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Vol.134 内部被曝通信 福島・浜通りから~命のリスクにもかかわる骨の健康

医療ガバナンス学会 (2014年6月13日 06:00)


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この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html

南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年6月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

我々の健康は、何か一つの要素だけに規定されるのではなく、様々なリスクのバランスの中で維持されています。リスクがあるなら避けたい。そう思うのは当然なのですが、一つのリスクを避けるために、ほかの多くのリスクを背負い込む訳にもいきません。

このリスクに対する認知に差が大きいからこそ、バランスをとるのは難しいですし、どの選択が必ず正しいという訳でもありません。様々な対応は認知の差を埋めるためばかりではなく、背負い込んでいるリスクを下げるために行われるべきだと思っています。

医療の問題で言うなら、放射線とよく引き合いに出されるのは生活習慣病でしょうか。高血圧や高脂血症、肥満、糖尿病などは心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。

その中でも糖尿病は万病の元で、近年は糖尿病自体が、発がんと関係していることが明らかになってきています。そのメカニズムは完全には解明されていません が、不活発な生活習慣のために糖尿病が増え続けるようなことがあれば、それによって最終的に発がんリスクが高まっても不思議ではありません。健康について は、あくまで個人個人がバランスをとるしかありません。

それらの生活習慣病に加えて、相馬市では骨の健康に関しても仮設住宅を中心に力を入れて検診を行っています。

何度かこのブログでも紹介させていただきましたが(27,29,44回)、運動をしなければ骨は弱くなります。日本人はカルシウムの摂取量は少ないです。 大腿骨頸部骨折は7人に1人が命を落としかねないものです。骨を強くするためにビタミンDが有効ですが、これはキノコや魚に多く含まれており、浜通りの 方々の生活変化を考えると摂取量が減っているであろうことは想像に難くありません。

現在はそんな話は全く聞きませんが、震災直後は、栄養失調と、(放射線を避けるため)外に出ず日光に当たらなかったために、くる病を患ったと言う報告も関東圏の小児科で散見されました。

そんなこともあり、相馬市の医師会の先生と協力して、医療スタッフ向けの骨に関する勉強会を続けています。相馬中央病院の齋藤先生、加藤先生のご尽力もあ り、3ヶ月ごとに開き今回で8回目です。多くの著名な整形外科や内分泌、リウマチ関係の先生が浜通りに来て、相談に乗ってくれています。

先日は聖路加国際病院アレルギーリウマチ科の岸本暢将先生がいらっしゃいました。関節の診察法や診断に関するレクチャーに参加者一同聞き入っていました。 研修医の時に指導いただいた身としては、いつあてられるかヒヤヒヤしていましたが、翌日の診療から直ぐに役立つ素晴らしいレクチャーでした。

毎日行っている診療を少しずつでもレベルアップし、健康を守ろうとするこんな地域での取り組みが色々な疾患を対象に淡々と行われています。

写真:岸本先生による関節のレクチャー中です。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014060900005.html

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