸入の急増、尖閣問題による対中国貿易の落ち込みで、日本の貿易収支は大幅な赤字になった。日本の貿易収支が黒字になるこ とは当面ない。経常収支の動向によっては円安になる。入超が前提なので、円安になると貿易赤字がさらに大きくなる。インフレターゲットで円安に誘導する と、さらに貿易赤字が膨らむ。

国債を大量に発行して公共工事を増やしても、消費人口の減少、消費意欲の縮小から、GDPを押し上げる波及効果は期待しにくい。景気が回復することなく、国債が値下がりして金融が混乱する可能性すらある。

以下、財政難と高齢化を克服するための私見であるが、今後、似たような方向の議論は避けられない。

(その2/3に続く)

 

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