医療ガバナンス学会 (2013年10月2日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2013年10月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
計測の方法は今まで通りの2分間。小学生は南相馬市立病院で、中学生は渡辺病院で検査を行いました。検出限界はセシウム134で220Bq/body、セシウム137で250Bq/bodyで設定されています。
結果としては、全員が検出限界以下であることが分かりました。そりゃそうだと思うかもしれませんが、現状の日常生活での慢性的な内部被曝が非常に低く抑え られており、かつそれが維持されている。現状、スーパーで食品を購入して生活する分において、大きな内部被曝をすることが無い。これを強く裏付ける結果で す。
南相馬市において小学生の99.9%、中学生の96.6%が受診しています。ほぼ悉皆調査となっており、バイアスや気をつけている人しか検査に来ていないという話を否定できる結果でもあります。
多くの方には目新しい結果では無いかもしれません。実際、メディアの方でも、だから何なのですか?もうそんなもんでしょう。とおっしゃる方もいらっしゃいました。
検査の結果としては確かに、今までの結果とは変わりませんが、今回の結果は別の部分で大きな意味を持っていると思っています。それは、南相馬市全体として、しっかり小中学生全員の検査を行うことができたという点です。本当にみなで力を合わせた結果です。
今回の検査は多くの保護者の理解が無ければ行うことができませんでした。
なぜ、継続的に検査が必要なのか? 検診は受けた方がいい。言うのは簡単ですが、細かい業務や、面倒な作業がたくさん生じます。小学校の先生、保健の先生、皆さん協力してくれました。
朝から引率をし、色々な問診票のとりまとめを行ってくれました。病院のスタッフも、朝から多くの子供達でごった返す状況にもかかわらず、辛抱強く検査を進 めてくれました。市のスタッフも日程の割り振りや振り替えなど、様々な面倒な点がありましたが、対応を続けてくれました。そして今回の結果は日常的な慢性 被ばくが押さえられていること、多くの農家の方や食品検査をする方々の頑張りの結果でもあります。
問診票からは、大人の結果と比べ食べ物や水に気をつけている方の割合が多いことが見て取れました。スーパーで購入して産地を選ぶ方は、大人ではだいぶん減 り、6~7割ぐらいだと感じていますが、子供では8割ぐらいがそのような状況です。(問診票の聞き方にもよると思いますが、)父兄のほとんど全員が全員を 対象に継続的な検査をして欲しいと答えていました。そのうち半分が1年に1回、残りの半分が半年に1回の検査を希望していました。まだまだ、不安は大きい のだろうと思っています。
どんな検査法がベストなのか、回数は?など、まだまだ改善の余地はあるのだと思いますが、関心も薄れ、何となく慣れてしまってきている現在、淡々と大きな 負担をかけること無く、継続的に見守り、結果を残し、問題があれば直ぐに介入するシステムが作られていく必要があります。
色々な問題があることは百も承知ですが、個人の外部被ばくや内部被ばくをしっかりモニターし続けるシステムはまだ十分構築されているとは言えないと思います。
ゼロまで測れていないとか、100%の受診率じゃ無いとか、検査を受けることで子供に悪影響が出るといった様々な意見があるとは思います。その中で、今回 の結果は、学校検診としてのWBC検査が、今後継続的にしっかり健康を見守っていく、その解の一つとなり得ることを示しているのだと思います。
写真:南相馬のじゃぶじゃぶ池。だいぶん涼しくなってきました。
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013093000004.html