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Vol.209 筋トレで開眼!~東大剣道部とトップアスリート交流記

医療ガバナンス学会 (2013年8月27日 06:00)


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東京大学経済学部金融学科
東京大学運動会剣道部4年
杉本 宏志
2013年8月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


7月21日に全国七大学総合体育大会(通称:七帝戦)の剣道競技の部が大阪大学で行われました。七帝戦は昭和37年に始まった歴史ある大会です。旧帝国大 学の七つの大学が合計43の競技で順位を付け、それに応じて加算されるポイントの合計で総合優勝の大学を決めます。剣道競技の部では、全国から集まった7 校が丸一日かけて総当たりで勝敗を争います。今年の東大剣道部は男子4位、女子3位という結果でしたが、私は四年生になって初めて選手に入ることができ、 6試合中5試合に出て4勝1引き分けという戦績を残せました。
東大剣道部では昨シーズンよりトレーニングに取り組んでおり、今まで実績のない私が、このような成績を残せたのは、そういった取り組みのお陰だと感じています。昨年からどのような試みをしていて、どういった成果が出たのか、ご紹介しようと思います。

2012年5月、ご縁があって長塚智広選手、古川功二選手、内田玄希選手といった競輪選手の方々にトレーニングを指導していただけることになり、部員の有 志でお願いすることになりました。長塚選手はアテネ五輪の銀メダリストで、最初に飲み会でお会いした時には銀メダルを触らせていただきました。豪快な方 で、剣道部員にもフランクに接してくださいます。

競輪選手の方々との交流が始まった当初は、戸惑うことも多くありました。剣道の世界では毎日稽古するのが当たり前ですが、競輪界では休養日を非常に重視し ます。また、「剣道の試合はせいぜい5分間なのに、どうして2時間も3時間も練習するの?」と聞かれた時には、ハッとしました。別の競技の専門家から意見 を頂いて、これまで長く続けてきた剣道について、考え直されることが大変多くありました。

トレーニングの内容は主にウェイトトレーニングと陸上トレーニングです。「剣道は瞬発力が勝負だから、そこを第一に鍛えよう」という話になりました。
参加者の大半は全くの初心者で、ウェイトトレーニングでは正しいフォームを教わるところから始め、少しずつ重量を上げていきました。スクワットでは、バー ベルに重りをつけない20㎏から始め、各自の体重と同じ重さ位まで徐々に重りを加えていきました。数ヶ月間記録を付けていると、自分の筋力が着実に上がっ ているのが数値で分かり、継続しようという意欲が湧きました。例えば、スクワットを一回行える重量では、筋トレをした部員の大半が最初の2か月間で10 ㎏~20㎏ほど増えています。
陸トレは短距離ダッシュが中心で、幅跳びやその場でのジャンプをしたり、階段の上り下りをしたりもしました。終わったあとは足がパンパンになり、普段の稽古では使えていない部位が鍛えられているという感覚が持てました。
筋力トレーニングはサボることなく週二回程度のペースで定期的に行い、きちんと継続することで成果が見えてきます。私の場合、2012年5月から今まで 15ヵ月以上筋トレを続けています。コツコツ勉強を積み重ねて大学受験を乗り越えた東大生には、向いているのかもしれません。

2013年の5月頃からは、アメフト選手の井上友綱選手にもトレーニングを指導していただけることになりました。井上選手は大学卒業後に単身渡米して5年 間NFLに挑戦されていた方で、アメフトの世界では知らない人はいないスーパースターです。東大剣道部のために毎週のように指導に来てくださって、本当に 有難い限りです。
井上選手のトレーニングメニューは、二人一組で相方を抱えて坂道ダッシュしたり、スクワットと腹筋と腕立ての3種目でサーキットトレーニングをしたり、息が上がって大変です。関西弁の気さくなお兄さんという印象の井上選手も、トレーニング中は鬼のように豹変します。

競輪選手とアメフト選手、トレーニングの流儀は少し違うのですが、体幹を鍛えることを重視する点は共通していると感じました。長塚選手は「今まで使えてい なかった体幹を使えるようになれば、身体を思い通り動かせる」とよく仰るし、井上選手の練習メニューには腹筋を鍛えるハードな種目が必ず最後に入っていま す。「竹刀を振り下ろすにも足を振り上げるにも、大切なのは腹筋」という言葉が強く記憶に残っています。
剣道の動きは竹刀の操作と足捌きが肝心ですが、上半身と下半身がバラバラに動いていたのでは意味がありません。両者を連動させる体幹部がブレないからこ そ、力強い打突が可能になります。このことは、剣道の伝統的な指導方法でもよく言われることで、競輪やアメフトと競技は違っていても、根底で繋がっている ものがあると感じました。

さて、七帝戦に話を戻します。
私は元々相手に強く当たっていくタイプなのですが、七帝戦では特に持ち味が出せました。初戦の大阪大学との試合では、体当たりで相手を場外に出し、反則を もらって弱気になった相手からメンとコテを取っています。続く2試合目の東北大学との試合でも、激しい当たりで相手から着実に体力を奪い、終盤にコテを 取って逃げ切りました。あとの3試合も終始そのような感じで、どの相手も非常にやりづらそうにしていました。
5試合して4勝1分けという成績が残せたのは、まさにトレーニングのお蔭です。以前はできなかったパワフルな剣道で、自分のペースを作れました。

私は四年生ということもあり、あと数カ月で東大剣道部を引退しますが、後輩にはこれからもトレーニングを続けてもらいたいと思っています。誰がやっても成 果が出るとは限りませんが、上手くいく人も出てくるはずです。まだ始めていない人は、試しにやってみて、少しでいいから続けてほしいと思っています。少し でも強くなるチャンスがあるなら、それに挑戦しないのは勿体ないです。

【略歴】
平成4年  神奈川県横浜市に生まれる
平成11年 戸部少年剣道クラブにて剣道を始める
平成16年 東京都私立麻布中学校・高等学校に入学。剣道部に所属する
平成22年 東京大学理科一類に入学し、運動会剣道部に入部する
平成25年 東京大学経済学部金融学科に在籍。運動会剣道部の4年生として主務を務める。

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