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臨時 vol 109 「座して待つか、ジェネリック薬害訴訟」

医療ガバナンス学会 (2008年8月13日 12:07)


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                   西銀座診療所院長
                   隈部 時雄

財政主導による強力な医療費削減政策の実行のため、国民の生命・健康を犠牲にして、ジェネリック薬品の推奨が行われています。さて、本当に安心してこの後発薬品を使うことができるのでしょうか。
厚労省の医薬品の製造認可の項目は、先発品に比べて後発品はほとんどノーチェックといっていいほどずさんです。例えば、どんな不純物が入っているのかすら不明、まして先発品と後発品の著しい品質の違いや薬効の違いなど、全く不明、という現状です。このような有様でもなお後発品を推奨するのでしょうか。普通の医師ならば本来、怖くて投薬はできません。しかし厚労省の推奨政策にのっとって健康保険組合が後発品キャンペーンを行っているので、医師は仕方なく後発品も投薬せざるをえないというのが実情です。
医師同士の経験談として、都心部ではもともと先発品を中心に処方していたので、後発品にチェンジした時の患者さんからの率直な声を聞くことができます。「元の薬に戻してください」という声が多数、寄せられています。効果に違いを感じている、早く効き目がなくなってしまう、という実感が大多数です。服用している患者さんが実際に感じていることですから、これほど確かなことはありません。
ただ何より問題なのは、自覚症状では判らない重大な影響です。例えば、もっともリスクが高いと思われるケースのひとつが、一日一回服用の高血圧の薬です。患者さんの自覚症状としては現れませんが、早朝には高血圧になっている可能性があります。つまり後発品の場合、その製造技術レベルの問題で、薬効が24時間持続せずに15時間程度で消失してしまっているものが多々あると推測されるから
です。
そう推測する根拠は何より、先述の患者さんの訴えです。その患者さんはアレルギー症状を抑える薬を服用しているのですが、明らかに薬効の違い、特に持続時間の違いが出ているといいます。これが高血圧の患者さんで、後発薬品を一日一回服用していたならどうでしょうか。もし早朝に薬効が切れて高血圧となり、脳卒中を起こした場合、その責任はどうなるのでしょう。後発薬品を処方した医師の責任か、製造したメーカーの責任か、認可した厚労省の責任か、はたまた推奨した健康保険組合の責任か……いずれにしても不幸なのは患者さんです。
ジェネリック薬害訴訟、これは薬品行政のあり方、国家的な構造上の問題に起因することです。これだけ厚労行政の問題・責任が問われている昨今、なぜこの後発薬品の医学的な品質管理がここまでズサンなのか、先進諸外国の基準と著しく異なるのか、非常に不思議です。後発薬品の製造許可に問題があることがはっきりとしているのに、厚労省、医学会、医師会、マスコミともに知らん顔。どうも納得がいきません。この間にも後発薬品の被害を受けている患者さんが多数いるはずです。現状放置していることが信じられません。
厚労省も、医師が安心して処方できる後発薬品だけを「ジェネリック薬品」として認可してほしいものです。薬効が不明、副作用も不明、どんな不純物が混入しているのかも不明、というような後発薬品は、そもそも薬として販売を認めるわけにはいきません。座して待つか、ジェネリック薬害訴訟――今からでも遅くはありません。至急対策を。
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