医療ガバナンス学会 (2014年1月6日 06:00)
<目次>
A 医療法の改正(私案)
B 医療法施行規則の改正(私案)
C 国会における付帯決議(私案)
A 医療法の改正(私案)
第6条の10(病院等の管理者の義務)[改正]
病院、診療所又は助産所(以下この条から第6条の10の4までの規定において「病院等」という。)の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、医療の 安全を確保するための指針の策定、委員会の設置、従業者に対する研修の実施その他の当該病院等における医療の安全を確保するための措置を講じなければなら ない。
第6条の10の2(医療事故の届出)[新設]
病院等の管理者は、当該病院等内において行った医療又は管理に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産(その死亡又は死産を予期しなかったものに限 る。)(以下この条から第6条の10の4までの規定において「医療事故」という。)が発生した場合には、当該医療事故が発生した日から2週間以内に、当該 医療事故が発生した日時、場所、診療科名、性別、年齢、病名その他の医療事故に係る患者に関する情報、職種その他の医療事故に係る医療関係者に関する情 報、発生場面、内容に関する情報を、患者の共同相続人の全員(以下この条及び次条において「遺族」という。)に対して説明し、医療の安全の確保に資するこ とを目的として、医療事故の発生した病院等の支援及び医療事故の再調査を行う者であって、厚生労働大臣の登録を受けた医療事故調査・支援センター(以下次 条及び第6条の10の4の規定において「センター」という。)に届け出るものとする。ただし、遺族のうち当該病院等に知れなかった者に対しては、この限り でない。
第6条の10の3(院内調査の実施)[新設]
病院等の管理者は、医療事故が発生した場合には、速やかに当該病院等内に事故調査委員会を設置し、医療事故に係る必要な調査(以下この条及び次条において「院内調査」という。)を行うものとする。
2 病院等の管理者は、院内調査に際し、医療の安全の確保のために、当該医療事故に関する専門的科学的知見を有する学識経験者の支援を受けるよう努めるものとし、必要に応じてその他の学識経験者の支援も求めるものとする。
3 病院等の管理者は、院内調査に際し、遺族に対し、解剖及び死亡時画像診断の手続き等の調査方法を記載した書面を交付し、死体の保存への協力を求めるものとする。
4 病院等の管理者は、院内調査を終えたときには速やかに、院内調査の結果を、遺族に対して説明し、センターに報告するものとする。ただし、遺族のうち当該病院等に知れなかった者に対しては、この限りではない。
5 病院等の管理者は、院内調査を終えることができなかった場合、院内調査に対してさらなる調査を要すると思料する場合、遺族が院内調査結果の報告に対してセ ンターによる再調査を求める場合などには、センターに対して、センターの定める手数料を納付して、医療事故に係る必要な再調査を求めることができる。
6 病院等の管理者は、求めに応じて行われるセンターの再調査に協力するものとし、当該病院等が正当な理由なくして、協力しないために再調査のできない状況が生じた場合は、センターによってその旨を当該病院等の名称とともに公表されることがあるものとする。
7 病院等の管理者は、センターによって再調査の結果を通知されたときは、遺族に対して当該再調査結果を説明するものとし、必要に応じて院内調査の結果を検証するものとする。
第6条の10の4(医療事故調査・支援センター)[新設]
第6条の10の2の登録は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事業(以下この条において「医療事故支援事業」という。)を行おうとする者の申請により行う。
一 院内調査の際の病院等からの求めに応じて行う助言
二 病院等からの医療事故発生の届け出に係る受付、整理
三 院内調査の結果の報告に係る整理、分析
四 病院等からの求めに応じて行う医療事故に係る再調査、当該病院等への再調査結果の報告
五 医療事故の再発防止に係る普及啓発
六 医療事故の調査等に携わる者に対する研修
七 前各号に掲げるもののほか、医療事故に係る調査等を支援する事業
2 センターは、医療関係団体、学術団体その他のセンターが指定する者に対し、センターにおける医療事故支援事業の一部を委託することができる。
3 センターの業務に従事する職員(前項の規定により委託を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)及びその職員を含む。)又はその職にあった者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
B 医療法施行規則の改正(私案)
第1条の11[改正]
同条第1項のかっこ書き(ただし書き)を削除する。
第12条の17[新設]
第12条の2第2項ないし前条の規定は、医療事故調査・支援センターについて準用する。この場合において、「事故等分析事業」「登録分析機関」「特定機 能病院又は事故等報告病院」「特定機能病院、事故等報告病院」「第12条の登録」「事故等報告書」「事故等事案」は、それぞれ「医療事故支援事業」「医療 事故調査・支援センター」「病院等」「当該病院等」「医療事故調査・支援センターの登録」「事故調査報告書」「医療事故」と読み替えるものとする。
C 国会における付帯決議(私案)
1 医療事故調査・支援センターから遺族への報告、行政への報告や警察への通報は行わないものとし、医療事故の個別事案の公表も行わないものとする。
2 医師が検案をして異状があると認めたときは、医師法第21条に基づき、医師から所轄警察署へ届け出る。
3 この改正法施行後5年を目処に、医療事故に係る刑法第211条第1項前段(業務上過失致死傷罪)及び医師法第21条(異状死体等の届出)の各規定のあ り方を専門的科学的視点から見直して医療法において規制をすべく、また、医療事故に係る民法第415条(債務不履行)及び第709条(不法行為)の各規定 のあり方を患者救済の視点から見直して医療法等において無過失補償制度の創設をすべく、それぞれの準備のため議論を開始することとする。