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Vol.281 現場からの医療改革推進協議会第九回シンポジウム 抄録から(8-1)

医療ガバナンス学会 (2014年12月8日 06:00)


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2014年12月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2014年12月14日(日曜日)

【Session 08】11:15-12:15
教育と東北復興

●浜通りの調査研究の重要性と地域住民への還元を考えて
加藤茂明

2011年の未曾有の大震災では、予想を超える様々な問題を引き起こした。特に相双地区は震災前から医療過疎地区であったが、放射線汚染も相まって、震災直後には過酷な医療環境に追い込まれた。これらの窮状を救うべく、全国から医療関係者がこの地に入り復興支援に注力している。一方で、震災前後の医療環境の変化や地域住民の健康維持に関しては、様々な問題提起と教訓が満ちている。演者は以下4つの方向で、人材育成や啓発活動に努める事で復興支援を行っている。
I.相双地区若手医師の学術活動支援
A) 相双地区では、若手医師達が日常診療の他、様々な形で復興に取り組んでいる。坪倉正治医師(東大医科研大学院生)は、震災直後2011年4月から南相馬市で内部被曝計測システムを構築し、実態調査を行っている。石井武彰医師(九大整形外科院生)は2012年4月から相馬中央病院で骨健康増進を始め、2013年からは越智小枝医師(相馬中央病院)がこれに加わっている。越智医師は、2014年から参画の森田知宏医師(同)とともに、災害前後でも医療体制の推移をハード・ソフト両面から解析している。これら調査研究の成果の国際学術誌上での公表化を2012年4月より支援している。
B)南相馬市立総合病院は初期研修医指定病院であり、全国から研修医が参画している。この病院固有の研修医教育プログラムの講師として、先端生物学の動向紹介とともに、学術的公表の方法についてのゼミを本年7月から始めている。
II.南相馬市仮設住宅での啓発活動
南相馬市の一部が福島原発30Km圏内であり、一時避難地域でもあったため、放射能やその被曝に対して住民は根強い不安を抱えている。そこで南相馬市一般社団法人除染研究所や原子力機構職員と連携し、主として各種イベントと連結させた放射線啓発勉強会を、仮設共同集会所で、2013年9月から不定期に開催している。
III. 南相馬市での中高生への学習指導
番場塾を主催する番場さち子は、坪倉医師ともに震災直後から地域住民への放射線等の知識に関する啓発市民活動の核である。震災直後から開塾を再開し被災民児童の学力維持を図っている。演者は2012年4月から、この塾での学習指導による支援を行っている。
●福島県の教育課題と、克服のための地道な取り組み
前川直哉

私はこの春、十年間勤務した神戸の灘中・高校を退職し、福島市に転居しました。四月からは非営利型の一般社団法人「ふくしま学びのネットワーク」を設立し、県内外の多くの先生方をはじめたくさんの方々に支えて頂きながら、高校生を対象とするさまざまな活動を展開しています。
大学進学率をはじめ、福島県の教育現場が抱える課題の多くは震災および原発事故前から存在していたものであり、そのほとんどは都市部と地方における教育インフラの格差に起因しています。今後、福島県内では多種多様な雇用創出が計画されていますが、たとえそれらが全て実現したとしても教育インフラの問題が解決しない限り、単身赴任者が増えるだけで、福島へ家族連れがたくさん越してくることには繋がらないでしょう。
もちろん人口の流入出の問題だけではありません。今後、福島を力強く復興していくためにも、そしてまた、福島の正確な情報を県外へ、海外へと伝えていくためにも、地域の子どもたちに対する教育は大きな意義を持っています。
実際に福島で活動していて気づくのは、現場の先生方の強い熱意と、高校生たちの学びへの真摯な姿勢です。多くの先生方が、次代を担う生徒たちに真剣勝負で向き合い、高校生たちは自らの学びに全力で取り組んでいます。福島には、「震災と事故後、自分は多くの人たちに支えられた。こんどは自分が、誰かを支える側に回りたい」という強い意志を持つ高校生が、そして「これからの福島を担う主役は、自分たちなのだ」という使命感に燃える子どもたちが、たくさんいます。
こうした子どもたちを支え、より良い学習環境を提供するには、どのような活動を行えば良いのか。現場の先生方と緊密に連携しながら、私たちの団体が取り組んでいる地道な、しかしこの上なくやりがいのある活動についてご報告したいと思います。
●予備校講師→代々木ゼミナール講師
藤井健志

予備校業界ではバブル期と第二次ベビーブーム世代の大学受験期の重なった1988年~1994年を「ゴールデンセブン」と呼ぶ。当時代ゼミ、駿台、河合塾在籍の浪人生は合計15~6万人、最大手である代ゼミ生はそのうち8万人、代々木本部校在籍生だけで約1万5千を数えたと言われている。現在全国代ゼミ27校舎の在籍生はそれぞれ数十~数百人程度。来春にはそのうち20校を閉鎖。大幅に事業を縮小することになると発表されている。
我々予備校講師は予備校との契約に基づいて「講義」の部分を担当し、その分の報酬を得るいわば「請負」稼業に過ぎず、いわゆる予備校経営の裏側については詳らかにしないが、現場の最前線で「少子化」の直撃を受けてきた実感については人一倍強いものがある。
その貴重な体験を、私が育った岡山県の大学受験事情、そして東日本大震災以来お世話になっている福島県の大学受験事情と結び付け、さらにはいま「業界」に起こりつつある新たな動きについても言及しながら、これからの日本の教育のあり方についての一考察をお話ししたいと考えている。

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