医療ガバナンス学会 (2013年12月9日 06:00)
風疹をなくそうの会『hand in hand』共同代表
可児 佳代
2013年12月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
一つ一つの障害に向きあい過ごす時間はとても大変でしたが、それは娘と過ごした大切な宝物の時間でした。何故ならそんな時間は18年しか続かなかったからです。心臓病の悪化であっと言う間に旅立ってしまいました。
娘を亡くしてから、私は何をしていいのか分かりませんでしたが、亡くなった娘が生きていた証を残そう、娘の20歳の誕生日にHPを開設しました。そのHPに「風疹の予防接種のお願い」のページを作り啓発活動を始めました。
その直後の2004年に風疹が流行。10人のCRS児が産まれました。その年に厚労省の研究班が「緊急提言」を出しましたが、2006年の小児へのMRワ クチンの2度接種が始まっただけで、提言の中で指摘されていた大人の感受性者には何の対策もないまま放置され、今回の流行に繋がりました。
今年になってすでに24人の先天性風疹症候群のお子さんが確認されています。昨年の4人を併せると28人です。せめて昨年、大人の間で流行していると分 かった時点で、何故手を打ってもらえなかったのか、その時対策をしてもらっていたら今CRSで生まれてきた赤ちゃんは守れたと思うと切ないです。そんな思 いを抱えている私に、行政に詳しい方が教えてくださいました。自治体は、本当は助成したくなかった、国に対しても積極的に働きかけをしなかった何も対応し て欲しくなかったというのが本音だったようです。
今年の3月くらいから、私のHPには、31年前に私が苦しんだのと同じように、感染した妊婦さんなどから相談のメッセージが相次いで入るようになりました。不顕性感染で赤ちゃんに障害が出たという母親からの不安な声が幾つも届いています。
生後8ヶ月で白内障を発症し、両眼の手術が必要になった赤ちゃん。低体重児で生まれて心臓病のため転院して調べたらCRSと確認された赤ちゃん。妊娠中ご 主人が風疹にかかり、妊娠初期の血液検査で抗体が1024と高かったにも関わらず、母親には症状がなかったため大丈夫と言われ、32週で出産、心臓などに 疾患が見つかりCRSと診断された赤ちゃん。
妊娠中に風疹の症状が出た何組かの20代初めの若い夫婦は、CRSの赤ちゃんが生まれるかもしれないと分かっても、授かった命を無しにはできなかったと言ってくれました。国が対応してくれていたら…この赤ちゃんたちの障害は防ぐことができたはずなのです。
今年8月にCRS児の母親や当事者と共に患者会に立ち上げました。【風疹をなくそうの会『hand in hand』】です。
二度と風疹を流行らせないために、悲しむ母親と産まれてきたCRS児に対する支援を早急に望みます。皆がワクチンの接種することで風疹の根絶を目指しています。流行が下火になったからといって、これで終わったことにしたら、また、流行は繰り返します。
どうか皆さん、まだ風疹のワクチンを打っていなければ、打って下さい。自分のためにも、未来の赤ちゃんのためにも。
そして医療関係者の方々。インフルエンザの予防接種をしにきた大人たちに、MRワクチンも接種するように、勧めて下さい。お願いします。
この少子化の時代に、なぜ風疹対策が進まないのか不思議でなりせん。取るべき対策は明らかなのに、他の先進国でできることが、なぜ日本ではできないので しょうか?このままでは、私たちと同じように苦しむ母親と赤ちゃんが増え続けてしまいます。二度と同じ事を繰り返さないために、旗振りでなく有効な対策の 実行を望みます。
【略歴】可児 佳代(かに かよ)
1954年生まれ。1976年結婚。1982年妊娠中に風疹に罹患11月長女妙子出産。先天性風疹症候群(CRS)。2001年2月妙子没。2002年 11月HP「カニサンハウスたえこのへや」開設。啓発活動開始。2013年4月change.org.で風疹の署名活動開始。8月CRS児の母親と当事者 達と共に患者会【風疹をなくそうの会「hand in hand」】設立。共同代表の1人となる。