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Vol.93 小保方会見「8つの疑問」――米国の科学者が知りたかったこと

医療ガバナンス学会 (2014年4月12日 06:00)


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この原稿は新潮社「Foresight」より転載です。

http://www.fsight.jp/25904

大西 睦子
2014年4月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の小保方晴子・研究ユニットリーダーの会見が、4月9日に行われました。この「STAP細胞」論文の整合性には、日本国内だけではなく、世界中の科学のコミュニティーや米国民が、大きな関心を抱いています。
この会見については、騒動の発端となった論文を掲載した雑誌『Nature』も取り上げました。
【Acid-bath stem cell scientist apologizes and appeals,Nature,Apr.09】(*1)

同誌は、小保方氏が、以下2つの理由のために記者会見を開いたと示しています。1つ目は「間違いに対する謝罪」、2つ目は「STAP細胞があることの証明」ということです。さらにもう1つ、小保方氏は「不正確さは、悪意があったわけではない」ことも主張しています。
この会見に対して、米国の多くの研究者は、「この会見は、感情的ではあるが、全く科学的ではなく、私たちが抱く疑問に何の答えもないので、かえって悪い印象を与える」と感じています。以下が、彼らの知りたかった疑問です。

1. もし正しい画像を持っているなら、いつ私たちは見ることができるのか。
2. 『Nature』に投稿する前に、誰が最終的に承認をしたのか。
3. 200回以上も実験に成功しているなら、その結果はいつ見ることができるのか。
4. 経験のある共著者が、論文の撤回を主張しているが、なぜ小保方氏は、彼らの主張を聞かないのか。あるいは、なぜ小保方氏は、彼らに事実を証明しないのか。
5. 博士論文のコピーペーストは事実か。
6. どうしてハーバード大学は、小保方氏の結果をサポートしないのか。
7. STAP細胞があるのなら、いつあなたは証明するのか。
8. ほとんどの実験は、その過程が結果に大きく影響する。なぜ、あなたの場合、結果がそれまでのデータに影響されないのか。

結局、小保方氏の会見では、この8つの疑問のいずれにも明確な回答がありませんでした。米国の科学者たちは激しく失望しています。

●MITの研究者も再現できず
また、今回の会見で、小保方氏は論文を撤回しないと主張していますが、私の知る限り、米国の幹細胞の研究者らは、不正の見つかったこの論文は撤回せざるを得ないと述べています。4月2日付の米紙『ボストン・グローブ』にはその議論が掲載されています。
【Fraud alleged in findings on stem cells,The Boston Globe,Apr.02】(*2)

この記事の中で、世界トップクラスの研究所である『MITホワイトヘッド研究所』の幹細胞の科学者ルドルフ•イェーニッシュ教授は、「とても残念だ。科学 の世界にとって悪い意味をもたらします」と述べ、さらに、「この論文は発表された直後は、とても興奮しました。ところが発表後すぐに、科学者の間でこの論 文に疑いが浮上しました。最初は、STAP細胞作製方法の簡単さと、この研究に関与した経験のある日本の研究者への敬意から、この論文に興味を抱いたのだ が」と述べています。
そこで、イェーニッシュ教授の研究室の研究者らは、すぐに同じ方法で幹細胞を作製しようとしましたが、彼らは幹細胞を得ることができませんでした。さらに 最近、この論文に問題が生じた後、論文の主要共著者の1人で、論文の撤回に終始反対しているハーバード大学のバカンティ教授らがインターネットに掲載した 方法も試してみましたが、やはり幹細胞は得られませんでした。
小保方氏の2時間半に及ぶ会見は終了しましたが、残念ながら、この会見では科学的なエビデンスはまったく得られず、科学のコミュニティーや米国民の疑問点は何も解決しませんでした。むしろ、この研究結果の信頼を得ることは、さらに厳しい状況になったと思います。

≪参考≫
1. http://blogs.nature.com/news/2014/04/acid-bath-stem-cell-scientist-apologizes-and-appeals.html#/comments
2. http://www.bostonglobe.com/metro/2014/04/01/stem/Sh5GOIUNn8Sj6ZEgv4sk3N/story.html

【略歴】
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。1970年、愛知県生まれ。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月からボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、2008年4月からハーバード大学 にて食事や遺伝子と病気に関する基礎研究に従事。

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