医療ガバナンス学会 (2013年12月14日 06:00)
しかしながら、この間、ワクチン接種後に慢性疼痛等で苦しむ少女の映像がメデイアで広く報道された結果、たとえ接種勧奨が再開されたとしても、接種率がた だちに回復する状況にないことは明らかである。したがって、私たちには、副反応を発症する可能性のある女子と同じ目線に立ちながら、「中学1年生~高校1 年生の女子が安心して接種を受けることができる」状況を改めて確立していくことが強く求められている。
そのために、第一には、副反応に関する情報の公開が最も重要である。現在、厚労省で収集されているデータの解析結果、すなわち、ワクチン接種の副反応とし ての慢性疼痛の正確な発生頻度、詳細な症状とその後の経過、ワクチンとの因果関係の有無等が客観的なデータとして公開され、広く国民に周知されることが大 切である。またワクチンを供給する製薬会社には、個々の医療機関に対して、副反応に関する周知徹底を行うことが強く求められる。
第二は、慢性疼痛に対処できる医療ネットワークの形成が必要である。副反応としての頻度はきわめて稀であるとしても、もしも疼痛が慢性化する場合、ただち に専門機関へ紹介し、早期診断・早期治療を行うシステムを構築することがきわめて重要である。この間、さまざまの研究会等で慢性疼痛に関 する議論がなされ、これはワクチン接種だけでなく採血だけでも起こりうること、早期に専門的に対処すればほとんど治癒することが判明している。本会は、日 本産婦人科医会等とも連携ながら、副反応にただちに対処するネットワークを形成し、「安心してワクチン接種を受ける」状況を構築したいと考える。
第三は、ワクチン接種におけるインフォームド・コンセントの徹底である。もしも接種勧奨が再開された場合には、改めて、接種現場における詳細な説明と同 意、すなわち、子宮頸がんという悪性疾患に関する説明とともに、ワクチン接種のリスクとベネフィットが接種希望者に対して詳しく説明される必要がある。ま たより安全で疼痛を感じることの少ない筋肉注射法が周知徹底されることも求められる。これらの点についても、本会が主導してワクチン接種医療機関への指導 と周知を行っていきたいと考える。
わが国において、子宮頸がんは20~30歳代の若い女性において、その罹患数、死亡数ともに増加傾向にある。したがって、その発症を予防し、たとえ発症し ても早期発見・早期治療によって若い女性の妊孕能、そしてその生命を守っていくために、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診という予防の二本柱がとても大 切である。今後も、本会は子宮頸がん予防のための対策を総合的に講じていきたいと考える。