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Vol.222 いわき市における医療・介護の現状と課題 ~医療・介護・市民が連携するまちづくりを~

医療ガバナンス学会 (2014年10月1日 06:00)


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いわき市医師会副会長
木村守和

2014年10月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


はじめに
東日本大震災発生以降、全国の皆様から被災地に様々なご支援をいただいておりますことに心より御礼申し上げます。
去る平成26年8月9日(土)、いわき市に東京大学医科学研究所の上昌宏先生・亀田総合病院副院長の小松秀樹先生におこしいただき、「いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム」でご一緒にシンポジストとしてお話をさせていただきました。今回は上昌宏先生のご高配により、その時の発表内容に修正を加えたものを報告させていただきます。

1 いわき市の医療の現状
いわき市の病院勤務医数は、東日本大震災以前の10年間で379名から283名へと96名・25%も減った状況で大震災を迎えました。病院勤務医数・開業医数は震災前と比較して大きな変動はありませんが高齢化の傾向にあり、人口が約10%増えたことによって医療提供体制は深刻な状況です。
診療科については、勤務医が不足ないしはゼロとなっている科も多い状況です。開業医と勤務医の連携・病院同士の連携・他の地域への紹介などが行われています。

2 いわき市の救急医療の現状
救急医療は、いわき市の医療において最大の課題となっています。磐城共立病院の救命救急センターは、震災前から常勤医が少ない状況が続いています。救命救急センターに搬送される患者の約1/4は軽症患者となっており、搬送先がなかなか見つからないために、最終的に三次救命救急センターで受けざるを得ないという状況です。それでも救命救急センターでは最終的には患者を受け入れているので、他の地域で報道されている「搬送中の死亡」は発生していません。
救命救急センター常勤医の確保が急務ですが、救急患者の重症度に応じて二次病院や一次開業医でも受けられる体制が必要です。

3 いわき市の介護をとりまく状況
現在いわき市は、65歳以上の方が25%を超える「超高齢社会」となっています。しかし介護職員の不足が顕著であり、介護施設が職員不足のためにやむを得ずサービス制限を行っているところもあります。介護職員の不足も医師・医療関係者の不足とならんで大きな課題となっています。
介護職員の確保のためにいわき市はいろいろな施策を有効に機能していません。多くの介護施設は高校卒新人を確保し入職後に育てるなどの努力で対応している状況です。

4 医師不足解消のために出来ること
医師不足解消のために新卒臨床研修医および既卒医師を確保することは最重要課題であり、待遇面を含めて十分な配慮が必要です。
磐城共立病院は症例が豊富で医学部卒業後の臨床研修に最適の病院であり、約3年後には新病院完成が決まっているということを全国に向けて発信することが大切だと思います。
また、全国には訪問診療などに力を入れ地域に出ていく医療の魅力で研修医が集まっている病院もあります。今後、磐城共立病院でもこういった分野に力を入れることをご考慮いただければと思います。

5 いわきの地域医療・救急医療を守るための「いわき市地域医療協議会」
「いわき市地域医療協議会」は、いわき市医師会・いわき市病院協議会・いわき市関係行政機関・磐城共立病院など関係団体から委員が招集され、いわきの地域医療問題を検討し改善していく中心的機関となっています。
これまで救急医療の諸問題を中心に検討されてきましたが、医師不足で各医療機関の医師の業務が厳しくなっている中、患者の重症度に応じて一次・二次・三次医療機関で適切に救急患者を受け入れることが出来る体制づくりが求められています。
今後この協議会には、救急医療を取り巻く問題として①市民の医療機関への受診の仕方、②かかりつけ医を持つことの推進、③延命医療を受けるかどうかの意志の確認など、市民の意識を高める取り組みや、在宅や介護施設で生活する患者さんを適切に医学的に管理する体制づくりなど、多面的な検討が求められると考えます。

6 いわき市医師会の取り組み
いわき市医師会ではいわき市の救急・地域医療を守るため、①「かかりつけ医」としての休日・夜間の対応、②休日夜間急病診療所などへの協力、③在宅(施設)への訪問診療、④「看取り」実現の取り組み、⑤医療出前講座への協力の5点について会員へ呼びかけています。会員へのアンケートを行い、各ブロック会議へ役員が赴いて説明するなど浸透を図っていく方針です。
介護保険発足以前から医療・介護の連携づくりに努め、在宅医療・認知症などに関する研修会には毎回多数の関係者が集まっています。年に数回は懇親の場を開催し、顔の見える連携づくりにも配慮しています。いわき市は広域ですので、市内各地での身近な地域での研修会・懇親会も開催しています。
在宅医療市民公開講座を毎年開催してきましたが、本年度より「在宅医療出前講座」を市内7か所で行い、在宅医療を行っている診療所医師と連携する病院勤務医が公民館などに出向いて講演を行っています。

7 医療・介護・市民などが連携する地域包括ケアシステムづくり
病院を退院しても在宅や介護施設で適切な医療を受けられずすぐに再入院するようでは、急性期病院が適切に機能することが出来なくなります。高齢者が住み慣れた場所で生活を続けられるよう、在宅や介護施設での訪問診療を充実させること、在宅や介護施設で最期を迎える「看取り」を実現することは、大変重要な課題となっています。最期だけは病院でという救急搬送を減らすことも、救急医療を受け入れる医療機関の負担軽減につながります。
今後ますます高齢化が進むことが予想される中、医療・介護・市民などが緊密に連携する地域包括ケアシステムの構築が求められています。
これまで医療・介護に関わる連携づくりに努め、一定の成果を上げてきました。今後は、地域で虚弱高齢者・認知症の方・要介護者・身体障害者・小児在宅療養者などが安心して地域で生活・療養できるよう、地域住民の自主的な見守り活動・ボランティア活動などとも連携する地域づくりを進めていく必要があります。
この地域包括ケアシステムの構築のためには、いわき市といわき市医師会が一体となって進めて行く必要があります。

8 いわきの医療・介護を守り、育てるために市民が果たす役割
市民は医療・介護の資源が限られた資源であることを理解し、日頃の健康管理・健診などの受診・体調不良時の早めの受診・救急車の適正利用などについて留意する必要があります。また、診療待ち時間が長くなっていることを理解し医療機関に協力し、休日夜間受診した際は医師・医療関係者が疲弊していることへ配慮する必要があります。
いわきの医療・介護を守るため、市民も医療・介護職員の必要性を理解し、可能性のある人材へ働きかけることも大切です。
市民は地域包括ケアシステムづくりの必要性を理解し、身近な地域で安心して生活できるよう虚弱な方への支援・見守り体制をつくり、「困った時はお互い様」というご近所の連携をつくることが求められています。

9 終わりに
「いわきの医療・まちづくり公開シンポジウム」当日は、上昌宏先生から「いわきの医療と教育を考える」、小松秀樹先生から「浜通りの医療のおかれた状況」と題して貴重で刺激的な話をいただき、いわき市民が地域の医療を考えていくうえで大きな影響を与えていただいたと感じております。この場をお借りして、上先生・小松先生に改めて御礼申し上げます。
地域の医療・介護は地域で市民と連携して守り、育てていかなければいけないと強く感じております。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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