医療ガバナンス学会 (2013年5月28日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年5月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
検査結果の大きな傾向は変わりません。子供が検出限界を超えることはほとんど無くなりました。大人も検出限界を超える率は5%程度であり、慢性的な内部被 曝、言い換えると現在の生活上で体に取り込んでしまうかもしれないセシウムは低いレベルを維持できていることになります。
2回目の検査で体内セシウム量が上昇する方が、一部にいらっしゃいます。今回の大人での結果で最大値となった2人は、ご夫婦でした。外来でお話を聞いてい ると、いわゆる流通していない、既に出荷制限のかかっている食品(値がかなり高くなることが既知である食品)を、未検査で継続的に摂取している状況が明ら かでした。食品の検査結果から、流通している食品ばかりを食べている状況で、大きな内部被曝が生じることは無さそうだということは、ある程度推測できま す。そして、実測の値でも、それが確認され続けているということだと思います。大人からの検出率は5%程度と横ばいが続いています。とはいえ、例えば 20Bq/kgを超える方はほとんどいません。検出すると言っても、器械の検出限界ぎりぎりのライン(Cs 137で250Bq/body)で、いくらか検出するという方の割合が増えてきています。同一の方を計測しているわけではないので、安易に比較するのは微 妙なのですが、図7-1にあるように、時期による検出率も明らかな上昇傾向はありません。
図7-1
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013052300010.html
もちろん色々なものを食べて、この器械の検出限界以下の被曝であるとか、検出限界周辺の内部被曝をしないということを保証することは出来ませんが、ホール ボディーカウンター(WBC)の検査結果から、セシウムが1000Bq/bodyクラスの被曝を、流通品摂取のみの生活からすることはほぼ無いと言って、 大きな間違いはなさそうだと思います。
これも、同一の方にお聞きしているわけではないので、比較は微妙なのですが、2012年4月〜9月の結果のまとめに比べて、野外で活動する時間やミネラルウォターではなく市水道を使用される方の割合が増えてきているのも分かりました。
一方で、図7-1が示すように、検査にいらっしゃる方は激減しました。学期明けの9月からガタンと減ったままです。ですので今回の集計では、小児の結果は 200人弱しか含まれていません。対策として南相馬市は、学校での検診実施などで対応している状況です。この集計には掲載されていませんが、2013年の 4、5月からは、検診化や再通知などを行った結果、定期的な受診にいらっしゃる方が以前の状況に戻ってきています。
5月22日の朝日新聞の記事には、「県地域医療課は南相馬市の独自施策について『日常の食生活でどれだけ摂取しているかを知るためには、定期的な受診は理 想だ』としている」と掲載されていました。定期的な検査に向けて、飯舘村をはじめ、周辺の市町村でも同じような動きがあるようです。