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Vol.105 「自粛を自粛してぇ~~」と金網越しに叫びたい

医療ガバナンス学会 (2014年5月2日 06:00)


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東京大学医科学研究所特任研究員、看護師
児玉 有子
2014年5月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


アラ***の看護師資格を持つ私のFacebook投稿は9割が競輪記事です。そんな熱心な競輪ファンへ転じた道は意外と単純でした。選手と知り合い、ルールを教えてもらい、迫力のレースを目の前で見て、その後、応援していた選手が目の前で1着を決めたからです。

久留米と聞くと競輪の中野浩一選手が思い浮かぶ方も多いでしょう。私は大学時代から6年間、久留米市に住んでいましたが、その時には中野選手のホームバン クである久留米競輪場へ一度も足を運んだことがありませんでした。当時の私は競輪場を危ない、行ってはいけないと感じていたからです。中野選手の偉業を もってしても、地元ですらそういう印象の競輪、競輪場です。これを読む皆さんもMRIC(このメルマガ)どうしちゃったの?と感じられていることでしょ う。
公営競技である競輪はギャンブル的要素満点。その魅力も大いにあります。しかし競輪は人間と人間の究極の戦いが繰り広げられるスポーツと私は感じています。

理解できない方も多いでしょう。私も最初は皆さんと同じ、「そんなに楽しいの?」「何が楽しいの?」と思っていました。でもあのトップスピードで自転車が 目の前を通るときの音と風を直接感じて以来、一変しました。「楽しいです!」。競輪のルールはガイドブックの行間を誰かが埋めてくれないと伝わりにくいく らい複雑です。だからこそ、なじみにくい面もあります。でもその心理戦をふくめた戦いは見れば見るほど、ケースを重ね分析すればするほど楽しくもありま す。(ちなみにオリンピック競技のKEIRINとは少しルールが異なります)

ところで、今回競輪のことで寄稿させていただくのは、私の生活の一部になりつつある競輪がいま抱えている問題を皆さんにもお伝えし、解決法を一緒に考えていただければ。と思ったからです。
私が競輪において抱えている一番の困難は、23人の競輪選手に対して日本競輪選手会から半年から1年の「競輪出場の自粛休場の勧告」が出されたことです。

とってもよくわからない勧告ですが、対象選手は従うようです。「自粛を自粛して~~」と金網越しに叫びたい心境ですが、彼らの自粛は始まってしまいました。競輪場でその声は届きそうにないので、今回メールマガジンで叫ばせていただきます。
対象の23人がどんな選手か想像つかないと思いますが、サッカー日本代表レギュラー11人中10人がピッチに半年以上立つことを許されなくなった。相撲な ら、横綱、大関のほぼ全員と関脇の半分が半年間土俵入りしない。というようなレベルにある選手が今回の処分によりレースに出ないという状況です。

以前から競輪は売り上げの減少という大きな問題を抱えています。にもかかわらず、売り上げに貢献していた強くて有名な選手の多くに対して、今回の処分が出されました。

横綱がいない場所って盛り上がらないですよね。真央ちゃんや羽生くん、大輔くんのいないフィギュアスケート大会も。競輪も同じです。私が競輪場で耳にした ヤジではない、ポジティブな声援で目立っていたのは、今回の処分の対象になっている選手に向けたものでした。そのくらい人気の選手たちなのです。今回、対 象となる選手は一回の競輪開催の売り上げを億から千万単位で動かす選手です。強くて有名な選手が地元の競輪場に来なければ、大会は盛り上がりに欠け、売り 上げは増えず、益々競輪場は減るかもしれません。売り上げが増えないことは競輪場を有する自治体にとって致命的な出来事でしょう。なぜなら公営競技である 競輪の売り上げの約四分の一が開催する地方自治体に入る仕組みだからです。これ以上赤字がかさむのであれば廃止を決める自治体が増えるでしょう。したがっ て、有名選手の出場の自粛が及ぼす影響、特にこれから記念大会(その競輪場での一番売り上げの大きいレース)開催を控える競輪場を持つ多くの自治体の困惑 は想像に難くないでしょう。
23人は選手会の掟に反したのかもしれません。選手会は法より掟の世界なのかもしれません。でも出場選手のあっせんをするJKAや競輪を所管する経済産業 省が監督者としてフェアに仲裁しないのはなぜでしょうか。各レースの施行者である自治体の首長へも同じ思いです。法を犯していない貴重な多くのトップ選手 をレースに出さないことに私には一ファンとして納得がいきません。

先月の週刊朝日で作家の伊集院静さんが、今回の選手会が下した処分について自身のコラム2ページにわたり書かれていました。そして、その中にあった所管の茂木敏充経済産業大臣あてのメッセージは私も全く同感です。

茂木大臣の地元である栃木県にも宇都宮市に競輪場があります。今年の「高松宮記念杯競輪」(競輪の最高峰であるG1レースの一つ)が6月に宇都宮競輪場で開催される予定です。
『茂木大臣!地元開催のG1レース、いろいろな問題を整理し、競輪再考、再興の大会にしましょう。選考基準を満たす、すべての選手が全員出場するレースでのG1が見たいです。新ファンの思いもどうか拾ってください。』

今の私はサッカーよりもテニスよりもゴルフよりも野球よりラグビーよりも観戦機会が多いスポーツが競輪です。そして「競輪の研究されているのですよね」と 言われるほどに競輪情報をSNSを通して発信するのが日課になっています。さらに最近ではお友達とのお出かけに選ぶ場所は競輪場になるほどはまっておりま す。一緒に観戦する仲間がふえることは私もうれしいので、私は観戦しながら友人に魅力を伝え微力ながら女性ファンを増やす活動を勝手にしています。そして 誘った友達は、「次、競輪いつ行くの?」「連休近くでないの?」と聞いてきます。一度、目の前で生のレースを見るとその印象は変わります。ぜひ、皆さんも 一度勇気をだして競輪を目の前で観戦ください。

私の密かなこれからの目標は他のスポーツのようにジャケットをきて最前列でプロの真剣勝負をみる仲間を増やすことです。競馬に負けない雰囲気作りへの協力をしていきたいな。と思っています。もちろん、売り上げにも貢献です。

経産省が所管し、唯一日本が産業として取り組んでいるオリンピック競技が2020にむけ、競技、資金ともにリードするよう願いをこめて、最後にもう一度、 新ファンの一人として23人の選手たちには「自粛を自粛してぇ~~」と、JKA石黒会長、茂木経産大臣、そして経産省の担当である車両室の小川さんには 「フェアに見直して~、競輪場をこれ以上減らすようなことは止めて~」と叫ばせていただきます。

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