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Vol.283 相馬高校土曜講座を担当して(4)~「やってみよう天気予報in相馬」を終えて

医療ガバナンス学会 (2013年11月18日 06:00)


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田園調布学園中等部・高等部、日本気象予報士会
荒川 知子
日本気象予報士会
岡田 登志惠
2013年11月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


荒川が勤務する田園調布学園では,土曜プログラムと称した土曜日の特別講座を行っており,毎回70にのぼる講座のほとんどをボランティア講師に頼っていま す。「やってみよう天気予報」は,その講座の一つで,日本気象予報士会の会員が講師を務めています。相馬で授業支援をする人を求めている,という話を聞 き,いつもボランティアの先生方にお世話になっているのだから,その分を相馬でお返しできればとの思いで手を挙げたのが,今回の授業のきっかけでした。
授業の内容を何にするか迷いましたが,この夏は各地で洪水や雷,竜巻など多くの気象災害が起きたので,雷と竜巻に的を絞り,防災に役立つ講座にしようと考えて準備を進めました。内容については次のとおりです。

まず,お天気クイズとして,10問のテストを行いました。内容は気象の基礎・天気予報で間違えやすい事項・台風に関するトリビアです。このクイズの解答・解説の形で,間に簡単な実験を挟みながら授業を進めました。
雲の発生のしくみについて話した後,雲の発生モデル実験を行いました。ペットボトル内を加圧してから急激に減圧して水蒸気を凝結させるものです。簡単な実 験ですが,水滴がペットボトル内に発生すると,オーという歓声が上がりました。次に,気圧を体感する実験を行いました。1つは30cm×30cmのゴム シートに鍋蓋をつけたものを机上に置き,生徒に持ち上げさせるものです。力のありそうな男子生徒が持ち上げようとしても,持ち上がりません。この上には小 型の自動車1台分の空気が乗っていることを話すと,納得した表情でした。また,真空保存容器に菓子の袋やマシュマロ,底に小さい穴をあけた缶コーヒーなど を入れて減圧し,変化を見せました。生徒たちは,缶コーヒーを減圧した際,コーヒーが出てくるところまでは予想していましたが,常圧に戻すとコーヒーが缶 内に戻るところは意見が分かれていたようです。結果を見て,そのしくみに興味を持った様子でした。
実験の後には,台風の風について感じてもらうため,横浜国立大学の筆保准教授より提供していただいた動画を見せました。1本は,台風と同じ毎秒17mの風 でペットボトルと傘をガラスにぶつけたとき,ガラスが割れるかどうかの実験,もう1本は,同じ毎秒17mの風の中でできることは何か,という内容です。こ れは生徒たちに大受けでした。

休憩後,雷と竜巻を中心に,岡田が防災について話しました。竜巻の風速は,中程度の規模で時速200kmにもなります。秒速17m(時速60km)での動 画と合わせ,生徒たちに竜巻の怖さを伝えることができました。最後に「台風に挑戦!ゲーム」を行い,うちわで出せる最大風速を競いました。生徒12名,全 員に行ってもらいましたが,二刀流あり,ゆっくり扇ぐものあり,細かく扇ぐものあり,とそれぞれに工夫を凝らしていました。ちなみに最大風速5.2mを記 録したのは女子生徒でした。
授業終了後,午後からは,地元の方ご案内で被災地に入りました。どこにでもありそうな町でありながら,全く人の気配がありません。人の消えた町の静けさ に,心が凍りました。一時帰宅可能区域に入ると,一面の野原に打ち上げられた船が放置されていました。野原は,もとは水田だったところだそうです。更に海 に近い地域では,津波で壊された家屋が,片付けることもできず放置されていました。道路沿いに瓦礫の堆積が見られましたが,これは道路を整備するために片 付けたものだの説明でした。道路の先,丘の上には,テレビで幾度となく見た福島第一原発の姿がありました。

報道で見聞きしてはいましたが,現実に放置せざるを得なくなった町の様子を見たことは,大きな衝撃でした。前日の夜,相馬高校の先生方と懇親の機会をえま したが,その中でも,現地の苦悩を知ることができました。自宅が高濃度汚染地域にあり,たぶん一生,自分の家には戻れないという先生,山形に避難して,片 道3時間かけて出勤したという先生,教員が避難してしまい,お子さんの通う学校に先生がいなくなって講師ばかりだった,という先生。津波で肉親を失った生 徒も少なからずいる,というお話。あの日,テレビの中で津波がすべてを飲み込んでいく様子を,まるでアニメ映画を見るように見ていた私に,それが現実の世 界の出来事であったことを突きつけられた時間でした。自然科学に関わる者として,自然災害から身を守ることを伝え続けることはもちろんのこと,放射能を正 しく教えることの大切さを痛感させられて帰京しました。
このような機会を与えて下さった相馬高校と,これを支援して下さった東京大学医科学研究所に深く感謝申し上げます。また,福島からの送迎をはじめ,講座の コーディネートをして下さった学習評価研究所の松浦三郎様,授業のセッティングをして下さった相馬高校の小野田義和先生に,心より感謝申し上げます。有難 うございました。

【略歴】
●荒川 知子(田園調布学園中等部・高等部,一般社団法人日本気象予報士会)
東京都立川市出身。1999年気象予報士資格取得。お天気教室講師を務めるほか,「身近な気象の事典」(共著)の編集委員も務めた。趣味はビオラ演奏,ヨガ,茶道。

●岡田 登志惠(一般社団法人気象予報士)
福島県いわき市出身。2010年気象予報士資格取得。気象科学館案内員,防災普及講座・お天気教室等の講師を努める。趣味は空を見上げること,始めたばかりのゴル
フ,樹脂粘土細工。

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