臨時 vol 8 「田中康夫議員と国会質問」
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■□ 献血血液のHIV問題と病原体不活化の検討を □■
血液製剤の安全対策が急務
信州大学医学部附属病院 先端細胞治療センター
下平滋隆
1月31日(金)、参議院予算委員会において、田中康夫参議院議員(前長野県知事)が民主党・新緑風会・国民新・日本の一員として、HIV問題、輸血用血液の病原体不活化に関する質問に対して、舛添要一厚生労働大臣、福田康夫総理大臣が回答された。 薬害肝炎問題の最中、輸血の安全性が改めて認識された。 献血者のHIV感染者が102人、10万人あたり2人を超えている問題に関連して、個人情報保護を理由に本人告知していないことへの質問では、舛添大臣は「他の人に知れないように個人にはきちんと伝える」との意向を示した。検査目的の献血をしないよう呼びかけても限界があり、本人告知のないままでは治療が遅れ、2次感染の拡大も懸念されるからである。2003年にNAT(ウイルス核酸増幅検査)をすり抜けた血液でHIV感染が1例確認されているが、検査をすり抜けるリスクも高まっている状況の対応については、「輸血による感染者への医療給付による補償以外に科学技術的な手を打つ必要性」との認識を示された。 2004年に日本赤十字社(日赤)は、HIVや肝炎ウイルス、細菌に対する病原体不活化(感染性因子不活化技術)の導入を、海外で最も多く採用されている血小板製剤への技術導入に向けて評価・検討を開始していると発表していた。田中議員は、「欧州、近隣アジア諸国で既に導入され、米国でも導入を予定している病原体不活化技術を、なぜ日本で出来ないのか、薬害肝炎、薬害エイズの問題から学んでいないのではないか」と問いただした。舛添大臣は、「不活化剤の安全性のほか、ある不活化技術によっては血小板、赤血球への影響があるため、諸外国事例を参考に、日赤の検討状況を踏まえきちんと対応する」と回答した。田中議員試算の不活化技術の導入額(基盤整備200億円、維持費60億円)については、舛添大臣は「血液の安全性対策を真剣に考え、出来るだけの安全対策を講じ、全力を挙げて行う」と強調した。 福田総理も「HIV問題は深刻に考えなければいけない、輸血血液の安全性の対応についても時間を掛けてはいけない、早急に厚生労働省で決断を出すべく督促したい」との認識を示した。午後、田中議員の総括として、病原体不活性化導入を早期に検討することを総理が示されたことを再確認して終了した。 参議院のインターネット: <a href=”http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/today/index.php”>http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/today/index.php</a> 医療現場で輸血を治療として用いる医療関係者は是非、関心を持って見て頂きたい。 田中議員は最後に自己血の話で、自己血から分離されたフィブリン糊(薬害C型肝炎は同種由来)などの成分調製は、輸血部がある大学病院では対応できるが、一般病院では治療に使いたくても困難という不満がある。血液法等を改正を通じ、法的な規制の枠組みの中で、どのように医療格差を運用でカバーできるかということである。著者も自己血支援サービス事業は、集約化が進む日赤血液センターから喪失される技術者が生かされる場ではないかと考える。 日赤の経緯、諸事情もあるが、供血者の原理ではなく、HIVも不活化も患者(国民)の目線で考える必要がある。輸血を受ける立場、治療を行う医師としては、今までの日赤血、不活化製剤、自己血を選択肢として、安全性とリスクを十分に開示された上で、患者自身が決められればよいのではないだろうか。 血液の安全対策としての病原体不活化は、福田総理、舛添大臣は前向きであり、日本でも早期の対応が期待される。