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臨時 vol 182 「ラグ被害者の声も聴いて」

医療ガバナンス学会 (2009年8月8日 16:16)


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          ~薬害再発防止検討委員インタビュー3~
           聴き手・ロハス・メディカル発行人 川口恭

 医薬品の用法の厳格化を求めるなどの第一次提言を出した厚労省の『薬害肝炎
事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』に対して、先
般、ドラッグラグやワクチンラグに悩む6つの患者団体が連名で要望書を出した。
その真意はどんなことなのか、要望書の取りまとめをした「細菌性髄膜炎から子
どもたちを守る会」事務局長の高畑紀一氏に聴いた。
――薬害肝炎検討会に6団体の連名で要望書を出されましたね。きっかけは何で
すか。
 検討会を毎回傍聴しておりまして、議論の進め方にずっと違和感を感じていま
した。委員が対等でないというか、行政経験者や医療者の意見に対して薬害被害
者の言うことが圧倒的に強くて議論が対等ではありません。何度も、「薬事行政
の被害は薬害だけじゃないぞ」と手を挙げて発言したい気になりました。
 元々の成り立ちが薬害肝炎訴訟の和解を受けてのことですから仕方ない面もあ
るとは思いますが、しかし出てきた提言の中身が薬害肝炎に留まらず、我々が改
善しようと努力してきた「ドラッグ・ワクチンラグ」を増幅しかねない内容だっ
たことに大変危機感を抱きました。
 前回の検討会を傍聴したら、CRO協会の方々に対するヒアリングが行われま
して、そのきっかけが検討会宛に意見書を出したことだったと説明があったので、
「要望書を出せば意見を聴いてもらえるのか」ということで、他の団体とも連絡
を取り合って出したという次第です。
――他の5団体とは、どういうご縁ですか。
 ことしの2月に、「ドラッグ・ワクチンラグ」に関するシンポジウムを共催し
ました。
――6団体の気持ちは要望書にも書かれていますが、もう少し説明していただい
てもよろしいですか。
 医薬品には、効能・効果である主作用と副作用があります。両者は不可分で、
どちらか一方だけということはあり得ません。これらはともに「リスク」により
評価することができます。前者はもたらされる利益により相殺するリスク、後者
はそれにより発生するリスクです。後者が適切にコントロールされなければ「薬
害」という、より大きなリスクを生じてしまいます。一方、前者のコントロール
を誤ると、必要な医薬品にアクセスできない「ドラッグ・ワクチンラグ」という
リスクが拡大します。相殺されるべきリスクが放置される、拡大されるという状
態です。医薬品行政は、双方のリスク管理を車の両輪のように適切に行う義務が
あります。
 薬害肝炎検討会は、医薬品行政が行なうリスク管理のうち、後者のみを俎上に
あげるもので、議論はどうしても偏ったものにならざるを得ません。先ほども述
べたように、それはこの検討会が立ち上げられるまでの経緯等からしても止むを
得ないでしょうし、委員構成も「薬害」に特化した陣容です。だったら、この検
討会で「ドラッグ・ワクチンラグ」という前者のリスク管理についてまで論じて
ほしくないのです。
――越権じゃないかということですね。
 それだけではありません。「薬害」の再発防止という前者のリスク管理に特化
した議論を行なうとしても、前提となるリスク評価は適切になされなければいけ
ません。医薬品が有する不可分の二つの作用とそこから生じる二つのリスクの一
方を著しく過小評価してしまってはリスク評価としては極めて不適切ですし、そ
のリスク評価に基づいて行なわれるリスク管理も誤ったものとならざるをえませ
ん。
 現に、ドラッグ・ワクチンラグの一つである医薬品の「適応外使用」について、
検討会では「薬害」というリスク評価のみに基づいた意見が見受けられますし、
これは私たちが検討会の議論に危機感を抱いたポイントの一つでもあります。
――薬害被害者側の意見としては、本当に「ドラッグ・ワクチンラグ」が存在す
るものまで妨げるつもりはないということのようです。
 たしかに第一次提言には「臨床上の必要性があり、安全性と有効性に関する一
定のエビデンスが備わっている場合には、速やかに保険診療上認められるシステ
ムを整備するとともに、適切な承認手続きのもとで承認を得られるように体制を
整備すべき」と、適応外問題の解消に向けた記述もあります。
 しかし、考えていただけばすぐ分かることだと思うのですが、「適応外使用の
大幅な制限」は明日からでもできることです。一方の「適応外問題の解消」には、
どれだけの費用と期間かかるでしょう。実現のスパンに大きな差が生じることは、
誰の目にも明らかです。
 有効性、安全性が明らかであるにもかかわらず適応を取得していない医薬品は
数多くあります。そしてその理由も単一ではありません。適応外使用の解消には
数多くの施策と相応の時間が必要です。検討会の提言では、適応外使用が大きく
制限される一方で、適応外の解消は遅々としてすすまないという状況に陥りかね
ませんし、これはまさに「ドラッグ・ワクチンラグ」の拡大、そしてそれによる
リスクの拡大を意味します。この提言内容からも、「ドラッグ・ワクチンラグ」
というリスクを適切に評価せず軽視していることが窺えます。
 「ドラッグ・ワクチンラグ」によるリスクは、救われるべき患者が救われない
という「被害」を生み出します。このリスクを過小評価するということは、それ
は「ドラッグ・ワクチンラグ」被害者の存在を軽んじることと言っても過言では
ないでしょう。薬害というリスク評価だけに立脚した議論ではなく、「ドラッグ
・ワクチンラグ」被害者の存在をきちんと認識し、「ドラッグ・ワクチンラグ」
というリスクがあることを適切に評価したうえで、薬害の再発防止というリスク
管理を論じてほしいと願うものです。
――そういったことを検討会で喋らせろ、ということですね。
 はい、当然ヒアリングには呼んでいただけるものと思っています。
(この記事は、ロハス・メディカルweb http://lohasmedical.jp に7月25日付
で掲載されたものです。)

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