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臨時 vol 47 「『安心と希望の医療確保ビジョン』第六回会議 傍聴記」

医療ガバナンス学会 (2008年4月17日 13:19)


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■□ 国の形を変えるそうです □■
ロハス・メディカル発行人 川口恭
 



毎回とても勉強になっているこの会議。ご報告が遅れたが、ちょうど1週間前の8日に開かれた。会場に着いてみると、前回まではガラガラだったのに急に超満員。誰か何か言ったのだろうか。
この日は地域医療について
小川克弘・むつ総合病院院長
草場鉄周・北海道家庭医療学センター院長
須古博信・済生会熊本病院院長
の3人からヒアリングとのこと。
小川
「下北地域は面積でいうと青森県の16%を占めるが、人口は6%しかない。交通事情が悪く、また県内唯一の医学部がある弘前大からも遠い。一方で、むつ市に海上自衛隊の基地があり、六ヶ所村には核燃料サイクル基地があり、東通村に原子力発電所があるというように日本の中でも重要な施設のあるところ。
下北地域には病院が4つ、診療所が27ある。診療所のうち26はむつ市内に集中している。4病院の病床数は、むつ総合病院が486、川内病院20、大間病院60、むつリハビリテーション病院120。
青森県全体も下北地域も非常な勢いで少子高齢化が進んでいる。下北地域の分娩取扱施設で常勤医がいるのは、むつ総合病院の3人だけ。ちなみに青森県内における産婦人科医の年齢構成を見ると20代、30代が全体の20%しかおらず、10年後、20年後に大変なことになりそうだ。下北地域は、小児科医もむつ総合病院に3人いる他はむつ市内に開業医が4人いるだけ。
下北圏域では、下北半島の全市町村が参画する一部事務組合「下北医療センター」が開設者となっている。これは既に昭和40年代から深刻な医師不足に襲われていたため、メイン病院とサテライト医療機関として、医師の派遣受け入れなどを一元的に行う試みであった。しかし、徐々に町村部病院は運営が厳しくなるとともに、医学部定員削減によって大学からも派遣余力が失われ、結果、県による自治医大卒医師派遣に依存した。
さて、むつ総合病院がこれまでにどのような取り組みをしてきたかであるが、ベッド数は486、医師数59人、うち研修医が15人、看護師保健師助産師が計346人。一日平均外来患者数が1300人、時間外が1日平均38、7人、救急車で来る人が1日平均6、2人ということで、県内でも特に忙しい病院として知られている。1日平均の入院患者数は399、9人、平均在院日数は17日余りだ。
取り組みを列挙すると、まず人材確保の面から、・圏外医師の積極的確保・職員の給与は2%カットしても医師給与は維持した・定年退職医師に引き続き勤務してもらった・県独自の補助事業としてメディカルクラークを配置した・臨床研修施設の指定を受けたので宿舎整備を進めた・弘前大のクリニカルクラークシップで僻地医療実習を受け入れる・大阪市立大学付属病院の臨床研修プログラムの中の地域保健医療枠の受け入れ・弘前大と後期研修相互協力をしてきた。
ほかに・下北地域でリハビリの広域支援センターや連絡協議会をつくった・地域連携パスをつくっている・開業医たちの開業動機に関するアンケート調査を行った。これは心ならずも開業という人が一定数いるようだからで、病院に引き留める方策を探るため・指導医養成講座への積極参加・研修医ワークショップの開催・下北救急医療研究会というもので救急隊と顔の見える関係づくりを進める・下北医療研究会で行政も巻き込んで勉強会を開いている。
むつ総合病院の基本理念は、『信頼』される病院になるということで、下北の医療を医師にとって魅力あるものにしていくため、課せられたミッションは重いが、逆にそれを励みにたゆまない努力をしていきたいと考えている。
医師不足は絶対数の不足であるから、充足させるには作るしかない。それもかかりつけ医、総合医、一般医と呼ばれる人たちがほとんど養成されていない。専門医ばかり養成されている。医師は有効に利用してよいのだが、しかしそれで潰れないために負担軽減も同時に必要。医師でなければならぬ仕事、診断する治療方針を立てるというところに特化させて、そうでない分野は認定看護師、専門看護師、技師を積極的に使うべきだろう。そのためには、どこまでが医療行為なのかという整理も必要で、医師法改正も必要だろう。大臣が『革命的変革が必要』とおっしゃったが、まさにそういうことなんだろう。それから予防の強化も必要で、その中でタバコ問題の占める位置は大きいだろう。命にもっとお金をかけることには国民的コンセンサスが必要で、そのためにどうするのかも問われているだろう」
草場
「若手家庭医の主張と題して話をしたい。私は小川先生の下北半島と海を挟んだ室蘭で家庭医をしている。小川先生も最後に話をされたGPの養成について話をしたい。抽象的にではなく私自身のことを説明しながら、それを通して行政や各界に期待することも述べたい。
私は京都大学の医学部で学んだ。医学部では人体を細分化して分析することで得られる科学的な知見を臨床に応用することが、王道として教育されており、私もそう教わった。私は元々患者さん全体を見たいと思っていたのだが、学年が進むほど人として患者のイメージが薄れていく現実への恐れが出てきた。将来を考える中で『こころとからだをバランスよく捉えながら、患者に寄り添うような医療は存在しないものか』とかなり悩んだ。大学最後の2年間に臨床各科、様々な外部の病院や使節を見学し相談したが残念ながら、そういうものは見つからなかった。ところが本当に偶然、医学の中で科目として存在せずキーワードとしても聴いたことのなかった『家庭医療』という言葉に遭遇し、『これだ!』と後先考えずに北海道へ行くことにした」
私も京都大学の出身で後先考えずに朝日新聞を飛び出してしまった口だし、剣道部の先輩後輩にもそういうのが多かったので、やはり京大出身は我が道を行くのが結構な割合でいるよな、と、この辺から妙にシンパシーを感じるようになる。ひょっとして同級生とかかしら?(授業に出てないから同級生でも面識ないだろうけど)と思って調べてみたら、なんと私より5年も下だった。凄い! まあそんなことはどうでもいい。続ける。
「この時に出てきた『家庭医療』とは小川先生のおっしゃる『総合科』とまさに同じ分野。医学生の中には、入ってきた時点では幅広い分野をやりたいと思っている人間が結構いる。しかしその潜在的に存在している予備群も、現実が細分化されているのに合わせて、それに適応していく。つまり総合医が育たないのは、医学生の側に問題があるのではなく、制度が変えているのだということ。私の場合は、たまたま言葉を知ったことで、その枠組から抜け出た。当時は同級生100人のうち大学に残らず外に出たのは6?7人だったので、珍しい選択だった。
家庭医療の研修は、まず室蘭の日鋼記念病院で2年間の病棟ローテート研修を受けた。これは現在の臨床研修制度と全く同じもの。その後後期研修として2年間北海道内はもとより岐阜や沖縄など様々な診療所での家庭医専門研修を受け、そこで多くの輝いている家庭医と出会い、『これこそ一生の仕事だ』と確信するに至る。
しかしながら、病棟の専門医から『素晴らしいとは思うけれど、やはり専門を持って何十年かやってからでもいいんじゃないの?』と言われたり、大学の同級生から『専門医資格を取ってから大学院に進もうと思っているけど、お前はどうするの?』と言われたりすると心が波立つ。なによりツライのが、患者さんから『先生のご専門は何ですか?』と聴かれること。専門をパっと答えられない。この分野の将来の不確実さを自覚し、将来食べていけるんだろうかと時に強い不安にも襲われた。
室蘭の中でも特に高齢者の多い坂の町で家庭医として働くようになった。診療所は坂の下にあり、冬などは診療所に来るだけでも一苦労。坂の上から、滑らないようにゆっくりゆっくりお年寄りがやってくる。仕事を続けていくうち、幅広く継続的な診療をすると同時にだんだん全人的な外来診療ができるようになり、また徐々に生活背景が見えてきて、いわば生き方が見えて信頼関係ができてくる。それからどうしても診療所まで来れない方も多いので訪問診療も行うようになってみると、患者宅はまさに地域の病棟であると実感するようになった。私たちは、学生や研修医を積極的に受け入れているので、教えることから学ぶ面白さも出てきた。さらに家庭医というのは診療所から地域へ出て行くのが本分であるから、町内会で講演をしたり中学校で禁煙教育をしたり、お祭りの救護班を買って出たりしている。
それとは別に家庭医療を深めるために、カナダのウエスタン・オンタリオ大学大学院の家庭医療学修士課程へ留学した。欧米では、家庭医療学というのが分野として確立している。学んだのは、医学教育、家庭医療の臨床研究、家庭医療の理論、患者中心の医療の方法。日本では家庭医療で臨床研究を行うなんてことは考えられないだろう。
これが日本に帰って来てみると、私の立場はがぜんハッキリしなくなる。専門医資格としては日本プライマリ・ケア学会専門医というこれしかない。しかし日本専門医認定認定機構には未登録なので広告不可能だし、そもそも取得者が年に15人くらいと非常に少ない。そうすると標榜科としては内科・小児科になるのだけれど、本当の診療内容を表現していない。小児科といっても、小児科医と連携しながら診療をしているわけだから。つまり私のしていることの中身は十分理解されていると自負しているが、学術的・法的には認知されていないのが現状である。
そんな状態でまず我々がすべきことは、家庭医療専門医プログラムを確立して後輩を育て受け入れること、そのためにも確かな指導力を持つ家庭医療指導医を養成すること、全国各地に家庭医を養成しアピールすること、他の医療従事者から信頼される地道な実践を積むことになるであろう。それをまずやって、その上で行政・各界に期待することとなるのだが、家庭医療をまじめに志しつつも迷っている医学生や研修医、若手医師は結構いるので、彼らに対して、社会で責任ある立場にいる人達が『一生をかけるに値する専門分野として安心して選んでよいのだよ』とそっと肩を押してやっていただけると有り難い。具体的には、行政の役割は今後の発展の足場を提供することだと思うので、医療法の中に『総合科』を位置づけていただくこと、それによって標榜できるようになるのが大きい、それが第一歩になるのかもしれない。そして近い将来に誕生する専門医が自信と覚悟を持って名乗れる時代の来ることを期待して、私の話を終わりたい」
須古
「地域完結型医療を目指してということで話をしたい。ただし地域といっても多種多様であり、熊本を例にどちらかというと都市型の連携の話をしたい。熊本市は地域連携の先進地域と言われている。どういう特徴があるかというと、基幹病院ごとに連携ネットワークを形成していること、病診連携は平成4年からの時期は過ぎて急性期から回復期リハビリへの病病連携へと進んでいる。また単なる施設間連携でなく看護職やリハビリ職など職種間で情報提供が精密化していっている。地域連携パスの共同作成も活発化している。
熊本市には連携の拠点となる急性期基幹病院が大学病院(850床)のほかに国立病院機構熊本医療センター(550床)、熊本赤十字病院(450床)、熊本市民病院(580床)、KKR熊本中央病院(363床)、済生会熊本病院(400床)と全部で6つあり、その連携先として回復期病院が7つある。急性期病院の平均在院日数はどこも11日台で、それぞれの得意分野に分かれて救急に力を入れて。平均在院日数が短くて済むのは連携先があるからで、どの病院を見ても全国平均よりは効率的な運営ができている。
我々の考える地域完結型とは、これまで総合病院1つで、かかりつけ、専門外来、高度検査、急性期治療、手術、経過フォロー、リハビリ、回復期ケア、在宅医療まで全て提供していたのを、急性期病院は専門外来、高度検査、急性期治療、手術のみ行って、回復期病院がリハビリ、回復期ケア、在宅医療、地域の診療所が、かかりつけ、経過フォロー、在宅医療を行うように分業するもの。患者さんの立場から見ると、総合病院の中で転棟していたのが連携パスを通って転院していくことになる。連携パスはそれぞれ基幹病院が計画病院として作成し、それを回復期病院や地域の診療所と共有していくことになる。
以上、熊本市に関しては、有る程度連携の形ができあがっているので、今後の課題は連携のマネジメントに移っていくと思う。つまり連携が、患者さんにとって良かったのか、医療の質を上げているか検討する必要がある。また、連携ネットワークの質の管理も重要になってくるだろう。同じパスを共有する機関ごとに、何ができて何ができないかハッキリ書いてもらって、それを共有することで、診診連携も可能になってくる。そのためのフォーマットの開発とITの利用も必要だろう。教育・研修受け入れの促進や相互評価・協議する場の設定を通じて、医療の質の向上をはかることも考えている。
まとめると連携医療とは、1、患者本位に立って、2、コミュニティの健康を守る考え方で保健・福祉・医療・行政が密接に連携し、これまでこういうものに行政はほとんど関与してこなかったと思うが、3、自己完結型から地域完結型へと進め、4、ネットワークによる情報の共有を進めること、以上4つを通じて地域医療の質の向上と、その先にある患者・家族の満足を得るものだと考えることができる。
今後は、連携体制をさらに機能の面から推し進めること、そのためには各機関の話し合いの場も必要だし、そうして集まってきた情報を各機関へフィードバックすることも必要だろう。また救命救急体制についても考えなければならない。この辺りは、第五次医療計画に期待したい」
野中
「小川先生には、開業理由のアンケート調査の結果を教えていただきたい。草場先生のおっしゃった将来は家庭医になりたいという学生が多いのは私も知っている。ただ個人的に思うのは、地域医療を頭に置いたうえで何年かは専門医として働いてほしい。私自身も何年か大学にいた経験から言って、専門医にも患者さんを総合的に診る視点が必要。分けられること自体おかしい。そこで草場先生に伺いたいのは、家庭医では病院にできないこういうことが実現できたという事例があれば、それと、それがなぜ病院では実現できないのかを教えてほしい。家庭医が専門性をうたえばうたうほど患者さんにとってはどうでもいい話になって、差別化になりはしないか、変になってしまうのでないかと危惧する。先ほどの地域完結の中での総合医ならいいが、下手をすると自己完結になりかねないと思う。須古先生に伺いたいのは、病院から見て自分でやらずに他の機関でやってもらうとしたら、相手の機関の材料や医療機器などの資源を確認するのが大事になると思うのだが、資源を調べるためにどのような苦労をされているだろうか」
小川
「アンケートは県医師会の協力で行った。そもそもはじめから開業の意思があったのか、やむを得ず開業になったのかでいうと、135対135でほぼ半々だった。その気はなかったという人には何がきかっけになったかも聞いたところ家庭の事情バーンアウト・疲れた、これだか働いても評価されないというもの
人間関係、院長の方針と合わないとか上司先輩後輩とウマが合わないというもの地元に請われてと、大体そんなところ。引き留めるうえでのヒントにはなるのでないかと思っている」
草場
「10年間ずっと言われ続けてきたことなので改めて勉強させていただいたと思う。病院では実現できないこととのお尋ねだが、科を特定せずに診ているので、こんなことはあった。2歳のお子さんを連れて来たお母さんに『子育て大変でしょう』と言ったら突然泣きだして『夫が育児に協力してくれない。燃えつきそう』と言うので、あなたも診ましょうかと少しじっくり話を聞いてみたら、うつ病になっていた。家族ぐるみで診るとか全体を診るのは病院では難しいのかなと思う。それから、誤嚥性肺炎が非常に多かったのだけれど、地域として口腔衛生の取り組みが全くなかったので、歯科衛生士と協力してとある街で地域全体の活動をした。こういう地域全体を見ながら連携するのは忙しい病院のお医者さんには難しいかなと。印象的な例を2つ話した。
それから専門医の後に家庭医になるので全く構わないと思う。ただ、最初から目指したいという若手も結構いるので、せめてその道筋を開いていただきたいという意識だ」
須古
「保健所のデータをもう少し活用したらどうだろうかとは思う。我々も月に1回か2回報告をしているのだから必ずあるはず。ただ、どこにどういうものがあるか保健所でホームページを作っていただけると、それを見てやっていくことができる。医師数は出るだろうが連携するのに必要なのは専門医かどうか。各病院の診療科の御案内も役に立つ。うちでは顔写真入りで連携施設には送っている。工学医療機器は共同利用しないともったいない。あちこちにPETが入ってどこも採算に合わないなんてのが実際にある。こういうのは公表していけばよいのでないかと思う。それからウチでは診療所の先生がデスクから検査オーダーできるシステムをつくっている。事前に検査申込書をファクスで送ってもらう。
一つ言わせていただくと、専門医は基礎をやった後に学会などで作られることになっているが、アル邸どのベースが必要だと思う。恥をさらすようだが、救急で患者が運ばれてきて、医者が見て自分の専門じゃないと立ち去る現実がある。次の医者が来るまで処置室に患者さんが取り残される。大学が臓器別になってしまって専門医しかいなくなった。けれど地域では、そんなに何人も専門医を揃えられるわけがない。だからもっとGPがたくさん必要だ。専門医がどの程度必要なのか。一般の市中病院では専門医よりGPの方が貴重な戦力になっていくだろう。GPなら1人でできることが専門医だと5人も必要になる。医師不足なのに、そんな使いかたは難しい。大学で育って来ないのなら、地域の病院がGPを育てていかないといけないのではないか」
矢崎
「むつ総合病院に、どうして研修医がそんなに集まるのかを考えると、地域医療を担っているという責任感が強いインセンティブになっているのでないか。地域に医療ニーズがあれば、医師引き揚げ患者減という負の連鎖にはならないのでないか、ということを感じた。草場先生は卒業した時に他の人が専門医研修に進むときに家庭医を選んだということで驚いたのだが、そんな覚悟を決めないと進めないようなコースでなく、もっと多くの人が参加できる家庭医、総合医養成のコースが必要でないか。それから実は家庭医・総合医といっても求められるものが2パターンあると思って、一つはかかりつけ医として家庭背景を理解したうえで主に相談機能を果たすもの、もう一つは救急医療におけるトリアージを行うもの、草場先生は両方できるかもしれないが、この二つを分けて養成することも考えるべきでないか。でないと皆さん診療所を信用しないでとりあえず病院になってしまう。病院直結のトリアージする人と熟練した家庭医と2つあるのでないかと思う。須古先生に伺いたいのは、個々独立した医療機関で競合関係にあるはずなのに、なぜ熊本ではそんなに連携がうまくいっているのか。誰がリーダーでどういうプロセスで進んだのか、教えてほしい」
辻本
「私も小川先生には、なぜむつ総合病院に研修医が15人もいるのかということを伺いたい。弘前大でさえ臨床研修参加者が9人だったと聞いている。それから研修2年を終わった方がどうしているのかも伺いたい。地域や患者さんにどういう働きかけをしているのかも教えてほしい。草場先生には、不安を何が支えているのか伺いたい。若い人たちにどのように働きかけているか。須古先生、熊本は行政主導なのか、他地域でどうしたらよいと思うか、患者に転院をどうやって納得してもらっているのか教えてほしい」
小川
「自分たちではあまりわからない。学生たちへの説明会では症例が多彩だと訴えている。将来何を専門にやるとしてもプライマリケアの底辺を広げられるよと言っている。それから学生が見学に来た時には指導医が時間を割いて一生懸命取り組んでくれるというのもあると思う。地域への働きかけとしては、地域の人に選択の余地がないので、それにあぐらをかかないようにとは心がけているのと、投書箱の意見には丁寧に返事を書くようにしている。地域の勉強会には積極的に出席するようにしている。できるだけ親切に信頼関係を築こうと心がけている」
草場
「一次救急が病院に殺到しているのは、全くその通り。開業の先生方がチームを組んで病院を支援している地域もあるが、室蘭でそれができるかというと、40代、50代、60代の先生方が夜間対応できるか体力的にツライとも言われている。だけれど我々としても何とか夜間もやっていきたいと思っている。何を支えにしたかということについては、2つあって、仲間と患者さんだと思う。私どものセンターには研修医が12人いる。お互いに率直に話し合い励まし合える。それから患者さんやご家族から最後にいただける温かい言葉によって、あ自分はここにいてもいいのかなと思えるようになる。学生に対しては学会としてセミナーを開催しているほか、彼らの自主的な勉強会には講師を派遣している」
須古
「最初に始めたのは私どもの病院で、平成4年に患者さんが行きたいと言ったら行けるように地域連携室のシステムをつくった。といっても、そのようなものを持っているところがどこにもなかったので、やりながら考えながら作っていった。それから2年くらい経ってから、国の医療政策で病診連携重視ということになって点数がつくようになった。そうしたら他の病院でも活発になってきた。その時に地域の代表的な病院にはノウハウを全部渡した。ただし、すぐに実にした病院があった一方で形だけのところもあって、一番遅い病院は平成14年にようやく地域連携室ができた。医療の過密地帯で競合関係にあったがノウハウを提供したというのが大きかったと思う」
舛添
「これからの政策につなげていくために感想めいたことを言いたい。小川先生が、医師の養成もあるがコメディカルにもできる限りやってもらいたいと言った。そうなると、どこまでが医療行為なのかの問題に突き当たる。これがそれぞれに言い分があって、うまく行かない部分。方法として研究会でも作って検討すべきなのかもしれないが、どういう役割分担にすべきなのだろうか。誰かの役割を減らしたら誰かが引き受けなければならない。それから専門医と総合医の関係だが、これは社会科学でも全く同じ問題がある。エキスパートとジェネラリストでエキスパートの方が評価される。ところが、これがフランスへ行くと逆でプラクティスをやる時に幅広い素養を持っていることが高く評価される。つまり、一般の人からすれば、この国の政治がなぜこんな風になっているのか聞いて分かればよいわけで、特定分野の講釈を聞きたいわけではないから。その意味で、家庭医について外国の例がどのようになっているのか知りたい。総合医・家庭医がダブルトラックで専門というのはあってよいと思う。それこそ地域医療では何人も集められないから、患者からしたら家庭医がありがたい。行政としては位置づけをきちんとということだったが、標榜科の名前を検討するのは医政局長のところでやってほしい。検討しましょう。むしろ実質としては連携をすぐ取れるかが問題になるだろう。須古先生のお話を伺うと、過密だったから地域連携ができたのでないかという気はする。そうなると、そもそも医療資源の適正な再配分を国単位でやるのは無理な気がする。医療に関しても国の形を変えるべきでないか。具体的には道州制の形になる。とてもじゃないけど47都道府県を一つの原則に当てはめるのは無理だ。でも例えば九州全体だったら全然別の形が考えられるんじゃないか。国の形にかかわってくる大がかりなことも必要かなと感想を持った。それから毎日国会で叩かれているので後期高齢者医療制度についてどう思うかもお聞きしたい」
草場
「海外でも実は同じような歴史があって、北米では1950年代に専門医指向が高まってGPの地盤沈下が起こり、1960年代にファミリーメディスンとして定義しなおそうということで学会や専門医のシステムを構築し直した。専門医認定の更新制度を始めたのは、この学会だ。他の国はというと、英国やオランダは5割がGP、カナダは3割がGP、いずれにせよ制度的裏づけがあり、どう質の向上に貢献できるかが議論されている。またアカデミックな臨床研究も盛んに行われており、海外の学会から帰ってくるとどうしても落差を感じる。後期高齢者医療制度は名称はともかく、私どもは以前から生活に寄り添うという視点から、システムとして高齢者の包括ケアを実施していたので、でも検査をしない限り点数にならずに全くのボランティアだったところに点数がついたので、自分たちのやってきたことが間違っていなかったのかなと嬉しく思った」
須古
「高齢者医療の問題は、老健から救急発症で運び込まれてきて、その後で帰るところがないので、急性期病院をマヒさせている。ICU、CCUのかなりの部分がそういった本来は必要のない人で埋まっている」
野中
「連携というのは要するに他職種と連携することが大切なんであって、1人のスキルアップがどうしたという話になるとおかしくなる。すべていったん仕切り直しすることが必要。医療のありかたから考え直して診療報酬をつけるべきなのでないか」
矢崎
「スキルミックスがこれからの病院医療には重要なので何とかやってほしい。専門医中心だと何人いても隙間が空いちゃう。総合医の教育はニーズが高いと思う」
辻本
「家庭医は草場先生みたいな人ばかりならよいけれど、やはり品質保証を求めたい。コメディカルその他との連携も含めた形で。長寿医療制度という言葉には75歳の人が『長寿と言わないで』と言っていた」
最後にショッキングなお知らせ。毎回楽しく勉強させてもらってきたが、どうやら次回に3人の委員がプレゼンをして終了らしい。この会議なら、何年やってもらってもいいのに。
この傍聴記は、ロハス・メディカルブログ(http://lohasmedical.jp)にも掲載されています。

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