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Vol.284 現場からの医療改革推進協議会第九回シンポジウム 抄録から(9-1)

医療ガバナンス学会 (2014年12月10日 06:00)


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2014年12月10日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

2014年12月14日(日曜日)

【Session 09】13:30-15:00
Research Integrity (研究不正の構造と解決策)

●研究不正の構造と解決策
谷本哲也

昨年の本会でも日本の医学研究不正について取り上げたが、その後1年余りの間でも様々な問題が露呈し続けている。ノバルティス社の高血圧治療薬の論文不正事件では元社員の逮捕に至り、競合薬を扱っていた武田薬品工業の論文でも問題が発覚した。アルツハイマー病の国家プロジェクトではデータ改竄の疑いが報道され、白血病治療薬の臨床研究でも製薬会社社員の不正な関与が相次いで表面化した。基礎研究の分野でも東京大学や理化学研究所の研究不正が次々と問題となった。研究費についても国立がん研究センターで発覚した不正経理が波紋を広げている。健康・医療分野が成長戦略の一つとして位置付けられているにもかかわらず、その足元の日本の医学研究に何が起っているのか。世界的にも大きな注目が集まる研究不正について、その解決策の糸口を探ってみたい。         参考文献
1.Tanimoto T, Kami M, Shibuya K. Misconduct: Japan to learn from biomedical cases. Nature 2014;512:371.
2.Tanimoto T, Kami M, Shibuya K. Research misconduct and scientific integrity: a call for a global forum. Lancet 2013;382:940.
3.Normile D. Faulty drug trials tarnish Japan’s clinical research. Science 2014;345:6192.

●メディアから見た研究不正の癒着構造
今岡洋史

メディアの中で医療分野の研究不正に関心が高まっている。発端は降圧剤「ディオバン」の臨床研究の不正疑惑で、この事件をきっかけに、弊社の日刊紙「RISFAX」でも企業が関わる研究の不正疑惑を取り上げてきた。
ディオバン事件では、①研究結果を自社製品の宣伝に使いたい企業②業績や研究費を得たい研究者③広告収入を得たい医学雑誌④評価や謝礼が欲しい学会幹部の4者の思惑が一致したことで、不正が起きやすい状況が生まれた。4者を結びつけたのが、製薬企業から流れる「カネ」であり、いわば臨床研究というEBMを利用したビジネスモデルが構造的にあった。メディアからすれば、これは「癒着」で、他にも事例がないか疑うことになる。
似たような構造は、武田薬品が関わった臨床研究「CASE?J」でも見られたため、昨年12月から報道を始めた。研究結果の不正は明らかではないが、企業の関与や研究結果の宣伝の仕方に問題が出ている。また、東京大学が実施した臨床研究「SIGN」では、研究への協力そのものが、ノバルティス製品の処方の切り替えに使われていた。同じく東大が行うアルツハイマー病の臨床研究「J?ADNI」も、エーザイの社員が関わっており、やはり企業との関係が不正を疑われる要因となっている。
このような臨床研究に関わる疑惑をなくす解決策としては、まず企業との利益相反管理のルールを見直す必要があり、すでに日本製薬工業協会が金銭・労務の支援を基本的に契約とする方針を示している。また厚生労働省でも、臨床研究に関する法整備が検討会で進んでおり、①GCPの適用②データの保存③ペナルティーの導入などが議論されている。
ただ、それでも急成長する分野では、研究体制や制度が追いつかず、今後も不正が行われる恐れがある。疑惑を持たれない体制を作るにはどうしたらよいか。メディアの立場から議論できればと思う。

●学者を広告塔にした製薬業界の“発明”
栗原資英

2013年5月、東京駅の前にある巨大ビルで開催された臨床高血圧フォーラム。全国各地の大学病院から、高血圧の重鎮とされる教授が集っていた。当時は、ノバルティスファーマの社員が関わった臨床研究不正問題がクローズアップされはじめていた時期。主催する日本高血圧学会の理事たちは、ノバ社の高血圧薬「バルサルタン」をメディアでこれでもかと持ち上げていた面々で、“クリーン”な顔を探すほうが大変だった。私は東京大学・循環器内科学教授の小室一成氏に直接話を聞くべく、会場内を訪れていた。小室氏の直撃取材を終えた矢先、大ホールのスクリーンに名前が映し出され、アナウンスで事務局に呼び出しを食らわされた。職員室に呼び出された子供のようで失笑したが、業界全体で“大先生”を守ろうとする高血圧業界の暗部を見た気がした。一年半を及ぶ取材で実感したのは、アカデミズムが製薬業界の手のひらで躍らされ、傀儡になっていた実態だった。講演料や奨学寄付金に目がくらみ、製薬業者のいいなりになって薬効を宣伝した学者たち。当初は京都府立医大だけの問題に限定されそうだったが、FRIDAYの取材で千葉大学も臨床不正の内部調査を開始した。他のメディアがあまりに深刻なこの問題に取り組まなかったのは、製薬会社から入ってくる広告費が足枷になっていたからだろう。バルサルタンを巡る事件では、ノバ社の元社員一人が逮捕されたが、医療用医薬品国内一の売り上げを誇るブロックバスターに、現場の社員一人で下駄を履かせられるわけはない。プロモーションに携わった当時の上層部は、本当に何も知らなかったのだろうか。また、当時、メディアに頻繁に登場し、広告記事でバルサルタンを持ち上げた医師たちは、どう責任を取るのか。医師と製薬業界、メディアがニセの降圧剤を三位一体で持ち上げたシステムによって、国民の保険料が奪われ、製薬業者が潤った。再発防止のために何が出来るのか。

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