医療ガバナンス学会 (2013年6月6日 06:00)
この言葉、確かに昔TVや映画に良く出てきた。医師役の美男俳優がサッと立ってササッと治療し、「これで大丈夫です。念の為空港に救急車を手配しておいて 下さい」などとのたまう。ポーっとなったCAさん(昔はスチュワーデスといった)が、「あのお、お名前は?」と聞いても「いえ、名乗るような者ではありま せん」とまたサッと座席に戻り英字新聞に目を落とす(やはりスポーツ新聞ではなかった・・)という実にカッコいいシーンに憧れて医師になった人も多かった ように思う。
しかし、荻原氏も書かれていたが、私自身もそうした場面に遭遇したことはないし、最近は全く耳にしなくなった。しかし、2-3年前海外出張の際に乗った飛 行機で、長旅の暇つぶしに美人CAさんに聞いてみたところ、そういうシーンは今でも結構あるのだそうだ。ところが彼女曰く、「日本人のドクターが助けてく れたことはないわね。多いのはアメリカ人かインド人」。
あの訴訟大国アメリカで、しかも薬も器具も十分でない機内ではミスが起きやすく、それこそ多額の賠償を覚悟しなくてはならないだろうに、なぜアメリカ人は 人助けに自ら手を挙げて、日本人ドクターはヒーローになるチャンスをみすみす見逃してしまうのか。宗教的な背景やリスクを負うことへの抵抗感の多寡など理 由はいろいろあるだろうけど、想像するに日本人ドクターは専門外には極めて自信がない、ということではないかな。
患者にとって高度な医療技術も必要だが、それと同じくらい「いざという時」にササッと診てくれる、いわゆる家庭医もやはり必要なんだと思う。因みに、過去 の医療賠償事案で、機内や緊急時の応急治療だけで訴訟になったというケースを、アメリカでも日本でも私は知らない。やはり「助けてもらった」という意識が あれば、どんな国でも訴えることなどしないのだ。
日本人ドクターの皆さん、「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか?」と問われたら、ぜひ手を挙げて自信を持って応えてあげて下さいな。診てもらった と思っただけで患者は安心するものであり、ヒーローのように上手にできなくたってその行為そのものが、皆さんを”医”風堂々に見せるのです。