MRIC vol 3 「日本医師会は現場の声を代弁していますか?」
前回も、お話ししましたが、厚労省は、診療関連死について、同省に設置する調査委員会への全件届出を義務化し、行政処分を強化する法案を準備しています。 この法案に対し、現場からの反発は日増しに激しくなっています。法案を了承した日本医師会に対しても、地方医師会も含め、非難が噴出しているようです。 そもそも、病院の臨床医・勤務医の声は誰が代弁しているのでしょうか?医師会は、開業医もしくは施設管理者をA会員、勤務医をB会員と区別しています。また、上から日本医師会、都道府県医師会、地区医師会と3階層になっており、下の階層の代議員が上の階層の代議員を選ぶ仕組みのため、日ごろ医師会と接点のない勤務医は日本医師会の代議員選挙から実質的に締め出されています。結果、勤務医の意見は軽んぜられ、加入する意義も見出だせません。 今回、複数のグループが、厚労省案にただ反対するのではなく、医療者、患者、法律家等が協働で対案をまとめ、提言しているのは画期的です。 「医師への行政処分を増やせば、一部の被害者の無念を晴らせるかもしれない。しかし、ここ一年でも産科はさらに一割減少し、薬の副作用情報の自主報告も減っている。国家権力による医師処分が増えれば、ハイリスク症例を扱う病院からの医師立ち去りはますます増え、医療の萎縮は加速する。重要なのは、専門知識に欠ける患者・家族の皆さんが、納得いくまで真相究明できるよう、それを支援する専門家委員会の創設と、患者への説明と謝罪と対話の促進だ」との主張は、是非、法制化すべきだと考えます。 ただ、これまでの医療界が、自浄作用を働かせてこなかったことも事実で、医師への信頼回復には、自律的医師懲戒制度やシステムエラー再発防止制度を自発的に構築することも不可欠です。 日本弁護士連合会は、すべての弁護士が加入し、代議員の選挙権を持ち、一方で、弁護士に対する懲戒権も有しています。これによって法曹の質と規律を確保しています。 日弁連も参考に、医師会のあり方を抜本的に見直すとともに、勤務医・患者の声を医療政策に反映させるネットワークづくりが必要です。 この記事はロハス・メディカル2月号に掲載されています。 著者紹介 鈴木寛(通称すずかん) 現場からの医療改革推進協議会事務総長、 中央大学公共政策研究科客員教授、参議院議員 1964年生まれ。慶應義塾大学SFC環境情報学部助教授などを経て、現職。 教育や医療など社会サービスに関する公共政策の構築がライフワーク。