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Vol.264 現場からの医療改革推進協議会第九回シンポジウム 抄録から(1)

医療ガバナンス学会 (2014年11月20日 06:00)


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2014年11月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2014年12月13日(土曜日)

【ご挨拶】 9:30

林良造

「現場からの医療改革推進協議会」も第9回を迎えました。この会合は、1年の歩みを確認し、残されたあるいは新たに表れた課題を展望する絶好の機会を与えてくれます。そして、今年も、医療をめぐる展開のめまぐるしさと浮き上がってくる本質的な問題の大きさに圧倒されます。この数年間、医療分野は、政策的には、成長戦略の中心とされ、また、社会保障改革の最大の課題とされてきました。また、医療現場においても、よりよい医療の実現のための様々な課題への挑戦が行われてきました。
この1年を振り返っても、多くのこころみが始められています。まず、日本版NIHがあげられます。また、改正された薬事法の施行準備も進められています。さらに、価値に見合った価格付けを目指す医療技術評価も準備も始まりました。統合的な医療供給体への環境も整えられてきています。さらに、より合理的で良質の医療の実現のための医療情報の活用についての検討も始まりました。これらの試みが、真に日本の医療環境の改善に結びつくかは、まさに現場からのきめ細かいフィードバック、建設的批判にかかっています。
他方で、臨床研究の現場では、研究不正も大きな話題となりました。そもそも、臨床研究の基礎的な知的物的人的インフラが整っていないこともわかってきました。また、それは臨床研究に限らず基礎研究においても同様の状態にあることもわかりました。さらに医療事故調査委員会制度のように、本質的な問題があらためて浮き彫りにされてきたものもあります。さらに、エボラ出血熱の世界的拡散では日本の態勢が試されることとなります。
この協議会は現場から様々な問題提起をし、その解決のきっかけを作り、わかりやすい制度設計と実のあるコミュニケーションを追求し、その道筋を検証し続けてきました。今回の会合も実り多いものになることを期待しています。
【Session 01】10:00-10:30

●夢見るように眠りたい
小野俊介

健康長寿社会の実現は成長戦略の柱」らしく、医療研究の司令塔がまたできるらしい。ここ数十年、次から次に司令塔(○○本部とか○○室とか)が華々しく登場して、いつの間にか消滅し、を繰り返しているので、今度できる司令塔の名前を覚えるのにまた苦労するのであろう。今後いつまでそれを覚えていれば良いのかの予想も難しい。
成長戦略、なんとかビジョンといった威勢のいい話は楽しい。あまりに楽し過ぎて時が経つのを忘れてしまい、錚々たる過去の戦略がどのような成果を生んだのかにすら気付かぬままに数十年が経過したほどだ。今直面する深刻で不可逆な事態は幻想なのかもしれぬ。
市販後に重大な副作用が生じた最近の薬をみると、多くの場合、「国際共同開発・世界同時開発」という開発履歴が短所ではなく長所として記されている。その手の薬では日本での用量設定試験をまともに実施していないことすらある。絶えることなく発生する副作用トラブルと、日本人患者への最適化の手抜きの関係(仮説)が気になる。杞憂ならば良いのだが。
もう一つ、誰も聴きたくない威勢の悪い話がある。雇用の話。今、薬学部の卒業生が製薬企業に就職することは困難を極める。ニポンは今、将来ある自国の若者がそのキャリアの一歩目すら拒絶される非情な国になってしまった。この周知の事実が公的な場で議論されることは少ない(飲み会では皆が憤慨するくせに)。「ニポンは医薬品戦争敗戦国だもの。仕方ないじゃん」という諦めの声が聞こえる。なーんだ、みんな本当は分かってるんだ。
企業の臨床開発者(使い走りのテクニシャンは除く。)は貴重な技術者である。その貴重な人的資源が日本からどんどん減っているのに、そしてその減り方は科学者のそれどころではないのに、危機感をもって論じないのはなぜだろう。むしろ逆に、技術者の減少をリストラの成功談として喜ぶ人ばかりが目立つのはなぜだろう。
企業の新薬開発者を身の丈にあった「技術者」と呼ばず、「名誉科学者」の地位に祭り上げることで、さらに状況を悪化させているのが「れぎゅらとりーさいえんす」と称する流行り病だ。「目利き」といった意味不明の持ち上げ方も危ない。研究不正の問題も、それを科学(医学)の壮大な問題に祭り上げることで、地に足を着けて議論すべき視点、例えば組織に属する技術者(企業の統計家など)が、組織と社会の狭間でどう倫理的に行動すべきか、公益通報はどうあるべきか、などがどこかに消え去ってしまうのだ。
経済の成長・科学の発展という夢を見させながら、幸せ気分のままに日本の医薬品R&Dを安楽死させる、という実に巧妙なシナリオを書いているのがどこかの国の新自由主義者なら、アンタなかなかの腕だよなぁと尊敬したくなる。

●スポーツを通した健康増進
宮澤保夫

国際社会貢献の在り方も色々ありますが、我々星槎グループ・世界こども財団では医療分野の人々とは異なる切口で各国への支援・貢献を図って来ています。これまでもブータン、ミャンマー、カンボジア、バングラディシュにおいて活動をしてきました。一企業・団体では資金・人材とも限られ、出来ることも限られていますが、我々の強みは継続力です。現地ニーズを拾上げ、教育、保健分野において着実に成果を上げてきていると自負しています。実際、各国からもODA、JICA等とは異なったきめ細かな支援、継続的支援に対し感謝の言葉をいただいていますし、その国・地域が将来とも自立的に向上できるよう成果も着実に上がってきていると高い評価をいただいています。例えば、ミャンマーでは保健省と協議の上「スクール・ヘルス・プログラム」を数年前より実施してきました。内容は、手洗い・歯磨き等基本的な衛生習慣を学校で教え、それを生徒の各家庭、ひいては地域全体に普及することにより、社会全体の自立的公衆衛生環境向上に大きく寄与してきました。また、救急車2台を寄贈し、従来型の病院医療体制とは別に、よりフレキシブルな巡回医療体制を同国に普及することに寄与しています。
今回、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定したのに伴い、長年温めて来た「スポーツを通したこども達の健康増進」プロジェクトを実践に移したいと考えています。その対象国として北東アフリカのエリトリア国をこの9月に訪問し、現地オリンピック委員会と覚書を締結しました。直接的に目指すのは、科学的指導法を導入し、多くの同国選手を東京大会(オリンピック・パラリンピック)に参加させること、より多くのメダル獲得ができるよう支援することになります。これは日本国政府(外務省、内閣官房、文部科学省)、日本陸連等各種競技団を巻込んだプロジェクトとなり、我々がこれまで行ってきた国際支援・貢献とは規模が格段に大きくなります。ただ、我々がここでも最終的に目指しているのは、その国の自立的成長、つまり、自国コーチを要請し、彼らが将来に向けてこども達・青少年を継続的に指導・育成していけるような体制の構築にあります。それにより、国全体としてスポーツを通したこども達の健康増進、健全育成の底上げを図ることにあります。エリトリアでの経験を踏まえ、同様のプロジェクトは今後もブータン、ミャンマー等でも進めていく考えです。

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