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Vol.299 「街づくりのための循環送迎車輌〜ふくしま復興塾での取組み〜」

医療ガバナンス学会 (2014年12月26日 06:00)


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島田眼科医院 院長
島田 頼於奈

2014年12月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp


この日本では震災に加え、国際問題、異常気象、そして少子高齢化と次々と問題が出てきています。特に少子高齢化問題は、今後必ず悪化する問題です。都会では比較的若い人も多く田舎に両親を残してきている人も多いので実感し難いのかもしれませんが、むしろ人口の多い都会こそ深刻な問題となる可能性すらあります。震災で少子高齢化問題に拍車のかかったこの福島は、現時点では世界一問題が深刻化している地域だと考えています。この福島で少子高齢化問題を考えることは日本でそして世界での少子高齢化問題解決の糸口となるかもしれません。

そこで2014年5月より、ふくしま復興塾(http://fukushima-fj.com/)という塾に参加しています。この塾は、福島に関わる20~39歳の若者を対象とした、原発災害の発生により顕在化した課題を解決する事業の立ち上げと福島復興に取り組む志を持ったリーダー育成プロジェクトです。福島に縁のある経営者を中心とする発起人の呼びかけのもと、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター内に事務局を設置し、月一回程度の合宿やフィールドワークを含む、課題解決の事業を実現するための講義を受けます。民間領域コースと公共領域コースとに分かれ、民間領域コースは主に起業を目指す若者向けですが、自分は「超少子高齢化社会における新しい社会の構築」というテーマのもと、公共領域コースへ参加しています。自分の事業案は一見ありきたりな、市街地の様々な医療機関を繋ぐ循環型の患者送迎車輌を運行する事ですが色々な意味を持った送迎車輌を目指しています。

その背景ですが、少子高齢化、核家族化により地域の交流は減少しており、そこに震災が拍車をかけました。地域の独居や仮設住宅へ入居している高齢者は引きこもりがちになり運動不足から転倒のリスクや寝たきりのリスクも高まってきていると思います。核家族化が進行し、また家族が同居していたとしても日中は仕事に出ていて不在であり、日永一日テレビを見て過ごすという高齢者も少なくありません。日常の通院手段が確保し難いため病状が進行してから医療機関を受診する高齢者も多く、また自分で車を運転して来院する高齢者も多いですが一生運転を続けられるはずはなく、また高齢者による自動車事故も増えています。勿論、公共の交通機関であるバスやタクシーはありますが利便性や経済性から利用しない高齢者も多く、また全国的にはコンパクトシティなどの構想もありますが、地方は広大で住居は点在しており高齢者は孤立しがちです。超少子高齢化の進行が確実視される中、地方の生き残れる道は高齢者だけでも維持できる社会の構築であり、高齢者の高齢者による高齢者のための街づくりが必要であると考えます。

具体的な事業計画ですが、普通免許対応可能な最大10人乗りの車両を調達し、運転手には高齢者再雇用の観点から可能な限りOB世代から起用します。市街地の医療機関だけではなく駅や市役所など公共施設へのアクセスも図り、30~60分毎に循環できるコースを設定します。乗車は道路交通事情も鑑み指定医療機関に限りますが降車は問いません。可能な限りdoor to doorを実現し利用者の利便性を図る事が利用者の拡大に繋がると思います。独自に送迎車輌を運行している医療機関にはハブとして利用させて頂き、送迎に広がりをもたせたいと考えています。高齢者は午前中の通院を好むため、循環送迎は平日の9:00から13:00までとします。午後は予約制で曜日を決め、15kmほど離れた医療機関の少ない周辺地域から市街地への通院希望者送迎を行います。また、現在月2回50kmほど離れた山間の診療所へ眼科診療に行っており、その道中には診療所の無い地域がたくさんあります。そこで、それらの地域における通院希望者を通勤ついでにピックアップし診療所まで送迎しようかとも考えています。

本題に戻りますが本事業の先進性は一台の送迎車を皆でシェアし市街地の医療機関を循環させることにあります。自院のみで利用しても走らせる費用は必ず一定額発生するのだから、皆に無料で開放してしまおうという発想です。またオンデマンドバスなどと違って予約システムなどもないので利用しやすいと考えています。

その期待効果としては、高齢者に外出するキッカケを日常的に提供する事で、引きこもりや寝たきり、認知症を少なくする事による健康寿命の延長、疾病の早期発見早期治療による重症化の予防、それらに伴う医療費削減などです。また、個人医療機関を循環する事により開業医を総合病院化し基幹病院の負担を軽減する効果を期待し、近所の診療所間の本当の意味での医療連携を構築し勤務医不足の一助を図りたいとも考えています。さらに、医療機関のみならず、送迎車輌を独自運行している様々な事業者が本システムに賛同し追従する事により、特別な投資を行わずに社会全体として高齢者の移動を支えるシステムになり得ると考えます。長期的目標としては、様々な地区で同様の試みがなされ、この小さな輪が少子高齢化に悩む世界中の地域に広がることを期待します。その他、当院の送迎車輌には車椅子設置場所が2か所あるため、そこに眼科機器を搭載し、将来的に法律が許せばビジョンバン(http://www.visionvan.jp/)のような移動診療車として僻地眼科医療に貢献したいとの夢も持っています。さらに、ストレッチャーも搭載できることから大規模災害など有事の際の医療援助車輌として利用したいとも考えています。

未曾有の震災から三年が経ちました。震災以前、福島は田舎だから仕方がないと言い訳をして学ばず、行動せず、漫然とその状況を受け入れていました。そこにあの震災が襲いました。今度は震災を言い訳にするのでしょうか。否、福島は学ばねばなりません。あの震災で色々な事に気付かされた人も多いと思います。この学ぶ機会に感謝し、将来に向けて福島にとって、そして世界にとって行動できる人材に少しでもなれるよう努力していきたいと思います。

http://expres.umin.jp/mric/mric_vol297photo.pdf

平成8年金沢医科大学医学部入学
平成16年順天堂静岡病院眼科助手、平成18年順天堂大学医学部附属順天堂医院小児眼科助手を経て平成21年より島田眼科医院院長(現職)

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