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臨時 vol 104 『安心と希望の医療確保ビジョン』具体化に関する検討会 第2回会議傍聴記

医療ガバナンス学会 (2009年8月1日 12:14)


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  ~ めちゃくちゃ面白いのだが、結論は出るのだろうか ~
               ロハス・メディカル発行人 川口恭

 討論というものは、かくも面白いものかと思う。予定調和などあったものではない。だが、検討会の趣旨を思い出すと、果たして期限までに、ちゃんとまとまるのか心配になる。それくらいパワフルな委員が揃っていると思う。委員名簿は、( http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0717-4.html )をご参照いただきたい。早速ご報告する。
18時5分開始。
舛添
 「全委員のご出席ありがとうございます。また、こんなにたくさんの資料もありがとうございます。これだけで2日間のシンポジウムを持てるくらいの分量だと思う。こういう時は避暑も兼ねて1泊2日のブレストもいいかなと思う。
 完全に白紙から新しいものを作り上げていく時には、既成概念から離れた方がいい。たとえば医師の教育の話で言うと、教育の名の下に関連病院へ派遣しているわけで、私は労働大臣でもあるので、教育の一環として働かせているとは言うものの、それは日雇い派遣とは言わないまでも、労働の問題から見るといいのだろうかと思ってしまう。そういった常識、医療現場じゃない所からいいのかと言われて答えられるのかは大事だと思う。一方で基本的に現場重視だから、たとえば臨床研修でも現場の先生方がこう変えるんだと自分たちでルールを決めて規制するのはいいと思う。しかし政府が全国一律に旗振ってというのはどうかなと思う。
 それからコメディカルについても議論しないと、医師の数ばかりで若干そちらが忘れられても困る。スキルミックスという時に看護師が増えなくてできるのか。そういう立場からも発言いただきたい。今日は丹生さんが見えているが、お医者さんじゃない立場から見て不思議だなと思うことに答えられないようだと、前に進まないと思うので、あらかじめ問題提起しておきたい」
 ここで、事務局が前回の宿題になっていた諸々の数値に関して説明。が、前回の宿題が多すぎたのか、はたまた事務局の巧妙な妨害工作か、資料説明だけで18時37分までかかってしまい、討論時間が1時間なくなってしまった。たまりかねた岡井委員が途中で「総論をしゃべられるとディスカッションできなくなっちゃう」と苦情を述べた。
 ただし、委員の側もさすがにすぐ学習する。この日の会合で、事務局に対して「資料を出せ」という発言は一回も出なかった。凄まじく多い資料の数々は厚労省がアップするだろうから、それを後日、見てほしい。
 イザ討論開始。口火を切ったのは土屋委員。事前に事務局に資料を届けていて、当日にも資料と提言を出した。一種の奇襲か。
 「前回、偏在のことについて述べたので、追加で資料を出させていただいた。この資料は、現在の診療科ごとの医師数を前提に、その割合を維持するためには各科に何人の後期研修医が入ればよいのか試算したもの。研修医の数が多いか少ないか議論するには、これに則って判断しないと意味がない。実際に診療にあたっている数をどう維持するのか、あるいはどう直すのか。
 そこで後期研修医の適正配置に関する研究班設置の提案を行いたい。研修医をどう診療科に割り振るのかは専門医をどのように育成するのかと不可分であり、専門医制度を認証するような第三者期間に関しては日本学術会議からも日本医師会からも設置が要望されている。研修医の数を適正に割り振るような第三者機関が必要であるということは医師の総意であると考えてよかろう。研究班を早急に立ち上げ、ぜひ年度内に結論を得て、来年早々にも新しい制度が立ち上がるよう努力すべきでないか。でないと、いつまで経っても数字に基づく根拠ある議論ができない。
 それが機能するまでの当面の対策も必要で、有効なインセンティブの実行に尽きるだろう。当直料や待機料のように払うべきものはきちんと払う、そこをまず是正して離職防止に努め、その間に研修医を割り振る制度の整備をするという順番になるだろう」
大臣が即座に反応する。
 「基本的に現場が自発的に作りたいという話であろうから、おやりいたいだいたらいいと思う。それに対してどう支援したらいいのか教えてほしい。法的に何らかのことが必要なのか詰めてみたい。
 ただ働きのようなことについては、医政局長、せっかく労働省と一緒になっているのだから何らかの形で旧労働省のチームと組んで実態調査をやってみたい」
 後から振り返ると、一般メディアが見出しに取れそうな一番大きな「成果」は、ここだったと思う。ハッキリ念押しはしていないが、研究班は作られるのだろう。
土屋
 「もう一つ付け加えたい。厚労省は、事情を大学の先生方に聴いた聴いたというけれど、私の出した資料、週刊朝日の手術の件数ランキングを見ると、たとえば心臓手術では、榊原記念病院、国立循環器病センター、小倉記念病院と来て4位にようやく東京女子医大病院、小川先生の順天堂も8位に入っているけれど、どちらも市中病院化した大学病院であり、医療の実態がどのようになっているかは一般の総合病院に聴いていただかないと実態を反映せず、そのような調査に基づいて指示されても従えない。今や日本の医療を支えているのは大学病院ではなく市中病院なのだ。研修医の配置数についても実態を踏まえて調査してもらわないと承服できない。
 それから臨床研修で大学病院に研修医が行かなくなったということを言う人がいるけれど、慶應義塾医学部新聞を見ると慶應大学、医政局長の母校であり、私の母校でもあるが、では今年度3年目の後期研修医を239人受け入れたという。あそこは1000ベッドに少し欠ける。後期研修医4年間、同じ人数を採ったら1ベッドあたり1人の後期研修医ということになり、そんなもので医師が経験を積めるはずがない。そう医学部長に文句を言ったら、後半2年は外の関連病院に派遣するから大丈夫なんだと言った。何のことはない以前の医局のような人材斡旋業が復活している。同じように東大も後期研修医を300人採っている。だから、この二つの大学からは臨床研修制度について文句が出てないはずだ。各大学に後期研修医を確保するための予算が分配されているけれど、このような大学に予算を出すのは、人材斡旋業に補助金を出すようなものだということを、よく見ていただきたい。
 ついでに資料の最後には1年前のことを蒸し返すようだが、厚生省ががんセンターの医師を根室の一般消化器外科に派遣するように行って来て、そういう場所には総合的なバックグラウンドを持った医師が行かないと役に立たない、がんばっかり切ってきた医師では役に立たないということで私が断ったということを面白おかしく書いたAERAの記事も付けた」
 あっと驚くような話なので、もう少し突っ込んで議論してもらいたいと思うのだが、この検討会は押しの強い人が多い。直後に別のワールドが展開される。
嘉山
 「現時点で、何らかの方針を決める必要がある。医師の数についてだが、事務局の説明というのは実は若い医師がハイリスクローリターンな診療科を避けているということを言っているに過ぎない。全体として医師の数が足りないというだけだ。全国医学部長会議でも調査しているが大幅増員が必要であるということは一致している。北海道地区は倍増と言っている。サプライとデマンドの両方を考えると、つまり大臣も先ほど言われたような欧米なみの労働条件にすることを考えると、倍増して11年かかる。そのために必要な予算は粗く弾いて2000億円から2400億円くらいだろう。国民が受ける医療の内容を維持しつつ、医師の労働条件を整備すると、それぐらい必要だ。もちろんこれから中身を詰める必要はあるし、地方へ行かせる仕組みも考えないといけないが、大きなことでは、その位必要だと全国医学部長会議でも意見が出ている」
吉村
 「土屋先生の仰ったようにセンター病院で臨床数が多いのは確かだが、地域の問題を考えると首都圏のセンター病院が多いのでないか。日本全体のことを考えないといけないのだろう。
 ここではその前に専門医のことを話したい。資料で、専門医制評価認定機構で議論していることの現状を示した。専門医の認定というのは、学会に対する外見基準で認定されており、その先は各学会に任されている。この結果、必ずしも質が担保されていないし量は全くコントロールされていない。権限ある認定機構があると、質と共に量のコントロールもできるだろうということ。それから専門医の中にはスタンダードな診療分野のジェネラリスト的な位置づけのものと、多くの方がイメージとして持っている特定の狭い分野の専門医と2種類あり、それが混同されている。2つを明確に分ける必要がある。それと同時に専門医に対して何らかのインセンティブも必要でないか。
 ここから先はまだ揉んでいるところだが、まず専門医の意義というのは、医師が自らそのレベルを社会に開示できること、患者が医師の専門性を判断できること、我が国の医療レベルを高めること、医師の役割分担を定め将来の医療制度の在り方に役立てることだと考える。そして、専門医の認定は学術団体が行うとしても、第三者組織による保証が必要であろう。
 現状の専門医資格を二つに分けて、基本診療科ごとに広く診療の窓口になるべき基本専門医資格を設けてはどうか。全部の専門医を一緒に考えちゃうとうまくいかない。参考までに米国では24の基本領域のどれかの専門医資格を取得して初めてドクターフィーをもらえる。その育成にはメディケアから1人あたり年間約1千万円が支出されている。わが国でも、まずこれと同様の制度を充実させ、基本的専門医資格を取るようにしてはどうか。その後でさらに細かい特殊領域の専門医を取得するという流れだ。その際に各学会が勝手にやっても全体を見ないといけないので、どこか全体をコントロールする所がないといけない」
嘉山
 「その前に数をちゃんと決めてから偏在へと持っていかないと、話が散漫になるんじゃないか」
高久
 「偏在が一番の問題であることは確か。放っておくと医師を増やしても格差が拡大するだけになりかねない。そこで土屋委員の挙げた米国のレジデンシー制度を一つのモデルに後期研修医制度を制度化するという意見だが、その場合かなり大きな問題になるのは、数を決めてしまうと標榜の自由と真向から対立するので慎重にやらないと非常に混乱しかねない。私個人は米国のレジデンシー制をモデルにすることに賛成だが、そもそも基本領域も専門領域も全部専門医というところで混乱があって、はじめは認定医と専門医だったのに、専門医を広告できることになったら全部専門医になってしまったという過去の経緯がある。後期研修医の数をどこかで決めないといけないとするなら、それはどこでどうやってコントロールするのか議論する必要がある」
嘉山
 「なぜ偏在が起きたのかと言えば、それは絶対数が少ないからに尽きる。昔だったら、あんなの医療じゃないと言っていたようなある科に医師が集まっているという現実があるけれど、それはその科がローリスクハイリターンだから。米国では数をコントロールすると同時にもう一つ診療科ごとのインセンティブもキッチリつけている。リスクの高い医療を行えば報酬も高い、そうすれば自然と希望者が集まってくる」
高久
 「米国のレジデンシー制の場合、家庭医や内科を希望するとほとんど入れる、しかし皮膚科や眼科は60%くらいしか入れない。つまりいい成績でないと希望の科に行けないので、学生も必死になって勉強するということがある。日本の場合、そこは医師国家試験だけだと、ちょっと違うかもしれない。それから米国の脳外科や心臓外科の医師の報酬が高いのは、その分訴訟費用に備えなければならないところもあることをご理解いただきたい」
海野
 「米国の場合、レジデンシーの総枠より医学部の卒業生がだいぶ少ない。その分、外国の医学部の卒業生が輸入されている。日本で米国と同様の制度にすると、もの凄い厳しい選択をしなければならないことになり、職業選択の自由との兼ね合いもあって、よく考えないといけない」
土屋
 「仰る通り、米国は、かなり外国から入っている。しかし、それと日本の学生の希望が適わないのとは別の話で、医者以外では経済的な振り分けによって希望の職業に就けないというのは当たり前の話。医者だけが手を上げたら希望の職に就けるというのでは世間は通らない。まったく競争がないなんて、一般社会から見たら異常だ。ある程度は厳しさを持ってないと理解を得られない」
舛添
 「最初に他の世界から見て異常と思うことと申し上げたのが、まさにそういうこと。土屋先生提案の委員会を設立するとして、その委員会で吉村先生の仰ったようなことはご議論いただけるのだろうか。競争が働くようなシステムへ変えるとして、その場合制度のどこを変えないといけないのだろうか、法律を変えるなら国会を通さないといけないし、他にあるなら、具体化のために何が必要なのか方向付けしていただけるとありがたい」
土屋
 「第三者機関には権限を持たせないとコントロールできない。米国の場合、5団体の代表者によって構成されている。専門医、病院長、医師会、医学部長、学会の5団体。日本の場合、学会の代表ばかりが話をしている。学会の理事の90%は大学教授だ。それから、先ほどの吉村先生の首都圏の病院ばかりじゃないかとの指摘は、改めて反論するけれど、表を見ていただければ、首都圏以外の病院がこんなに入っている。地方にもしっかりした市中病院はたくさんある」
小川
 「総合医に関して一般の方が誤解するといけないので述べておくが、総合医も立派な専門医である。
 それから科の偏在について米英と同様には解決できないと思う。というのが、彼らには英語文化圏というものがあり、本国が危機に瀕すると移民がどんどん駆けつけ、シンドイところはやってくれるというのがある。日本でそれは望めない。である以上、インセンティブを与えるのが即効的であろう。苛酷で危険で訴訟リスクにさらされているような診療科に対して特別手当や地域手当を出すという考え方が即効性があると思う」
海野
 「今どのような偏在が進行中かということで事務局に資料を出していただいた。臨床研修の2年間を経た後、外科系の学会新規入会者は概ね2割減った。今まさに偏在が進行しているということをご理解いただかないといけない」
嘉山
 「ハイリスクローリターンの診療科から逃げている。それをどうするか。それには、前回も述べたけれど、たとえ少ない金額であっても認めてあげることなんだと思う。社会が何も認めず他の診療科と同じ扱いをしていれば、偏在は直らない。大臣の仰る、ここを変えてくれというのは、医療費の仕組みだ。医師の技術料やリスクがほとんど評価されず、モノに対してしか医療費が上がってこない」
舛添
 「この春の改定でハイリスク分娩加算をしたが、ああいうのは」
嘉山
 「あれはホスピタルに行くものなので、個人に行くような仕組みにならないか」
高久
 「それは病院長がそのように判断すればよいのでないか」
嘉山
 「しかし医師会は、医師の技術料という考え方を認めてくれない」
舛添
 「病院長が払ってくれる人ならいいけれど、そうでない場合に根本から改めて1人ひとりに行く形にできるものだろうか。分娩手当のような分配のしかたに直接的な財政支援をやるのかどうか。もちろん現場が一番求めているのはそこだと思うので、それはやろうかと思っているのだが。実効あるやり方にするにはどうしたらよいのか」
和田
 「外部の人間ではあるが、現場の方々と話をしている経験からすると、経済的インセンティブは必要とは思うが、それが現場の一番望んでいることというのは違うのでないか。彼らを取り巻く訴訟リスクや労働環境にも手当てをしないと限界がある」
岡井
 「まさに同じ事を言おうと思っていた。労働条件の方が問題。医師が少ないから労働条件が悪くなり、それを見て新しい人が入ってこなくなるという悪循環に陥っている。この悪循環を止めるには、どこかで強制的にやめさせないといけない。労働大臣の立場でやめさせてもらえないか。当直明けの通常勤務のようなことをさせている病院にはマイナスインセンティブが働くようにして、逆に当直明けは帰れるようにしたらプラスインセンティブが働くような。そういうことになれば病院としても労働条件を守るために医師を集めなければいけなくなり、結果として統廃合も進むかもしれない。当直明けは帰れるということになれば、当直の多い産科は一番休みの多い診療科になって、大逆転で希望者が押し寄せるということだって考えられる」
高久
 「医療安全の立場から言っても、航空業界から医療界に入ってきた人が言うには、当直明け後の通常勤務は例えるならロンドンから東京に飛んできて、そのままワシントンに飛ぶようなもので、危険極まりなく信じられないとのことだった。お金と同時に、病院を辞めていっている人は自分や家族のQOLを求めているので、そこも十分に考える必要がある。とはいえ、現実的にやると、まずはお金でないと難しいかもしれない」
土屋
 「コメディカルの充実がない限り医師の労働環境改善もない。昨年、医政局長通知で医師は本来業務に専念せよというのが来たけれど、ではそのあふれた業務を誰にやらせるのかと言っても人がいない。外注しようにも、その費用もない。経済的保証がないのに通知を出されても困る」
高久
 「メディカルクラークは特定機能病院には認められたと思うが、はい大熊委員」
大熊
 「当直について話が出たので、6月28日に行われた『あたなを診る医師がいなくなる』というシンポジウムで2つの提言がなされたので読み上げる。(略=どこかに出ているだろうと思ってメモを取らなかったのだが、見つけられなかった。反省)。このようにハッキリと提言されている。決めてしまえば、それまで
のことだ」
嘉山
 「すべて医師の絶対数が足りないことに起因している。厚労省推計のままだと充足するのに22年かかる。その時にはこの中の誰も生きてないだろうから、そんな無責任なことでは後輩に申し訳ない。1大学で年に50人ずつ増せば11年で充足する。その果実は患者さんにも帰る。そのために2000億円から2400億円くらいかかる。東京大学の清水医学部長に尋ねたら、基礎とか法医とかの不足もあるので大増員が必要だとのことだった。医師数倍増というのを、この委員会として言えればと思うのだが」
高久
 「倍増というのは」
嘉山
 「1大学あたりの定員を100人から50人増やすということ。だから1.5倍か。前回の私の資料に出してある」
和田
 「大学にいる者としての素朴な疑問なのだが、定員が増えれば教える方の負担も大きくなる。その時に何の手当もしなければ、今度は教員の勤務が過酷になって嘉山先生や小川先生が逃げ出すというようなことになりかねないのでないか。その辺りのことはどう考えているのか」
嘉山
 「山形大では既にいろいろと取り組んでいる。座学は現状のままでも教室に詰め込めばいい。問題は実習だが、それは大学病院と市中病院とをリンクする形で十分に可能だ」
大熊
 「今ある医学部の定員を1割から2割増やすというのは難しいかもしれないが、欧米ではいい病院に医学部がくっついているものなので、今ある優れた病院のいい医師を教授にして医学部を設けてはどうか。
 他の国では大学4年を出てから、その後で医学部へ来るとか、それから大学評価機構で高知医大とか群馬大とか行った経験から、社会人入学の学生たちの人間性や学ぶ態度が素晴らしく、それがストレートで入ってきた学生にも良い影響を与えているという。受験者の幅を増やすには医学部の枠を広げることも必要でないか。今のところ形だけの臨床教授がほとんどなのを、本格的な臨床教授にするような。
 家庭医の格が低いというような意見があったので申し上げておくと、寝たきり老人のいない国では家庭医は専門医と同等の収入や尊敬を得ている。鹿児島の在宅ケアネットワークのように、日本でもよい意味での家庭医を模索する取り組みが始まっているのでご紹介したい」
岡井
 「医師数を増やそうという方向は一致しているとして、その時に地域格差のことも考えてもらわないといけない。地域の医師を増やすには、その出身者を入れるのが一番効果があるという研究結果があるようだ。奨学金を出すより、出身者を入学させた方がよいのでないか」
嘉山
 「山形では、自治医大の卒業生は丁稚奉公が終わった後、山形に残っていない」
岡井(?)
 「地域性があるのかもしれない。山形では大事にしてないんじゃないか」
土屋
 「家庭医と専門医が上下の関係にないというのは、大熊委員の仰る通り。ただ、定員を増やすのと医学部を増やすのとは別問題。欧米では定員を増やした。日本では一県一医大で医学部を増やした。その結果何が起きたかというと、めったに入局のないような科でも定員だけあってずっと欠員になっているような状況だ。だから私は医学部を増やすのは反対だ。いい病院を利用すればいいというのはその通りで、大学が虎の門や聖路加と連携して教育していけばいい。
 ところで安心プランの資料の中にコメディカルへの言及が全くないのはどういうことか。コメディカルの担当は誰なのか」
舛添
 「安心プランそのものには入っている。次回コメディカルのことを議論すると、誰が担当になるのか」
医政局長
 「医政局の総務課になる」
舛添
 「人間は決まっているのか。誰がやるのか決めて。
 ところで医師数について、できれば予算について具体的にしたい。各大学が何人定員を増やせるのか、無理のない範囲で、ちょっとは無理をしていただいた方がいいのだが、その数字を至急積算してほしい。この問題では、渡海文部科学大臣もこちらの言う通りにやっていただけることになっている。後は組んで財務大臣と闘うだけ。といっても特例枠で確保されている話なので、とにかく数字がほしい。
 労働大臣としては、当直の翌日は休めと言いたい。しかし、それをやってしまったら、さらに医療崩壊状況が進んでしまって患者たちからは『俺たちを殺すつもりか』という声が出てしまうだろう。だから非常に悩ましい。2つの職務があるのだけれど、しかし1人の人間が立場によって言うことを変えるわけにもいかないので、そういう苦悩があるんだということを色々な所で言うようにしている。
 医師数が絶対的に足りないのはその通りであろう。当面はできるところから始めて後付けしたい。シーリングも決まった。社会保障費の伸びを2200億円削ることになったが、これはタバコ税のような新たな財源があれば、その分削減幅が700億円少なくなるものだ。それから特例枠3300億円のうち1500億円は社会保障費で分捕りたいというようなことも報じられた通りで、その根拠をいただきたい」
小川
 「医学教育をどうするのか、いろいろな検討が必要だが、何とか少し増やそうということで各大学とも努力してみる。新しいスクールを作るのか、それとも医学部の定員を増やすのかで言えば、土屋先生の仰るように後者だろうと思う。既存の医学部にはノウハウがある。教員不足に関しては大熊委員の言うように優秀な臨床医が大勢いるので、その人たちを臨床教授にすれば良かろう」
高久
 「私学は全部で320人増ということだが、国公立の方は数を早く出せないのか」
嘉山
 「データはここにある。しかし、バイアスがかかっているものなので今は出せない。少なくとも東京大学の清水医学部長は大幅増が必要だと言っているし北海道大も150人と言ってきている。現在はまだ出せないので次回出したい」
取りとめのないまま終了。医師数は結局、何人増やすのだろうか。
 (この傍聴記はロハス・メディカルブログhttp://lohasmedical.jp にも掲載されています)
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