最新記事一覧

Vol.129 事故原因調査は科学者の仕事、事故発生予防こそ行政の仕事

医療ガバナンス学会 (2013年5月29日 06:00)


■ 関連タグ

~厚労省は、拙速な医療事故調設立よりも、医師の勤務時間規制を急ぐべきである~

一般社団法人全国医師連盟会員
医療法人社団凰林会 四街道さくら病院 医員
内科医 元岡 和彦
2013年5月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


厚労省が医療事故案をとりまとめようとされているらしい。最終案の内容が不明であるが、報道されている情報を見る限り、私は、現段階でのとりまとめに反対 である。WHOガイドラインに反すること、また、本来は医療分野だけで無く一般的な業務上過失致死傷罪についての検討と併せて議論すべきであることなど は、他に多くから指摘されている(参考1、2)ことであるから、今回はそれは省く。
1.現場の医師に議論の過程・内容がほとんど伝わっていない。
2.事故原因調査は科学者の仕事である。厚労省というひとつの省だけで、事故原因究明・事故発生予防の全てに責任をとれるような組織をつくれるとは思えない。
3.医療事故発生予防のためには、厚労省は、何よりも先に、医師の長時間勤務の規制を急ぐべきである。

以下、補足。
1.事故調論議について、現場の医師に伝わる体制になっていない。
日本医師会は全ての医師が所属する組織では無く、また、私が昨年の春まで日本医師会員であったときの経験からして、医師会員ですら事故調論議について充分な情報提供を受けているとは思えない。
厚労省は、インフルエンザをはじめとする感染症情報、薬剤副作用情報などについては、希望する医師に適宜こまめにメールなどで情報提供してくださっているが、事故調論議についてはそのような仕組みは無い。
現場の医師、特に急性期病院で働く医師ならば、所属学会からの主な情報には目を通していると思われるが、例えば外科学会が厚労省に医療事故調について要望を出した(

http://www.m3.com/iryoIshin/article/172003/)ことを、外科学会員のどれだけが知っているのだろうか?。

私は、自身が所属する日本内科学会・日本循環器学会のホームページを読み直してみたが、厚労省からの事故調論議についての情報は見当たらなかった。

2. 事故原因調査は科学者の仕事である。かつての原子力安全・保安院のように、医療安全の確保の全てについて責任を持つような組織を、ひとつの省だけでつくれるとは思えない。
広範な医学者・臨床医・周辺分野の科学者の協力を得た原因調査の自主的な仕組み・組織が様々につくられ、また、医師の自律的機関の創設もされることで、再発予防に役立つ原因調査が進むと考える。

3. 外科医の4人に3人が病院に泊まり込む当直明けの日に手術に参加し、このうちのおよそ20%の医師が手術の質の低下を感じているという日本外科学会の調査 結果が発表された(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130526/k10014853561000.html)。
国連は、長時間労働などが原因の過労死・過労自殺について日本政府に「懸念」を示した上で、立法措置を含む新たな対策を講じるよう勧告した (http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130523 /wec13052313100003-n1.htm)。
国土交通省は、長時間の就労について、労基法とは別に、基準を定めたりマニュアルをつくったり、安全上支障のある事態についての注意を行っている(参考3、4、5、6)。
厚労省は、何故、医師の長時間勤務についての規制を行わないのだろうか?。
医療事故発生予防について、まず取り組むべきはこちらであると考える。

<参考>
1)「医療事故調査関連の医療法改正案への緊急声明」(一般社団法人全国医師連盟執行部)http://zennirenn.com/news/2013/04/post-51.html
2)「業務上過失致死傷罪を廃止すべきである」(一般社団法人全国医師連盟)http://zennirenn.com/news/2013/04/post-50.html
3)「夜間・長距離運行の貸切バスにおける交替運転者の配置基準について」http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/kousokubus.html
4)「トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル」http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/h19_2.pdf
5)「過労運転防止に係る緊急対策について(案)http://www.mlit.go.jp/common/000215127.pdf
6) http://tsuredure-life.seesaa.net/article/271095741.html

お知らせ

 配信をご希望の方はこちらにメールをお願いします。

 MRICでは配信するメールマガジンへの医療に関わる記事の投稿を歓迎しております。
 投稿をご検討の方は「お問い合わせ」よりご連絡をお願いします。

関連タグ

月別アーカイブ

▲ページトップへ