医療ガバナンス学会 (2014年7月18日 10:24)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年7月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
震災を契機に相双地区で顕在化している様々な医療問題を取り扱います。第一回は放射線関連で、公立病院耳鼻科の長谷川純先生が当地区の鼻血を含めた耳鼻科疾患の症例数の変化について。私が相馬市の内部被曝および外部被曝検査の結果について話しました。地元で開業している小児科の先生や、各病院のスタッフも集まり、甲状腺のことや今後の検査態勢のことなどついても議論され、盛況でした。
もう同じことが言われて久しいですが、今回の原発災害が地域医療に及ぼした影響は、いわゆる被曝そのものではありません。高齢化、(医療スタッフや地域の力などの)医療資源の減少、慢性疾患の診療など何か一つの処置だけでは解決しない問題へのきめ細かな継続的対応へのニーズの増大、人員不足、連携など脆弱な部分の顕在化などでしょう。結局大事なことは、いつも必要とされる日常の医療をいかに淡々と提供できる態勢を維持するか、です。
お隣の南相馬市では、小高区からの避難者を受け入れているからでしょう。鹿島区の病院では、患者数が以前より数十%増えています。南相馬市立総合病院では救急搬送件数や外来患者数が震災前を超えました。前述の長谷川先生は、相馬市内の何千人の学校耳鼻科検診をほとんど一人で対応されています。検診期間中は文字通り、食事をするひまもありません。60歳近くの医師が週に2回当直している病院もあります。老人ホームへの入所を検討すれば、この地域では何百人待ち、すぐの入所を希望すれば、50kmはなれた場所で月に数十万円払う高級老人ホームか、200km以上離れた場所を提示されてしまったりすることもあります。特に看護師さんの数が足りません。
この会も、皆で放射線に立ち向かおう、みたいな気概の会ではありません。放射線の状況をアップデートしつつも、それをきっかけとして、現在ある資源で病診・病病連携をより深めようという意味合いが強いです。
あまりにも当たり前に重要な問題なのですが、特に福島から離れた場所では、何々の病気が増えたとか増えていないとか、被曝による影響の可能性があるとかないとか、いわば机上の議論にかき消されてしまいがちなのが残念です。日常の診療を守るために毎日粛々と働いている医療者が、ここにもたくさんいます。
震災を契機に顕在化している問題は、放射線だけではありません。今後は、救急搬送やその受け入れ状況について、仮設住宅の健康状態などについてもそれぞれの医療機関の現状を持ち寄って、よりよい方向へ向かうきっかけになればと思っています。この会の発足に尽力くださった、医師会長の船橋先生、公立病院の熊川先生、佐藤先生、中央病院の齋藤先生に感謝申し上げます。
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坪倉正治の「内部被曝通信 福島・浜通りから」のバックナンバーがそろっています。
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