医療ガバナンス学会 (2014年9月5日 06:00)
この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。
http://apital.asahi.com/article/fukushima/index.html
南相馬市立総合病院
非常勤内科医 坪倉 正治
2014年9月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
これを作ろうと思ったきっかけは、放射線の勉強会でいただく質問が昔からほとんど変化していないことに気づいたことでした。蛇口から出る水は大丈夫か? 自分の家で作った野菜は大丈夫? 外遊びはさせていいの?――。2011年5月に初めて話をしたときと一緒でした。乳幼児専用ホールボディーカウンター(通称:Babyscan)の検査後に、全員の親御さんとお話ししていますが、南相馬では水のことについて質問されることが一番多かったです。
私は、小さい子どもを持つ親御さんに、Babyscanで検出される放射性カリウムの値を指しながら「放射性カリウムって聞いたことありますか?」と必ず聞くことにしています。ほとんどの答えは「知りません」「聞いたことありません」でした。例えば、500ml缶ビール一本の中に、放射性カリウムは5Bq程度、ポテトチップスには20-30Bqぐらい入っています。家に帰って晩酌をして、つまみで食べれば、数十Bqぐらいの放射性カリウムを摂取することになります。でも、日常生活を送る上で、放射性カリウムのことなど知る必要はありません。
一番重要なのは、放射線のことについて触れてもらう「きっかけ作り」だと思っています。そして、放射線について知ることの意義は、様々な選択につなげて安全や安心への納得感を得ること以上に、その知識を生かして、どのような方向にせよ前向きに生活するための支えや自信へとつなげていくことにこそあるのではないか、と思います。
もう今では、放射線に関する大規模な講演会を市町村単位でやっても、それほど多くの人は集まりません。リスクコミュニケーションという言葉だけで嫌気がさす人も多いと思います。それぞれの立場を超えて、放射線のことをふつうに、力まずに話す機会をどうやって持つことができるか。それが最も難しいと感じています。Babyscanも究極のきっかけ作りの一つです。どんな場面でもよいので、この冊子を放射線のことをまた少し勉強し直していただくきっかけにしていただければと思っています。
何度も手直しにつきあってくださったロハスメディカルの川口さん、監修してくださった早野先生、ベテランママの会の番場さんをはじめ、多くの方々のおかげで形にすることができました。ありがとうございます。感謝申し上げます。希望される方の手にできるだけ届くようにしたいと思っています。
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お問い合わせ先: beteranmama0808@gmail.com
また誠に恐縮ですが、この冊子は、みなさまの寄付金で作成しています。冊子を多くの部数で希望される場合など、お力添えを賜ることができればと存じます。より多くの方にお伝えするため、何とぞみなさまの力をおかしください。
寄付先
あぶくま信用金庫 東支店 (普通)0223520
ベテランママの会 代表 番場さち子
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