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Vol.90 診療室の窓から ~そーなんだ、歯科の臨床研修医編(4)~

医療ガバナンス学会 (2014年4月9日 06:00)


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医療法人SGH会すなまち北歯科クリニック
院長 橋村 威慶
2014年4月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


先日の友人K先生の話。ファミリーで入る保険の家族欄の署名に「妻」を「毒」と間違って記入してしまったとのこと。そのまま気付かずにいると、背後から突 き刺さるような視線が…。「ふーん、私のことそんなふうにみているんだ」と妻の声には「冗談だよ」と言わせないオーラが漂っていたそうです。申込用紙をお もむろに取り上げた妻は、「あ、私も間違えちゃった」と言って何かを書いてK先生に渡しました。そこには世帯主→毒夫に…。ちなみに私は「読者のみなさ ん」を「毒者のみなさん」と間違えたことがあります。え、そんな変換一度でもしない限り出てこないって?まあいいじゃないですか。

このように、ちょっとした間違いが大変なことになるのが世の常。そうならないように、今回は歯科臨床研修医一問一答式で歯科研修医のポイントを押さえていきましょう。

●歯科臨床研修医の年収は?
研修医の賃金は各臨床研修施設が決めます。今年(平成25年度)の東京医科歯科大を例にとってみましょう。東京医科歯科大は日給制をとっており、日給 9145円。年収にすると210万円ぐらいになります。この年収は高い低いか?答えは「非常に高い」が正解。現在歯科医師の4人に一人は年収200万円以 下のワーキングプアとなっています。そんな状況の中で、労基法に基づいて最低賃金以上の処遇が確保されているなんて、なんて幸せ者でしょうか。歯科研修医 のみなさんは感謝しなければなりません。私の知っている元研修医の先生は研修後、歩合制の医院で勤務したら研修時の給料よりも3割も減ったと嘆いていまし た。普通の歯科開業医の目線からみると、粗利で200万を出すのがどんなに困難なことか。本当は医療に携わる者が「お金を計算しながら…」なんてしたくな いですが、計算していかないともうやっていけないのが歯科医療業界の現状なのです(これに関しては後ほど「歯科開業医物語」として述べていきましょう)。
研修医に給料が支払われるようになったのは歯科医師臨床研制度が義務化(平成18年~)され、歯科医のアルバイトが禁止されたことによります。省令だから 仕方がありませんが、給料が保障されているからとはいえ、決して高額ではないですから、生活がままならない人もいるやも知れません。また、アルバイト禁止 によって歯科臨床研修医は多くの実践の場を失いました。弊害といえましょう。アルバイト禁止は本当に困ったものです。
ところで、私が研修医のころは研修医義務化以前であり、アルバイト可。研修医手当との名目で月3万円(国立を除く私立歯科大の場合。1万円のところもあ り)支給されました。誰かが計算し「自給186円だ!」だと笑った思い出があります。ですが、手当が低いからと言って愚痴の一つはこぼしますが、どこぞに 訴えるみたいなことは誰もしませんでした。皆、歯科研修医はコスト部門で、プロフィット部門でないことが自己体験でわかっているからです。自分で生計を立 てるには絶対アルバイトが必要な時代のころの話です。

●保険や住宅手当はあるの?
徒弟制度の歯科医にそんな贅沢なものいりません!と言いたいところですが、しっかりあります。労災、雇用、健康保険は義務化に伴い研修施設が加入させる必 要があり、今の歯科臨床研修医は全員入っています。ところでこの保険、甚だ疑問な個所があります。一体どこの誰が研修医をクビにするのでしょう?研修医を クビにするということは、教える側が下手だと宣言しているようなものです。そしてこの保険、どのくらいの割合で履行されているのでしょうか?ほぼ皆無に違 いありません。私が保険外交員なら、真っ先に研修医の雇用保険の契約の獲得をねらいます。大規模研修施設の保険担当の方、変なものとかもらっていませんよ ね?ダメですよ、役得なんて思っちゃ。
住宅手当はありません。そんなものいりません。研修医は病院に住めばよいのです。朝から晩まで24時間365日診療のことだけを考えていればいいんです。すいません古い考えで。まあ、「鉄は熱いうちに打て!」です。
肝心の自賠責はどうなのでしょうか?これは任意になっています。「お前、一生そこに立っとけ!」のように上意下達の歯科界は後輩の後始末を上の者が負うと いう古き良き風習が残っています。訴える側もお金を持っているところから責めるでしょうから研修医の不始末は研修施設の長にいくのが流れでしょうが、研修 医個人で訴えられたらどうするのか?考えただけでもイヤですね~。自賠責も必須にしましょう。

●歯科臨床研修医の休日はどうなっているの?
普通に週休二日です。休みの日は勉強会に出たり、同じ歯科医師同士で情報交換をしたりします。
後はもう普通に過ごしています。「鉄は熱いうちに打て」論の私としては休日なんていらないと思っていますが、まあそうはかないでしょうから、どうぞ勝手に青春をエンジョイしてください。

●歯科研修医になって何かお得だったことは?
うーん、なんでしょうか?ゆっくり考える時間がもてるというところでしょうか?骨休み的な感覚と申しましょうか。「鉄熱」の私としてはもったいない気分がします。

●ドラマに出てくるような出来事はあるの?
「敗戦投手の気分ってこんなのかな?」と同僚がつぶやいたのが今でも記憶に残っています。
『患者いない、自由ない、金ない』の歯科研修医ならではのものです。ドラマチックなのは皆無と言っていいでしょう。
今、私の頭の中に映画ビルマの竪琴のワンシーン、「水島、帰って来いよ!」が、よぎりました。まあ、そんなイメージです。

●研修医どうし恋愛関係になる人っているの?
これは不思議なのですが、研修中に恋が芽生えて…なんて聞いたことはありません。
逆に、付き合っていた2人が別れたというのは何回も目の当りにしています。何故なんでしょうか?誰かわかる方がいたら教えてください。

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