医療ガバナンス学会 (2014年5月23日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年5月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
去年秋から東京医科歯科大学の医学生が半年ほど来てくれました。この4月からは岡山大学の医学生が来ています。2人とも大学を休学するなどして時間を作り、相馬で暮らしながら生活費を稼ぐという形で勤務しています。
週3日とか5日とか、普通に他の病院スタッフと変わらず雇用され、朝から晩まで勤務しています。私の学生時代も1年間、大学を休み、色々と見て回ったりバ イトや旅行したりする友人がいました。なるほどこんな時間の使い方もあるのだなと、受け入れ側になる自分たちが逆に感心してしまいます。
東京医科歯科から来てくれた彼女は、着替えや待合の誘導、同意書の確認、問診票の記入漏れの確認などに当たっています。学校検診などの際は、受診者が一気 に増えてばたばたするのですが、正確に仕事をこなしています。また、ホールボディーカウンター(WBC)で働く多くのスタッフのために、仕事のフローを細 かく記したマニュアルを作り、それは今も重宝しています。データのまとめやグラフのまとめなどの作業も嫌がらず淡々とこなします。夜は遅くまで皆で論文を 読んだり、議論したりです。
岡山大学から来てくれている彼も、仕事に慣れ、検査フロー上の問題点や、気づいたことなどをいつも報告してくれます。今では大事なスタッフの一人。週の半分は当院で働き、残りの半分は別の復興関連のNPOで働いています。
こちらに来て、数カ月間生活し、2人とも現地に対する印象が変わったと話していたのが印象的でした。こちらに来る前は、現地は何か恐ろしいところだと言う 知り合いが何人かいたと言います。「もう少し、放射線のことが話題に上がると思っていた」と感想を漏らしたことが私には新鮮でした。
きっと彼らのような医学生が、実際の自分の目で見て感じた状況を帰って伝えてくれるのだろうと思います。私自身も福島出身の人間ではありません。何だかんだ言って、実際にこちらに腰を落ち着けて現地の状況をよりよく、深く分かることが一番の方法なのかなと思います。
南相馬市立総合病院にも全国から医学生が見学に来ており ( http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013030800012.html )、研修医の先生も今は相馬市、南相馬市に5人います。地道に伝えていきたいと思います。
写真:岡山大学から来てくれている渡部君、子供たちに勉強を教えたりもしています。
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http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014051900008.html