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Vol.110 『あめいろぐピックアップ』(第四回)医療はポータブルデバイスの時代へ。医師の役割は大きく変化する?

医療ガバナンス学会 (2013年5月9日 06:00)


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メイヨークリニック予防医学フェロー
反田 篤志(そりた あつし)
2013年5月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


皮下に埋め込んだマイクロチップが血中データをスマートフォンに継続的に送信し、そのデータをモニターできる技術が現実になりつつます。

http://www.livescience.com/28150-implant-lab-on-a-chip.html

http://gigazine.net/news/20130331-blood-test/

スマートフォンアプリを使った健康管理など自己管理型のヘルスケア市場が注目を浴びる中で、それをさらに診療や臨床研究に応用しようとする流れが加速して います。これまでは大規模な直接的測定が困難だった環境因子暴露(日光、音、PM2.5など)の経時的モニター、アプリによる診療情報共有と相互コミュニ ケーションの促進など、様々な取り組みがなされています。
データ通信技術による診療により、地球の裏側にいる放射線科医による遠隔読影が可能になりました。最近は集中治療医が遠隔からICUをモニターし、指示を 出すTele ICUが注目されています。これは特に僻地など集中治療医が不足する地域のICUケアの質を高めることに有効な可能性があり、コスト削減効果も見込まれて います。最近のメタ分析では、Tele ICUはICU死亡率を減らし、ICU滞在期間を短縮する一方で、院内死亡率には影響がなかったという結果が出ています。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21444842

テレビ電話などを用いたTelemedicine/Telehealthは患者アウトカムに大きな影響を及ぼさないようですが、こちらも僻地医療や在宅医 療への応用力は高そうです。在宅医療における医師の移動時間を減らす、もしくは移動時間を診療に活用することで、より効率的に医療を提供できるようになる かもしれません。

http://www.bmj.com/content/346/bmj.f1035?etoc=

ポータブルデバイスによる健康管理、遠隔医療が今後さらに発展していくと、医師の役割も大きく変化する可能性があります。これまで医師は病院やクリニック で患者が来るのを待っていることが主でしたが、より継続的なモニターのデータから、異常なサインを検知してより早い段階で(患者が気付く前に)治療介入し ていくことが一般的になるかもしれません。データ量は膨大になるので、異常サインの検知はアルゴリズムに沿って、コンピューターが行います。医師は異常サ インを受取り、前後の情報からその異常性を判断することになりますが、データとアルゴリズムの精度が向上すれば、この部分の判断もある程度コンピューター が担当するようになるでしょう。例えば心電図モニターでST上昇が検知され、患者が胸痛を感じる(心拍や発汗の程度から判断)、もしくは気を失って倒れた という情報が得られれば、自動で救急隊に直接情報が行くようにプログラミングすることも可能です。

外来主治医の役割は担当患者のそれらデータを管理し、一日のほとんどがデータ処理と遠隔コミュニケーションに費やされるようになるかもしれません。医学的 判断さえ決まれば、遠隔コミュニケーションのほとんども医師以外のサポートスタッフで担当できそうです。必要な医療情報は添付ファイルで送信できますし、 教育が必要であれば映像のリンクを送ることができます。糖尿病が診断されれば、糖尿病管理アプリを送信、連続血糖値モニターを開始し、データに応じて薬剤 を処方できます。医師はその中で困難症例(標準的な治療が奏功しない例など)に対応することになります。

病院にも医師が常にたくさんいる必要はなくなりそうです。データは常にどこからでも確認できますし、医学的判断さえ下せれば、多くの業務はサポートスタッ フが担当できます。患者や家族との会話も、ビデオ通話やEmailを使うことにより、現状より綿密で細かいコミュニケーションを取ることができそうです。

高齢化に伴い医療需要が増大していく中で、これらは不可逆的な流れのように見えますが、医師の役割はそれに伴って縮小していくのでしょうか?私は、今後の 医療需要を考えると、医師の役割がある程度縮小することは必須だと思います。その一方で、医師にしかできないサービスの必要性が今後さらに重要視され、医 師はそれに特化することにより、総需要は大きく変わらないのではないかと予想しています。重要な場面での対面のコミュニケーション、身体診察、複雑もしく は困難な症例の対応・医学的判断、手術などの手技、数え挙げれば切りがありませんが、まだまだ医師の存在と判断を必要とする範囲は多くあります。

ともすると医師は職権を守ることに必死だと思われがち(特定看護師導入への姿勢など)ですが、私はむしろ、医師は周辺的な権限をどんどん委譲して、仕事を 減らしてくれる新しいテクノロジーを導入し、より本質的な部分に集中して取り組むべきだと思っています。それは医師の社会的価値をさらに高め、医師の仕事 に対する満足度の向上にもつながるのではないでしょうか。医師はこの社会的変化を特権的な職能に対する脅威ではなく、またとない機会として捉え、積極的に 活用していくべきだと思います。

紹介:
「あめいろぐ http://ameilog.com/ 」は米国で働く日本人医療従事者による情報発信ブログポータルサイトです。米国で活躍する様々な専門科の医師やコメディカルが、現場から生き生きとした情 報を日々発信しています。このシリーズでは、その中から選りすぐりの記事を皆さまにお届けします。

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