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臨時 vol 136 「放射線医学見学ツアー報告記」

医療ガバナンス学会 (2008年9月29日 11:43)


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東京大学医学部3年生
森田知宏
 


 8/13-14の二日間、放射線医学見学ツアーが開催されました。
私は東京大学医学部3年の森田知宏と申します。今回夏休みを利用してこのツアーを企画しました。
放射線医学と聞いて皆さん何を思い浮かべるでしょう。PET、CT・・・名前だけは知っているものの実態はよく知らない、といった方が多いのではないでしょうか。実はがんの治療法としても注目されており、今後も更なる発展が見込まれる分野です。そのような放射線医学の現状や可能性を探ろう、というコンセプトでこのツアーは実行されました。8大学から22人が参加し、下は2年生、上は6年生までと幅広い学年層で、なかには工学部や関西からの参加もありました。
このツアーはもともと、国立がんセンター中央病院長の土屋了介先生が放射線医学研究所の村山秀雄先生の講演をお聞きになった際に非常に感銘を受けたことに始まります。土屋先生は未来の医療を築くのは学生であるとの視点から、学生との交流を非常に重視なさっている方です。「こんな面白い話があるのならぜひ学生に聞いてもらおう」ということで、要職で御多忙の身ながらこのような機会を作ってくださいました。
1日目は国立がんセンター見学です。
午前中は国立がんセンターの国際会議場にて講義が行われました。
国立がんセンター中央病院放射線診断部長の荒井保明先生からは、IVR(Interventional Radiology)の魅力についてのお話がありました。IVRとは、CT等で体の内部を見ながらカテーテルを用いて治療を行う新しい手法です。大掛かりな手術をせず、患者さんの負担を軽減できるIVRはとても夢のような話でしたし、エビデンスがあまりなく、自分たちのやることが最先端になるというのは非常に魅力的でした。放射線治療部長の伊丹純先生からは、放射線治療の現場について講義が行われました。放射線治療の適応疾患は知っていてもそれが実際にどのように治療されているのかは、学校の講義ではわかりません。様々な放射線治療の実際について、症例写真を何枚も使ってわかりやすく説明してくださり、放射線治療の威力を感じることができました。質疑応答では、講義内容や医療現場について多数の質問が飛びます。集まったばかりで緊張の色が抜けない参加者に対し、先生方はユーモアを交えた返答をしてくださりました。
講義が終わると昼食です。病院側の計らいで、昼食は放射線科のレジデントの先生方と一緒に頂けることになりました。年齢も近いレジデントの先生方と楽しく昼食を頂きながら、「レジデント部屋は前の住人の物は置きっぱなしなので、それによって住みやすさが異なる」など、普段では聞けないレジデントの先生方の本音をうかがうことができました。
いよいよ病棟見学です。全員白衣に着替えます。CT、PET、MRI等の大掛かりな機器それぞれについて丁寧な説明がされます。実際に患者さんに使用している場面にも立ち会えました。患者さんにPET用薬剤を投与しているところの見学や、CT体験などもさせていただきました。私を含め病院見学の経験がほとんどない学生も多く、病院内にしては少し騒ぎすぎてしまった気もしますが、それほど楽しい内容でした。[写真1, 2]
国立がんセンターの見学後、船橋の宿舎まで移動し、放射線医学総合研究所イメージング物理研究チーム、チームリーダーの村山秀雄先生からPETについての講義がありました。村山先生は物理学科出身です。本物の物理の話なので難しい話になるかなあ、と正直なところ不安でした。しかし先生のお話は論理的でわかりやすく、PETの解像度と感度をいかに両立させるかについて自分なりに理解することができました。また村山先生の要望もあり、講義中は自由に質問が飛び交い、そのつど先生が答えるというオープンな雰囲気で楽しめました。
講義後は先生方も交えて打ち上げです。初対面同士という参加者も多いなか、がんセンター見学等を通じて徐々に打ち解けてきたようで、打ち上げ後には宿舎内で二次会も行われました。二次会には土屋先生も参加してくださりました。土屋先生を囲んでお話を聞いていたのですが、酔いも手伝い学生側からも多くの意見が出て、医療制度や医学教育、”一流”の条件など、様々な内容について活発な議論が展開されました。最後に医療者としての心構えを説かれて土屋先生はお休みになられました。その後も学生だけで4時頃まででしょうか、オリンピックを見たりトランプをしたりしていました。
2日目は放射線医学研究所見学(以下放医研)です。
現地についてまずその敷地の大きさに驚きました。13.5ヘクタールもあるそうです。
放医研の概略についての簡単なビデオを見て午前の日程は終了でした。朝方はさすがに疲れた顔の学生もいましたが、昼休みにはようやく疲れもとれたようで、にぎやかな昼食となりました。
午後は放医研重粒子医科学センター長の辻井博彦先生から、重粒子線治療についての講義がありました。重粒子線治療とは、炭素原子などの重粒子と呼ばれるものをHIMACという機械で加速して、がんに照射する放射線治療の一種で、従来の放射線治療よりも副作用が小さいとして注目を集めている治療法です。
そしていよいよ施設見学です。重粒子線棟の治療室では内部が向き出しの重粒子線放射装置を前に、詳しい説明を受けました。そしてHIMAC。その大きさに驚きました。炭素原子を光速の80%にまで加速させるという直径42m、円周130mの代物です。かなりの迫力がありました。意外だったのですが、一般の見学者の方も大勢いらっしゃいました。
見学後は質疑応答時間でした。最後ということもあり、講義や見学等で溜まっていた質問が一気に噴き出し、かなりの質問が出ました。内容も「重粒子線が正常細胞に与える影響はどうなのか」といった医学的な内容から、工学的・物理的さらには「HIMACを維持するにはどのくらいの費用がかかるのか」といった経済的な内容まで多岐にわたりました。先ほどすれ違った一般の見学者について質問すると、多くはがん保険会社の方だということがわかりました。被保険者ががん患者になったときに最先端の治療を提供できるよう、いろいろと勉強するのだそ
うです。
放医研を出発後、東京駅までバスで移動して解散となり、ツアーの全日程が終了しました。解散後には日本橋で打ち上げが行われました。
2日間とも天候に恵まれ、本当に楽しく、気持ちよく見学することができました。私自身、放射線医学についての知識は多くなかったのですが、見学したおかげで、放射線医学が非常に魅力的で、これから盛り上げる分野なんだなあ、という印象を受けました。
今回は初めての試みということもあり、すべて手探り状態だったのですが、医用原子力技術研究振興財団の方々の全面的なご協力のもと、非常に内容の充実したツアーになりました。参加者の学生からも、「またこのような企画があったら参加したい」「放射線医学に興味を持つことが出来た」「充実した2日間だった」など、多くの反響がありました。来年に活かしたいと思います。
最後になりましたが、このツアーを実行するにあたってご協力いただきました医用原子力技術研究振興財団の皆様、そして参加者の皆様、本当にありがとうございました。

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